(株)アラヤは、西松建設(株)と共同で、計測用装置『Tunnel RemOS-Meas.(トンネルリモスメジャー)』*1の自動運転化を実現した。
アラヤは建設現場における自動化技術の実装を推進している。今回、西松建設が取り組んでいる山岳トンネル工事の切羽作業の無人化において、各種建設機械の遠隔化・自動化技術構築システムの一つにあたる計測用装置に、アラヤの自動化技術を組み込んだという。
■背景
山岳トンネルの施工では、切羽(きりは)における岩盤の崩落事故に対する安全性向上や若手入職者の減少による労働力不足に対する生産性向上が課題となっている。この対策の1つとして、特に過酷な環境下である切羽近傍で従事する現場技術者や作業員の立ち入りを不要とする切羽作業の無人化(建設機械の遠隔化・自動化)が求められている。
このような背景から、西松建設では山岳トンネルの施工に使用する各種建設機械の遠隔化・自動化技術『Tunnel RemOS(トンネルリモス)』の構築を進めている。これまでは、切羽から離れた場所より建設機械を遠隔操作する“遠隔化“技術を中心に開発を進めてきたが、そこにアラヤが得意とするAIやSLAM*2等の技術を組み込み、建設機械の“自動化”を加速させていく。
そしてこの度、自動化技術の開発の第一歩として、山岳トンネル工事の計測作業を遠隔操作で行うための装置『Tunnel RemOS-Meas.(トンネルリモスメジャー)』の自動運転化技術の開発や現場試行を行った。これにより、駐機場所から切羽までの装置の移動が自動化されるため、これまでに必要とされていたタブレットによる遠隔操作が不要となる。
■概要
今回開発した自動運転化技術は、SLAMにより駐機場所と切羽の間の装置の移動を自動化する。
計測用の装置には複数のカメラやLiDAR*3やカメラ、制御用PCを搭載している。LiDARで取得したトンネル壁面や周辺環境の点群データを基に、制御用PC内のSLAMソフトで自己位置の推定を行い、側壁と一定の距離を保ちながら駐機場所と切羽の間を自動運転する。また、周囲の建設機械や人、切羽等もLiDARで検知するため、障害物との衝突の危険性を察知し停止・回避するだけでなく、ゴールとなる切羽地点への到着・停止も可能。駐機場所においては、事前に設置したARマーカーをカメラで視認することで、良好な精度で駐機・出発を行う。なお、装置の走行や計測作業はタブレットを用いた遠隔操作による制御を基本とし、画面上で設定を切り替えて自動運転を行う。
切羽写真の撮影等、日々行われる定常的な計測作業の際に自動運転を活用することで、装置の移動操作が不要となり、労働生産性の向上が見込まれる。また、今後は本開発のノウハウを他の各種建設機械の自動化に活用することで、切羽作業の無人化の早期実現が期待される。
■補足
*1 カメラによる切羽写真の撮影やスキャナによる出来形計測といった切羽近傍における計測作業を遠隔化するために、西松建設株式会社とジオマシンエンジニアリング株式会社が開発した装置。
2021年5月19日西松建設ニュースリリース:
山岳トンネル工事における計測作業を遠隔で行う『Tunnel RemOS-Meas.(トンネルリモスメジャー)』を開発-トンネル切羽近傍の計測作業の無人化-
*2 SLAM(Simultaneous Localization And Mapping):距離センサやカメラで取得したデータを基にして、自身の位置の推定(Localization)と地図の作成(Mapping)を同時に(Simultaneous)行う技術。
*3 LiDAR(Light Detection And Ranging):レーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を基にして、物体との距離、方向、性質等を測定する技術です。自動運転等に用いられる。
ニュースリリースサイト(araya):https://www.araya.org/publications/news20230913/