(株)IDDK、高砂電気工業(株)、(株)ユーグレナは、共同で宇宙空間向けの超小型細胞培養モジュールを開発した。
このモジュールは、2025年に(株)ElevationSpaceが展開する宇宙環境利用・回収プラットフォームELS-R※1に搭載し、低軌道※2に打ち上げ、微細藻類ユーグレナの培養実験に使用する予定である。
※1 ELS-R:ElevationSpaceが提供する、無重力環境を活かした実証や実験を無人の小型衛星を使って行い、それを地球に帰還させてお客様のもとに返すサービス。国際宇宙ステーション(ISS)で実験を行うことと比較し、高頻度に利用できる点、実証・実験内容の自由度を高く設定できる点、計画から実証・実験までのリードタイムを短くできる点が特徴。ISSが2030年末に運用を終了した後も、宇宙環境利用の空白期間を作らずにサービスを提供できるため、宇宙産業の競争力強化に寄与することが期待できる
※2 低軌道:地上から200km~1000kmの範囲
●共同開発の背景
微細藻類は、宇宙開発において食料源や酸素供給源としての可能性が期待されており、現在様々な研究が進められているが、限りのある宇宙空間での実験には資材の軽量化と低容量化が不可欠である。
ElevationSpaceとユーグレナ社は、微細藻類ユーグレナの宇宙培養を目指して、2022年に覚書を締結※3している。その後、小型人工衛星に搭載する超小型細胞培養モジュールの開発を実現するため、顕微鏡の最先端技術をもつIDDK、小型ポンプ等のパイオニアである高砂電気工業との共同開発を開始した。
今回開発したモジュールは、2025年打ち上げ予定のElevationSpaceが開発する無人小型衛星ELS-R100に搭載するため、衛星とのインターフェースに関わる点でElevationSpaceから宇宙用機器開発に係る知見の提供・構造設計支援を得ながらユーグレナ社が設計と制作を行った。そして、培養状況を観察するIDDKのレンズレス顕微観察装置「MID」※4と、培地を供給するための高砂電気工業の超小型バルブ、タンクユニット※5を搭載することで、総重量200g以下という厳しい制約をクリアし、かつ細胞培養の高度な制御を実現している。
※3 2022年1月26日のニュースリリース:https://elevation-space.com/posts/91MRmLXG
※4 MID:半導体イメージングセンサ技術を駆使した独自のワンチップ顕微観察装置。従来の顕微鏡は対物レンズなど光学系技術により物体を拡大して観察する仕組みだが、MIDは顕微鏡の観察原理とは全く異なり、光感受素子(フォトダイオード)が密に並んだ半導体センサーチップ上に置いた観察対象をその半導体メッシュの細かさ(光感受素子の配列密度)で検出ができる
※5 超小型バルブ、タンクユニット:加圧されたタンクからバルブ操作で培地を顕微鏡観察装置に供給するユニット。弁部は高砂電気工業の超小型電磁バルブをベースとし、駆動方式をワイヤー溶断による1回限りの開放機構を採用、タンク部と一体化することで、小型軽量化を実現している
●本小型細胞培養モジュールの仕様
寸法:103×57×27mm
重量:175g
主要搭載物:
・4K品質(4208px X 3120px)顕微画像撮影素子
・サーミスタ・マイクロヒーター搭載による温度制御
・培地交換用タンク&マイクロバルブ搭載
・培養および画像撮影用LED
・温度/湿度/圧力センサ
・民生用CPUボード(ARM Cortex-A53 1GHzクアッド64bit CPU、512MBメモリ)
・3mm厚アルミ筐体
・Oリングによる密閉構造
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000053748.html