キヤノン、世界最高画素数の320万画素SPADセンサを開発

キヤノンは、検出した微弱な光の粒子を独自の画素構造により効率よくとらえ、大量の電子に増倍させることで、暗闇でもフルHD(約207万画素)を超える世界最高※1の320万画素のカラー撮影が可能な13.2mm×9.9mmの超小型SPADセンサを開発した。2022年後半より生産を開始する。
また、本成果は、2021年12月11日より開催されているIEDM※2において、非常に競争率の高いLate News Papers※3に採択されたとのこと。

SPADセンサは、画素に入ってきた光の粒子(以下、光子)を1つひとつ数える仕組み(フォトンカウンティング)を採用している。また、1つの光子が雪崩のように増倍し、大きな電気信号を出力する。CMOSセンサは、溜まった光の量を測定する仕組み(電荷集積)で、集めた光を電気信号として読み出す際に画質の低下を招くノイズも混ざってしまうが、SPADセンサは仕組み上、読み出す際にノイズが入らないため、暗い所でもわずかな光を検出し、ノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影したり、対象物との距離を高速・高精度に測定したりすることができる※4。

今回開発したSPADセンサは、画素内に光子を反射させる独自の画素構造により、有効画素面全体で効率よく光子を検出し利用できる。同一照度下において、一般的なCMOSセンサの10分の1の画素面積で、同等の撮影が可能。そのため、小さなデバイスにも搭載可能な超小型でありながら、近赤外線域を含む感度が大幅に向上し、星の出ていない闇夜よりも暗い0.002lux(ルクス)※5の環境下において320万画素での動画撮影を実現する。暗視や監視用のカメラに本SPADセンサを搭載することで、暗闇でも、あたかも明るい場所で撮影したかのように、明るい場所にて肉眼で見た色と同じ色で対象物の動きを捉えられるようになる。

キヤノンは2022年後半より、自社のセキュリティ用ネットワークカメラ製品に搭載するSPADセンサーの生産を開始する。革新的なセンサを搭載し、安心・安全な社会の構築に貢献する製品の競争力を高めるという。

また、SPADセンサは、100ピコ秒(100億分の1秒)レベルの非常に速い時間単位で情報を処理することができるため、光の粒のような、高速に動くものの動きをとらえることが可能。フルHDを超える高解像度、わずかな光をとらえられる高感度性能に加え、この高速応答の特長を生かして、自動運転や医療用の画像診断機器、科学計測機器などに用いるセンサとして幅広い活用が見込まれるため、同社は積極的に外販活動を展開し、社会の変革やさらなる発展に寄与するとしている。

※1 SPADセンサにおいて。2021年12月14日現在。(キヤノン調べ。)
※2 International Electron Devices Meeting(国際電子デバイス会議)の略。半導体デバイス分野で最も権威のある国際学会。
※3 最先端技術を盛り込む論文として、IEDMの採択論文の中でも非常に競争率が高い枠組み。
※4 SPADセンサの仕組みやCMOSセンサとの違いの詳細は、下記URLのキヤノンテクノロジーサイトを参照。
 URL:https://global.canon/ja/technology/spad-sensor-2021.html
※5 星明りの明るさの目安が0.02lux、星の出ていない闇夜(やみよ)の目安が0.007luxとされている。

ニュースリリースサイト(Canon):https://global.canon/ja/news/2021/20211215.html