(株)Synspective※1と、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」※2のもと、「小型SAR(合成開口レーダー)衛星コンステレーションによる災害状況把握サービスの社会実装」に向けた共創活動を開始した。このプログラムでは佐賀豪雨を事例としたSARコンステレーション利用による解析精度向上の実証と、衛星搭載SARの性能向上の実証などを行う。
共創プログラムの実施内容
1. SARコンステレーション技術を活用した災害時状況把握サービス等の社会実装
Synspectiveが運用する独自の小型SAR衛星StriX-αや、今後打上げを行うStriX-β及びそれ以降の後継機において取得するデータや他衛星等により取得されている既存のデータを用いて、災害時状況把握サービス等の社会実装に向けた取組みを行う。
<取組例:佐賀豪雨の解析精度の向上実証を開始>
社会実装を目指した最初の取組みとして、JAXAと連携協定を締結している佐賀県庁、及び災害情報としてドローン及び地上測量情報を提供する株式会社島内エンジニア(佐賀市)と連携し、水災害被害把握の実運用に向けた精度向上の実証を2021年7月より開始した。
Synspectiveでは、昨年、水災害対応のための浸水被害(浸水域、浸水深、被害道路、被害建物)評価する「Flood Damage Assessment(浸水被害モニタリング)」サービスを提供している。
水災害時において広範な地域の被害状況を一次情報に基づいて把握することができる本サービスは、迅速な意思決定への貢献が期待されている。
今回は、Synspective、佐賀県庁、株式会社島内エンジニアおよびJAXAの連携により、小型SAR衛星コンステレーションの活用による、豪雨による浸水被害の解析精度の向上を実証するとのこと。
2. SAR観測の高分解能化・広域化を実現する技術検証
内閣府主導の革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」での研究開発成果であるSARセンサの小型化に関するJAXAの知見を活かし、SynspectiveとJAXAはSARセンサの性能向上に係る共同研究を行う。具体的には、Synspectiveが目指す高分解能・広域SAR観測に必要な高出力レーダーの大電力化に係る放電対策の検討をJAXAで行い、SynspectiveのStriX-β及びそれ以降の後継機を使用して宇宙での技術実証を行う。
Synspectiveは、JAXAが有する衛星データ利用に係る知見や衛星技術を組み合わせることで、小型SAR衛星コンステレーション技術を利用した災害状況把握サービスの事業化、さらには自治体等での意思決定に貢献できるサービスの社会実装を目指すとしている。
※1 株式会社Synspectiveについて
シンスペクティブは、データに基づき、着実に進歩する世界の実現を目指し、衛星による観測データを活用したワンストップソリューション事業を行う会社。内閣府「ImPACT」プログラムの成果を応用した独自の小型SAR衛星により高頻度な観測を可能にする衛星群を構築し、その衛星から得られるデータの販売、および、それらを利用した政府・企業向けのソリューションを提供する。
※2:JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)について
J-SPARCは、宇宙ビジネスを目指す民間事業者等とJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい事業を創出するプログラム。2018年5月から始動し、これまでに30を超えるプロジェクト・活動を進めている。事業コンセプト共創では、マーケットリサーチ、事業のコンセプトの検討などの活動を、事業共同実証では、事業化手前の共同フィージビリティスタディ、共同技術開発・実証などの活動を行う。
プレスリリースサイト(synspective):https://synspective.com/jp/press-release/2021/jaxa-synspective/