OKIは、前田建設工業(株)をはじめとする5社が設立した愛知道路コンセッション(株)が運営する愛知県内の有料道路において、無線・電池駆動の「省電力構造物モニタリングシステム」を用いた橋梁支承(注1)部の健全性評価の実証実験を2018年8月から2021年1月までの2年半にわたり実施した。その結果、従来の健全性評価で必要だった現地における電源工事や配線工事を行うことなく、遠隔からの橋梁の正常性確認が長期にわたり実施できることを確認した。
なお本実証実験は、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(注2)の一部として開発したモニタリングシステム技術の検証・評価を目的に、愛知県有料道路運営等事業における新技術実証のしくみを構築している「愛知アクセラレートフィールド®」に応募して実施したもの。
高度成長期以降に建設された社会インフラ構造物は老朽化が進み、定期的な点検による予防保全とともに、いつ起こるか分からない事故や災害に備えた常時監視が必須となっている。このため、たとえば、橋梁のジョイント部で発生した段差などの異常をすぐに把握し、インフラの安全を維持・管理するモニタリングシステムが求められているが、これまでのモニタリングシステムは設置や導入に電源工事や配線工事が必要で、コストや時間がかかることが、普及の障壁となっていた。
OKIは、本実証実験において電池駆動の無線加速度センサ、無線変位計、無線カメラセンサおよびゼロエナジーゲートウェイ(以下、ZE-GW)を活用した「省電力構造物モニタリングシステム」を橋梁の近くに設置し、桁(注3)の固有振動やたわみおよび主桁の伸縮をモニタリングした。ZE-GWは太陽電池と2次電池を組み合せて効率的に充放電する仕組みを備えており、電源工事が不要。またデータセンターとの間はモバイル回線で接続することにより、通信回線の配線工事を不要とした。その他にも、省電力な計測データ収集を実現するため、無線加速度センサ側で計測データを分析処理することで、不要なデータ送信を削減している。たとえば2分間の加速度データから平均周波数スペクトルを分析する場合、データセンター側に送信して分析する場合と比較して送信データ量の96.5%、測定時消費電力量の2/3を削減できたという。
また、本実証実験では、主桁の伸縮量の分析を、無線カメラセンサで撮影した画像からも実施し、無線変位計で分析したデータと比較して、2㎜以下の誤差で分析できることを確認した。無線カメラセンサは、測定対象に接触させることなく離れた位置に設置することができるので、センサの設置に対する制約を大きく緩和することができる。さらに、ZE-GWは1日の電力消費を十分上回る発電量を確保できていることが確認でき、長期運用が可能であることが実証されたとしている。
(注1):支承
橋梁において、上部構造(主桁・主構)と下部構造(橋台や橋脚)の間に設置する部材
(注2):戦略的情報通信研究開発推進事業
総務省SCOPE(国際標準獲得型)JPJ000595
(注3):桁
建造物において柱間に架ける水平部材
プレスリリースサイト(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2021/07/z21021.html