(株)日立ハイテクサイエンスは、このたび、先端産業分野で需要が高まる光学部材の分光特性検査に特化した分光光度計「UH4150AD+」を、日本国内向けに発売する。
近年、人間の目では見ることができない波長800 nm~1700 nmの近赤外線によるカメラやセンサが先端産業の幅広い分野で活用されている。特に、自動運転やスマートフォンで利用が始まったLiDAR*1によるリモートセンシング技術、夜間など暗い状況下でも撮影可能な暗視カメラ、セキュリティを守るための顔認証や虹彩・静脈認証、5Gで需要が増加する光通信など、その用途は範囲が拡大しており、技術も高度化している。
こうした光学機器の性能向上に伴い、使用されるレンズやフィルタをはじめとした光学部材の吸光度、透過率、反射率などの分光特性を高精度に測定できる装置が求められている。また、光学部材には光学薄膜や光吸収剤によって特定波長のみを透過させ、不要な波長域をカットするバンドパス機能が施されているが、この機能を高精度にするため、評価指標の一つである測光レンジ*2の範囲拡大が必要とされているという。
分光光度計は、試料に光を照射し、光の波長ごとに試料の吸光度や透過率を測定する装置で、同社がこのたび開発したUH4150AD+(Advanced Spec Plus)は、光学部材向け分光特性検査装置としてこれまでのUH4150シリーズから、近赤外線領域における分光特性の測定性能を向上させたモデルで、先端産業での利用が盛んな光学部材の測定に最適な装置となる。UH4150AD+の発売を通して、長年にわたり同社が国内トップシェア*3を継続している分光光度計のより一層のラインアップ充実を図り、顧客のニーズに最適なソリューションを提供することで、先端産業分野の持続的な成長に貢献するとのこと。
■UH4150AD+の主な特長
1.近赤外線領域の測光レンジ7Absに対応
最新のカメラやセンサーに用いられるバンドパスフィルタは、6 Abs(透過率0.0001%)~7 Abs(透過率0.00001%)以下の遮光性能の光学薄膜が施されている。本製品は、低透過率を測光する際の信号処理を改良したことで、近赤外線領域の透過率を従来比100分の1となる7 Absでの測光レンジに対応した。これにより、従来は測定ができなかった近赤外線領域での微弱な透過率でも高精度な測定が可能となった。
2.高感度なInGaAs半導体検出器を新規搭載
従来機*4では近赤外線領域にPbS*5検出器を使用していたが、より高感度なInGaAs*6半導体検出器を新たに搭載した。従来機と比較して、低透過率時での有効な低ノイズ測定が可能になったことで、より正確な測定データを取得できる。
3.平行光束の光学系を踏襲
カメラのレンズ光学系は平行光線で設計されているため、使用される光学部材の評価装置に対して入射光の平行度が重要とされている。本製品は、従来から定評のある平行光束を採用しているため、透過・反射測定の正確な入射角が担保され、精度の高い反射測定が可能となる。
■用語解説
*1 LiDAR(Light Detection And Ranging):近赤外光を利用したリモートセンシング技術、近赤外のレーザーをパルス照射し、その反射光を時間差で検出されることで遠距離にある対象までの距離を3次元的に画像化する技術
*2 測光レンジ:吸光度(Abs : Absorbance) または光学濃度(OD : Optical Density)にて表される。
1 Abs(OD)増えると1桁低い透過率となる。
(0 Abs=透過率100%, 1 Abs=透過率10%, ・・・ 7 Abs=透過率0.00001%)
*3 科学機器年鑑2020(株式会社アールアンドディー刊)調べ(ハイエンドモデル紫外可視分光光度計)
*4 従来機:UH4150AD紫外可視近赤外分光光度計
*5 PbS:硫化鉛化合物
*6 InGaAs:インジウム/ガリウム/ヒ素化合物
ニュースリリースサイト(hitachi-hightech):
https://www.hitachi-hightech.com/jp/about/news/2021/nr20210421.html