赤外センサーの種類は光伝導センサー、光起電力センサー、サーミスタ、サーモパイル等があるが、遠赤外エネルギーは可視光エネルギーよりも微小なため検出は測定機器の性能にも依存する。
(1)光伝導センサー
光伝導型のセンサーは不純物ドープ半導体が用いられる。入射赤外線のエネルギーEと波長λとの関係は、
E=hc/λ=1.24/λ〔μm〕
であるので、n型半導体では伝導体と不純物順位間のエネルギーギャップΔEgが限界エネルギーとなる。P型半導体では価電子帯とのエネルギーギャップが限界エネルギーとなり、それより小さなエネルギーの遠赤外線は検知できない(下表参照)。微小なエネルギーを測定するためにはセンサー自身の熱雑音を低減させる必要があり、液体窒素等で冷却して用いる。(特開2010-192815)
材料名 | Eg | 限界波長 (10μm以上) |
使用温度(K) |
---|---|---|---|
Ge(Hg) | 0.09 | 14 | 30 |
Ge(Cu) | 0.04 | 31 | 12 |
Ge(Cd) | 0.06 | 21 | 12 |
Si(As) | 0.05 | 25 | 4 |
Si(Bi) | 0.07 | 18 | 12 |
Si(P) | 0.04 | 31 | 4 |
Si(Mg) | 0.08 | 16 | 4 |
Hg0.8Cd0.2Te | 0.09 | 14 | 77 |
(2)光起電力センサー
光起電力型の赤外センサーは、光伝導型が真性半導体にP型またはN型のドーピングした半導体を用いる構造である方法なのに対して、P型、N型の半導体を接合した構造である。
即ち、赤外線をPN接合部の空乏層に吸収させることにより、電子と正孔電位が発生し光起電力を生じる原理である。遠赤外線用の半導体材料としてはHgCdTeが知られている。HgとCdの成分比を変化させるとエネルギーギャップが変化する(下図参照)。
真性半導体型の光伝導センサーと同様に冷却の必要がある。(特開2009-070858)
(3)熱型センサー
熱型センサーは赤外照射による温度上昇を測定する単純な構造である。そのため半導体型に比較して感度が悪いが、波長による選択性が無く広い波長範囲で利用できる。
温度測定には一般的な熱電対、これらを直列に集積した熱電堆(サーモパイル)が用いられる。また、抵抗体、半導体等の感熱体の温度変化を電気的に測定するボロメータ型のものもある。遠赤外領域では、極低温(~2K)にしたGe半導体を用いたボロメータが用いられる。(特開2010-256370)
(特許情報からみる赤外線技術の動向調査 報告書 オプトロニクス社刊より抜粋)