水中光無線/LiDARを目指すALANコンソーシアムが始動

電子情報技術産業協会(JEITA)は,広範な社会課題の解決に向け,あらゆる産業・業種の企業およびベンチャー企業との「共創」を推進し,新たな市場の創出を促進することを目的とする「JEITA共創プログラム」を創設したことを,今年5月に発表した。

その第1弾として,水中環境を次世代の新経済圏と捉え,民需に特化した材料,デバイス,機器,システム,ネットワーク等の開発を推進することを目的とした「ALAN(Aqua Local Area Network)コンソーシアム」(通称:エーランコンソーシアム)を正式に設立したとして,7月11日に記者会見を行なった。

ALANはもともと,海洋研究開発機構(JAMSTEC)と光高速制御のトリマティスが,水中LiDARの開発を進めていたワーキンググループが母体となっている。フォーラムなどを通じて研究機関や大学が集まり,今回のJEITA共創プログラムに採択された。

ALANコンソーシアムは,音波など限られた通信手段しか使えない海中を「最後のデジタルデバイド領域」として,陸上や空間に準じた光無線技術を開発し,海中ネットワークのインフラとすることを目指している。まずは水中LiDARでの送受信技術のブラッシュアップをする目的で,基礎レベルから水中での吸収が少ない青色を中心とした光無線技術の研究開発を行なう。

既に以下の要素技術が集まっており,これらをいかに束ねるかが次のステップとなっている。
・海洋探査(JAMSTEC)・青色LD(名城大)・水中光無線給電(東工大)・高効率可視光ファイバーレーザ-(千葉工大)・スキャナー(産総研)・LD外部変調技術(NICT・早大)・LD直接変調技術(トリマティス)・AI.ロボティクス(千葉工大)・水中LiDAR(トリマティス)・海底環境調査(KDDI総合研究所)・海底地質調査(産総研)・水中光無線通信~ネットワーク~(東北大)・水中光無線通信~補足追尾~(東海大)・水中光無線通信~高速通信~(山梨大)

ALANコンソーシアムでは3年後に,水中LiDARで距離50m,分解能<1cm,水中光無線通信で距離1~100m,速度数十M~1Gb/s,水中光無線給電で伝送距離1~10m,伝送電力<10W~を達成したい考え。同時に,海底地形・水中構造物探査,養殖や警備などの水中モニタリング,海洋エネルギー調査といったビジネス展開も視野に入れている。 ALANコンソーシアムでは最初の実用化として,水中構造物の調査,特に橋脚など水中におけるインフラの老朽化調査を,LiDARで行ないたいとしている。また,技術を活用しやすい制度整備や国際標準化についても積極的に進めるとしている。