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ヤマタネ、農業生産法人『(株)ブルーシード新潟』を設立

(株)ヤマタネは、2024年8月14日開催の取締役会において、農業生産法人『(株)ブルーシード新潟』を設立することを決議した。

【設立の背景・経緯】
 ヤマタネグループは、長期ビジョン「ヤマタネ2031ビジョン」において「持続可能な営農に向けた産地連携の強化」を目標に掲げている。また、サステナビリティ経営の取り組みにおいても「生産地と農業の発展」を掲げ、産地と共に成長を目指し、社会的価値と経済的価値の両立を図るべく事業を推進している。
 稲作を取り巻く経営環境は、生産を継続するために必要な再生産価格の確保すら難しい状況であり、離農を加速させる大きな要因となっている。国内においては、人口減少に伴いコメの消費量が減少傾向にあるものの、生産者減少によるコメの生産量低下は、それ以上のスピード感で進んでいくものと予想される。一方、グローバルな視点では人口増加に伴い食料需要は拡大傾向にあり、海外からの調達環境も厳しくなることが予想されます。日本の食糧確保・安全保障の観点からも、産地の活性化を通じた食糧供給基盤の構築は最重要課題であると認識している。
 国内のコメ生産現場においては、人材の確保、資材費の高騰、高額な農業機械、気候変動など様々な課題が山積しているが、これらの課題を解決するためにも生産者が築いてきた豊富な栽培知識・経験に加えて、新たな栽培技術の知見や経営感覚を備えた農業経営の重要性が一層増している。
 以上の潮流をふまえ、この度、技術・経験を持つ地域の中核的な生産者と、経営スキルを持ち複数の農業ベンチャー企業とのネットワークを有するヤマタネグループが、共同で農業生産法人の設立をすることに至った。

【目的】
 ヤマタネグループが掲げる「持続可能な農業の実現」のためには、高収益モデルの構築が喫緊の課題となっている。流通・販売を担う同社が地域の生産者と共に直接農業生産を行い、提携先企業との協業を通じて先進的な手法を実証し、高収益モデルの確立を目指す。さらに、全国の生産者にその有効性を示すことで高収益モデルを展開し、持続可能な農業の実現とそれに伴う農産物の安定調達・安定供給を図る。

 具体的には、担い手が不足する地域で㈱ブルーシード新潟が水稲を含めた「複合経営」にチャレンジする。また、積極的に全国各地の革新的な生産を行う生産者との情報交換を行い、協働しながら高収益モデルの確立を目指す。
 稲作においては、生産コストの低減を目的として新たな栽培技術や資材の導入、農業機械の効率的な運用のほか、「e-kakashi」(※)等の農業IoTを導入し、植物の生育段階に合わせて最適な時期に作業をすることで、作業効率と品質向上を目指し、栽培体系全体の最適化を実践していく。園芸作物におきましては、提携先企業との協業によって先進的な栽培方法を導入し、コメを含めた農産物の輸出等、新たなマーケットを創出することで高効率なビジネスモデルを構築する。

※「e-kakashi」:グリーン㈱が提供する農業IoTサービスで、圃場に設置したセンサによって収集した環境データや生育情報等を活用し、最適な栽培方法をナビゲートするサービス

【施設概要】
(1)設立日(予定)     2024年9月6日
(2)名称          株式会社ブルーシード新潟
(3)所在地         新潟県長岡市寺泊夏戸
(4)代表者の役職・氏名   代表取締役社長 竹内 正彦
(5)事業内容        稲作・畑作物・果樹園の経営
               農業生産に係る受託、資材製造販売、
               共同利用施設の運営、コンサルタント業務
(6)資本金         3,000千円
(7)発行株式数       100株
(8)発行可能株式総数    10,000株

プレスリリースサイト(yamatane):
https://www.yamatane.co.jp/news/document.html?year=2024&id=20240814-b44e508c

先進的なエネルギー・環境技術に特化したビジネスマッチング「IAEオープンイノベーションフォーラム2024」

(一財)エネルギー総合工学研究所と(株)ケイエスピーは、2024年9月4日、かながわサイエンスパークにおいてIAEオープンイノベーションフォーラム2024を開催する。
 本フォーラムは、エネルギー・環境分野の参加者間が協同して強力な事業を創出することを目的とし、今年で5回目を迎える。当日は全国の産業支援機関から推薦された中小・スタートアップ12社が会場とオンラインでピッチと展示を行い、翌日から27日にかけて中堅・大企業が個別面談を繰り広げる。この度、当プログラムへの参加を通じてビジネスマッチングを希望する中堅・大企業を募集する。
●本フォーラムウェブサイト https://www.ksp.co.jp/media/category_03/a114

オープンイノベーションによってグリーンテックビジネスを構築し、リードする
 地球温暖化やエネルギー資源に関連する情勢が目まぐるしく変化する中、次世代電力や蓄電、カーボンニュートラルなど技術開発競争も激しさを増している。参加する中小・スタートアップ企業やIAE賛助会員(現在95社)をはじめとする中堅・大企業が、オープンイノベーションによる協業を通じて厳しい市場環境を勝ち抜く事業競争力の獲得を目指す。
 今回も最先端のセンサデバイスやデジタルトランスフォーメーション、ものづくり、アップサイクル、バイオ等の各技術を有し、ビジネスモデルや環境貢献度の面でも先進的な中小・スタートアップ企業を選抜した。

IAEオープンイノベーションフォーラム2024
● 会 期:2024年9月4日(水) 発表および展示、 9月5日 (木)~27日 (金) オンライン面談
● 会 場:かながわサイエンスパーク西棟3Fホール 川崎市高津区坂戸3-2-1 及びオンライン配信
● 参加費:無料
● 主 催:一般財団法人エネルギー総合工学研究所、株式会社ケイエスピー
● 後 援:経済産業省 関東経済産業局、神奈川県、川崎市

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000081202.html

「表層傾斜計クリノポール」国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録

応用地質(株)は、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に、同社製品の「表層傾斜計クリノポール」が登録されたと発表した。

【概要】
NETIS登録番号:QS-240007-A

技術名称:
 地盤や構造物の動きを捉えるための傾斜監視クラウドシステム「表層傾斜計(クリノポール)」

アブストラクト:
 地盤表層の変位を傾斜センサを用いて計測する技術である。従来は、データが温度の影響を受けていたが、本技術はセンサを地盤中に埋め込むことで温度の影響を極力排除した。データはクラウドサーバに送信され、データの品質や施工性及び経済性の向上が期待できる。

掲載先:
 国土交通省 NETIS新技術情報提供システム
 https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=QS-240007%20
【設置実績】
 近年では豪雨・土砂災害が激甚化・頻発化・広域化する傾向にあり、国土を面的かつリアルタイムで監視する防災システムが必要となっている。この課題を解決するために開発した「表層傾斜計クリノポール」は、低価格で容易に設置でき、かつ精緻な傾斜データの取得を可能としたセンサである。

 2020年のリリース以降、斜面監視をはじめ道路、河川、砂防などの施工管理においても活用いただいており、発売以来、累積出荷台数は1,300台を超えた。現在も全国で500台近くのクリノポールが、約100箇所のサイトを見守っている(台数はいずれも2024年6月末時点のもの)。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000088.000047274.html

アクポニ、汽水アクアポニックスを使ったバナメイエビの養殖試験

(株)アクポニは、同社が運営する神奈川県藤沢市のアクアポニックス農園にて、バナメイエビの養殖試験を開始した。

 本実証実験では、アクアポニックスに塩水を使用し、国内ニーズの高いバナメイエビを養殖する。また、その水を野菜ベッドに循環させ、耐塩性の高いスイスチャードや付加価値の高いハーブ等の植物を栽培する。実験期間中、エビと植物に必要なデータをセンサで測定することで、両者の共生効果について調査を行い、汽水アクアポニックスの実用化を目指す。

 水産庁の調べによると、エビは日本の水産物の消費品目の上位4位であり国内での需要が高いにも関わらず、そのほとんどを輸入に依存している(参考:水産庁 令和4年度 水産白書「我が国の水産物の需給・消費をめぐる動き」)。

 現在、日本において実用化されているアクアポニックスは淡水養殖だが、汽水アクアポニックスが実用化されれば、環境負荷の低い方法でエビを含む国産水産物の大規模な陸上養殖が可能となり、その活用の幅が大きく広がる。近年、エビ養殖に関する問い合わせが増加しており、アクアポニックスの可能性を拡大するために今回の試験を行うことを決定した。

■実証実験詳細
場所:湘南アクポニ農場(神奈川県藤沢市)
期間:2024年9月末まで(予定)

実証システムについて:
・NFT(薄膜型水耕法)
・水量 2,500L
・バナメイエビ600尾、野菜300株が育成可能
※野菜はスイスチャードおよびローズマリー等複数のハーブ類を予定

■本実証実験のポイント
1. IoTでエビと野菜のデータを収集/汽水アクアポニックスに最適な植物の選定
 本実証実験ではアクアポニックスを一元管理する独自のサービス「アクポニ栽培アプリ」を利用し、IoTを活用してバナメイエビと野菜のデータを収集する。
 これにより、農場環境や成育状況が把握できるようになるため、バナメイエビ養殖の環境最適化に加えて、汽水アクアポニックスに最適な植物の選定を行うことが可能になる。収集するデータは以下のような項目があげられる。
□測定項目
・給餌量
・バナメイエビ、各野菜の収穫量
・気温、湿度、水温、塩濃度、DO(溶存酸素量)、pH、EC(電気伝導度)、空気中二酸化炭素濃度 など

2. エビの国内生産の可能性を探り、環境負荷低減とコスト削減の両立を目指す
 アクアポニックスは水産養殖と水耕栽培を組み合わせることで効率的な資源循環を行っており、魚やエビのエサ由来の窒素を野菜の肥料として使用している。
 一般的に、陸上養殖のみを行う場合、エサに含まれる窒素のうち88%は定期的な飼育水の入れ替えで廃棄される。過去に同社が行った実証実験において、アクアポニックスでは通常廃棄される窒素を野菜の肥料として約99%有効活用できることが分かった。さらに、使用する水の量は陸上養殖と比較し約3分の1になるため、水使用量を約66%削減できる。
 現状、日本で消費されるエビは東南アジアをはじめとした海外からの冷凍品輸入がほとんどである。しかし、アクアポニックスによるバナメイエビ養殖が可能であることが実証され、それに伴いエビの国内生産が増えれば、輸送により生じる二酸化炭素排出量の削減も期待できる。また、同時に事業者の輸送コスト等の削減にもつながるため、環境負荷軽減とコスト削減を両立したビジネスの実現に貢献できる。

3. 国産エビと野菜を同時に生産し、食料問題リスク軽減とビジネスモデル拡大へ
 近年、世界における食料需給の変化と生産の不安定化により、日本においても食料供給が不足するリスクが増大しているといわれている。エビの国内生産の可能性が高まれば、消費者はより新鮮で安心感のある国産エビを身近で購入できるようになる。また、同時に野菜の生産を行うことで、食料自給率の向上に加え、農業従事者の高齢化や人手不足といった課題の解決にも一部貢献することができる。
 さらに、排水をせずに水を循環させるアクアポニックスの特性を生かして、山間地域など沿岸地域以外でもエビ養殖の実施が可能になる。汽水アクアポニックスが実現すれば、日本人に人気の高いエビや海水魚など、生産物の活用イメージがより明確化される。同社ではエビ養殖とあわせて排熱や余剰電力を活用する循環型のビジネスモデルを提案し、日本全国にアクアポニックスを拡大していくとのこと。
想定されるビジネスモデル例
・工場の排熱や地熱・温泉熱を利用したエビ養殖
・再エネや余剰電力を利用したエビ養殖
・バーベキュー場等の娯楽施設においてエビの釣り堀を併設
・山間部で育てたエビとハーブで6次化商品を開発 など

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000018039.html

自動運転システムADAS向け赤外線センサ〔使えるセンサシンポジウム2023 より〕(2)

花崎 勝彦(はなざき かつひこ)
コーンズテクノロジー株式会社
プロジェクト・マネージャー
花崎 勝彦
10.
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL ON A HOT DAY (96 degF)

赤外線センサーに関してよく聞かれる質問の一つに、気温が人の体温と同じ37度程度になると人物は写らなくなってしまうのでしょう⁉があります。 この質問に対するお答えがこのビデオ画像と言えます。華氏での90Fはほぼ摂氏の37度と同程度です、このビデオは正に外気温が人と同じ体温程度の条件下で撮影されました。路上を歩く歩行者たちは路面の温度よりも低く若干黒っぽく見えますが詳細は潰れることなくしっかりと写っています。人の体全体が均一に37度になることはないし、反射や物性の違い等々、人物が3~4ピクセルくらいに小さく遠くに写るような環境下でない限り、温度による外気との埋没は起こり難いと言えます。

11.
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL IN HIGH CONTRAST
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL IN HIGH CONTRAST

次の画像は、トンネルに入った直後の暗転、トンネルを通り抜けた場合の明転時の可視画像と赤外線画像の対比です。全てのCMOSセンサーがそうとは言いませんが、周りの照度が急速に変化した場合、ホワイトバランスやゲインの調整という意味で可視光センサーの代表格といえるCMOSセンターでは画像処理にある程度の時間を必要とします。それに対し、赤外線画像の場合は原理的な観点から可視光下での明暗には全く影響がなく、ある意味非常に安定した映像を供給し続けることができます。

12.
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL IN MANY TYPES OF FOG

夜の雨と霧、信号や対向車のヘッドライト、我々人の目にも過酷な環境は当然CMOSセンサーにも過酷な状況であり、正に三重苦、四重苦という環境ですが、赤外線センサーにとっては若干の影響はありますが、その安定度への揺らぎは少ないと言えるでしょう。

13.
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL FACING THE SUN (2x Speed)

同じように、CMOSセンターにとって厄介な環境が、朝日夕日に代表される太陽のハレーションです。勿論、赤外線画像ではほとんど影響を受けません。

14.
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL FACING THE SUN (2x Speed)
15.
THERMAL CAMERAS / PERFORM WELL AT NIGHT (3x speed)

夜間画像、赤外線画像では絶対的な安定度です。

16.
See 200 m – 4x Farther than Headlights

もう一つ、赤外線センサーに関してよく聞かれる質問があります、”どれくらい遠くまで写るのでしょうか”です。対象物とレンズとセンサーの組み合わせ次第ですとお答えすることが多いですが、ほとんどの皆さんは怪訝そうな顔をされます。人の目に見えている物は色彩がないだけでほぼ全て赤外線センサーは撮影できます。太陽は写りますし、遠くの山も雲もその写り方は異なってもしっかりと結像されます。婉曲的なお答えであることは承知しておりますので、ご質問の本意を汲み取ってお答えします。人物を20×10ピクセルで表現できる範囲内でその赤外線画像を取り込めれば、AIはほぼ90%の確率で人と認識できるとTeradyne FLIR社は述べております。つまりVGAクラスの赤外線センサーに画角50度程度のレンズを装着して200m先に歩く人を撮影すると大人が20×10ピクセル程度に収まりますので、AIでの自動識別が可能になるという意味です。ヘッドライトの到達距離が約50mと言われますので、約4倍程度という表現もできるでしょうか。

17.
BOSON+ LENS OPTIONS AND ZOOM

基本的には赤外線センサーとレンズの構造は、物性による特性は異なりますが原理的に電磁波を集光して結像させるという意味では、可視光センサーであるCMOSセンター、通常のカメラと同じです。よって、部材の違いにより価格的な差異は大きいですが同じようにズームレンズを構築することができます。

18.
BOSON+ (LWIR) FOV Comparison

加えて赤外線センサーとレンズの組み合わせ次第では、画角は大きく変わりそれに伴い撮影範囲は大きく変化します。その参考例を示しています。

19.
SHARPNESS AND CONTRAST ENHANCEMENT AND Super resolution

前述もしましたが、ノイズ処理の手法やコントラストの向上などを含めた画像処理手法は日々進化しており、最新の画像処理を施せば以前の古いセンサーで撮影されたRaw dataであってもノイズを軽減しながらエッジ強調やコントラストなどを複合的に管理することで、俗にいう”超解像”のレベルにまで到達していると言えます。

20.
Turbulence Mitigation

ノイズ処理の一つとして、画像の揺らぎを抑える処理の例です。

21.
NNTC – Object DETECTION

Teledyne FLIR社は、赤外線センサーメーカーの老舗として、膨大な数の赤外線画像やビデオを有しており、その膨大な赤外線画像にAI用のアノテーションを施した教育用画像をビジネスライセンス供与しております。このベータベースを基に教育されたAIはモノクロの赤外線熱画像環境下において物体認識のみならず、移動体認識、追従機能などを含め非常に高度なAI認識レベルを誇ります、このビデオはその一例です。AIでの物体認識にはその物体を表すエッジさえあれば、カラー色彩はむしろそのデータ量から処理能力を低下させる要因であり無駄とまで言い切るエンジニアもいるほどです。

22.
Thermal + Visible SENSOR FUSION ON SINGLE DISPLAY

とは言うものの、ブレーキランプや信号はどうするんだ!というお叱りも聞こえて参ります。必然的に色彩をベースにした路上情報は確実に必要ですので、これは赤外線画像に必要なカラーの可視画像をフュージョンさせたビデオです。一種のグラフィック処理ですのでカラーの色味の強さなどは如何様にも調整できます。

23.
Visible + Thermal SENSOR FUSION

アクティブに特殊な光源を照射する必要のないパッシブ・センサーとして位置するCMOSセンサーと赤外線センサーですが、ビジネス的な観点10項目からそれぞれのセンサーの特徴を評価してみますと、この二つのセンサーはお互いの不得意な部分を上手く補い合える立場にあることが認識できます。

24.
Visible vs LiDAR

次の画像の比較は、CMOSセンサーの可視画像とLiDARによる3D画像の対比です。自動運転のコンピュータシステムから見て、さてこれらの情報はお互いを補い合えるような立場に存在していると言えるのでしょうか。

25.
TURA  New product!

最後にTeledyne FLIR社がAuto市場に向けて展開している最新の赤外線センサーをご紹介しておきます。レンズ回路分全体を防塵防水対策を施し、そのまま自動車に搭載できる形態での製品展開となっております。レンズの画角も3パターンほど準備されています。







【著者紹介】
花崎 勝彦(はなざき かつひこ)
コーンズテクノロジー株式会社
プロジェクト・マネージャー

■略歴
エヌビディア社でのグラフィック画像処理、アプティナ社でのCMOSセンサー、フリアーシステムズ社での赤外線センサーのビジネス開拓に携わってきており現在に至る。

IoTセンサモジュール電源としてのエネルギーハーベスティング技術 Energy Harvesting Technology for IoT Sensor Module Power Sources(2)

勝村 英則(かつむら ひでのり)
合同会社かちクリエイト
代表
勝村 英則

3. 発電方式別エネルギーハーベスティング技術の現状

3.1 光発電

 光エネルギーは最も一般的で豊富なエネルギー源である。太陽光発電パネルとして広く使われている結晶シリコン型パネルは、照度が1000lux未満になると発電効率が急激に低下するため、屋内環境ではほとんど利用できない。
 一方、アモルファスシリコン型は古くから電卓や腕時計の発電デバイスとして使用されており、非常に安価に入手できる。アモルファスシリコン型は、会議室などの一般的な室内照度である500luxの環境下で、1cm²あたり約10μWの発電特性を持つ。すなわち名刺大の面積(約50cm²)で約500μWの電力を得ることができる。しかし屋内外を問わず常に明るい環境は少ないため、長期間でならすと、その1/3から1/4の電力と考える必要がある。
 このように、価格が安く入手しやすいアモルファスシリコン型は、徐々にIoTセンサモジュール用の電源として利用されつつある。また、室内などの暗い環境下でも高効率で大きな電力が発電できる色素増感型、有機薄膜型、ペロブスカイト型など新方式の開発もかなり活発に進められている。

3.2 振動発電

 振動発電の方式には、振動の共振周波数に一致させて大きな発電電力を得る方式、衝撃により共振振動を発生させて電力を得る方式、直接力を作用させて電力を得る方式などがある。また発電メカニズムは圧電、逆磁歪、電磁誘導、エレクトレット、摩擦など多岐にわたる。
 その中で最も普及しているのが「スイッチ発電」である。スイッチボタンを押す操作をコイルの近くを通過する磁石の動きに変換し、電磁誘導方式で発電された電力によって「スイッチを押した情報」を親機(電源あり)へ無線送信するデバイスである。このときの発電電力量はスイッチ一押しあたり約0.2mJであり、BLE、Zigbee、EnOceanなどの超低消費電力の通信規格で子機から親機への単方向通信に使われる。古い建物を壊さず電灯配線工事を避けたい欧州では、配線工事のいらない電灯スイッチとして一定の市場を形成している(1)。また国内では、公衆トイレの温水洗浄便座リモコンにスイッチ発電が応用されている(2)。人がスイッチを押したことを検知するセンサと言えなくもないが、純粋な意味でIoTとは言えない。リミットスイッチのように機械の動きを検知するセンサ等への応用が考えられるが、電池交換不要のメリットが見いだせるかがポイントとなる。
 モーターやポンプなどの回転機器は稼働中に常に振動しているため、その振動エネルギーを利用して発電し、回転機器の状態監視を目的としたセンサモジュールの電源にしようとする試みが多くなされてきた。できるだけ大きな発電電力を得るために、機器の振動共振周波数と発電デバイスの共振周波数を一致させる方式がとられる。しかし、共振周波数が機器によって異なることや、長期間の使用で共振周波数が変化することなどの課題があり、現状では実用化に至ったケースは少ない。このように共振現象によって大きな発電電力得る方式は実用化が難しいが、例えば橋梁や鉄道レールのつなぎ目などで発生する衝撃によって発電デバイスに自励振動を起こす方式は、比較的安定して発電ができる。この方式は、車や鉄道が通過する際にのみ発電するため、通過量が少ない場所では十分な発電電力量が得られない可能性があるが、インフラの劣化監視は喫緊の課題であり、今後期待される発電方式である。

3.3 熱電発電

 熱電発電は、ペルチェ効果の逆となるゼーベック効果と呼ばれる物理現象に基づいており温度差発電とも呼ばれる。ゼーベック効果は、二種類の異なる金属または半導体材料を接合し、その接合点に温度差を与えると電圧が発生する現象であり、この電圧を利用して電流を取り出し、電力を得るものである。
 熱電発電は、一部では工場排熱などからの電力回収方法として検討されているが、タービンなどと比較すると変換効率が低いため、応用例は少ない。しかし、変換効率が低いとはいえ、他の方式と比較するとエネルギー密度が高いため発電電力が大きい。例えば、高温部が50℃の対象物に対し、高さ30mm程度の放熱フィンで自然空冷する熱電発電デバイスでは、1cm²あたり約500μWの電力が得られる。
 さらに、振動発電デバイスと違って可動部がないため信頼性が高く、稼働時の温度は安定している機器・設備が多いため、光発電よりも安定して発電できる場合が多い。一昔前は、モジュールが比較的高価であることが課題であったが、最近ではペルチェ素子が猛暑対策の冷却素子として使われるなど、応用用途が広がっているため、価格も安くなりつつある。
 製鉄や化学分野の工場のように、比較的高温となる設備の状態監視のニーズがあり、また敷地が広く、点検とメンテナンス作業に多くの時間と人件費が割かれている場合のIoTセンサモジュールの電源用途として、今後大いに期待できる。

3.4 その他の発電方式

 上述の主要三方式の他にもRF信号回収、低周波ノイズ回収、植物、土壌菌、温度(差無し)発電など、様々な方式のエネルギーハーベスティング技術が提案され開発されているが、一部を除き発電電力がマイクロワット未満レベルで小さく、かつ不安定で、実用レベルに達していない。電池交換レスの価値が高く評価される環境で、簡単かつ低コストで安定して電力が得られる発電方式の開発が待たれる。

4. その他の課題とまとめ

 紙面の都合で詳しく触れることができなかったが、自己消費電力が極めて小さい昇降圧コンバーター、タイマー、電圧監視などの各種IC、わずかな電力でも充電することができ自己放電の小さい二次電池またはコンデンサなど、周辺回路技術の進展が近年極めて著しく、一昔前では実現できなかったことが、簡単にできるようになってきている。
 JR東日本による自動改札通路における振動発電電力実験が2008年、エネルギーハーベスティングブームが起きたのが2010年、エネルギーハーベスティングと言う技術タームが知られるようになって15年近く経っているが、当初の期待ほど普及が進んでいないのは事実である。一方でIoTの普及も道半ばであり、エネルギーハーベスティング電源が必要とされるインフラ構造物、巨大工場の設備、山、海などの自然環境(災害検知等)へのセンサの設置はまさにこれからである。技術開発については熟しつつあり、必要とされる応用から着実に実用化されることを期待する。





【著者紹介】
勝村 英則(かつむら ひでのり)
合同会社かちクリエイト 代表社員社長

■略歴

  • 1992年3月同志社大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、修士(工学)
  • 1992年4月松下電器産業(現パナソニック)株式会社入社
    1. 積層セラミックコンデンサ、LTCCデバイス・モジュールの開発、製品化
    2. 静電気対策部品(バリスタ、サプレッサ)の開発、製品化
    3. 2010年より独自開発の圧電厚膜セラミック素子を使った振動発電(エネルギーハーベスティング技術)+IoT新規事業を模索
  • 2018年5月株式会社デバイス&システム・プラットフォーム開発センター(DSPC)入社
    5年間にわたり国プロ事業等において下記のIoT関連最新技術の開発に従事
    1. エネハ(低照度室内光、低温度差熱電発電デバイス)に適した高効率電源モジュール
    2. 振動センサによる回転機器予知保全ソリューション
    3. 複数のセンサを取り扱うことができる超低消費電力エッジ端末プラットフォーム
    4. ユーザーがCPS(サイバーフィジカルシステム)を構築でき、簡単に実証実験ができるIoTプラットフォーム
    5. (3)(4)のIoTプラットフォームを使った新たな価値を生むIoT事例の創出
  • 2023年5月合同会社かちクリエイト起業
    現在に至る

海洋人材育成の現状及び今後の展開(2)

河村 光寛(かわむら みつひろ)
(一財)エンジニアリング協会
海洋開発室長
河村 光寛

4 海洋人材育成へのENAAの取組

 一般財団法人エンジニアリング協会(以下、ENAA)は、このような状況に鑑み、特に日本国内で洋上風力発電の導入目標が高く設定されているなか、海洋開発技術者の専門知識が不足しているため、その人材育成が急務であることから、この課題に対応するため、社会人及び学生向けに海洋人材育成のためのカリキュラムの策定、教材の作成・支援、各種セミナーや講習会等を実施している。以下にその具体的な取り組みを紹介する。

4.1 教材等の作成

4.1.1 海洋開発人材育成 カリキュラム・教材開発に関する検討業務

 産業界のニーズに基づいた実践的な専門カリキュラムの検討として、国内企業の海洋人材育成ニーズを把握し、カリキュラムを整理し、これに基づき、「海洋開発産業概論」、「海洋開発工学概論」(①海洋資源開発編、②海洋再生可能エネルギー開発編、③海洋開発技術編)及び「海洋開発ビジネス概論」の教材を作成した。さらに、教材の改訂版を作成し、「海洋開発工学概論」には新たに「プロセスセーフティ」及び「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を取り入れて更新した。

図 1 海洋開発人材育成の各教材(一部)2)
図 1 海洋開発人材育成の各教材(一部)2)

4.1.2 洋上風力発電人材育成カリキュラム等(プロジェクトマネジメント分野)検討基礎資料作成業務

 「産学連携洋上風力人材育成コンソーシアム(IACOW)」にENAAは協力機関として参加し、大学院生向けにウインドファーム開発における「プロジェクトマネジメント」の人材育成を目指し、プロジェクトマネジメント概要、リスク、コスト、スケジュールマネジメント等のシラバスを作成した。

図 2 洋上風力分野における人材育成に向けた取組(経済産業省エネルギー庁)3)
図 2 洋上風力分野における人材育成に向けた取組(経済産業省エネルギー庁)3)

4.2 各種セミナー、講習会

4.2.1 海洋開発セミナー(2018年度から)

 日本は、一般商船や掘削リグ・FPSO等の海洋開発関連施設の設計・建造技術で一時は世界をリードしていたが、造船業界の低迷と技術者の引退により技術の継承が難しくなっている。これらの技術は洋上風力等幅広い海洋開発分野で汎用性があり、次世代に伝えるべき重要なものであるため、社会人向けに海洋開発施設の計画・設計・建造・据え付け・運転・検査及び洋上風力発電等について講義している。なお、大学等ではこのような講義内容の講座がほとんどないため、学生にも受講の機会を与えている。

図 3 海洋開発セミナー教材(一部)

4.2.2 長崎海洋アカデミー(NOA)向けコースの提供(2021年度から)

 長崎海洋アカデミー(NOA)は、2050年までにカーボンニュートラルを目指し、地球温暖化対策として再生可能エネルギーの導入を進めている。日本国内では洋上風力発電の導入目標が高く設定されているが、海洋開発技術者の専門知識が不足しており、その人材育成が急務となっている。このため、主に社会人を対象とした人材育成の取り組み(図4)を推進し、日本財団オーシャンイノベーションプログラムの一環として設立された。

図 4 長崎海洋アカデミーにおける人材育成の取組み 4)
図 4 長崎海洋アカデミーにおける人材育成の取組み 4)

 現在、10コース(総論、事業開発、風況海象解析、ウィンドファーム認証とマリンワランティサーベイ及び保険・ファイナンス、浮体式洋上風力発電海底地盤調査・解析と洋上施工、洋上風力発電所EPCプロジェクトマネジメント、送電システムの基礎)のうち、ENAAは次の3コースを出前講座として提供している。また、日本財団の助成を受け洋上風力発電におけるHSEの基礎及び送電システムの基礎のシラバス・教材を作成した。
(1)洋上風力発電所EPCプロジェクトマネジメント(2021年度から)
(2)洋上風力発電におけるHSEの基礎(2023年度から)
(3)送電システムの基礎(2023年度から)

図 5 洋上風力発電所EPCプロジェクトマネジメント講義

4.2.3 洋上風力発電設備等の建設工事等の作業員教育ガイドライン作成及び講習会

 陸上の経験だけを持つ作業員が洋上作業に従事するケースが増えることを想定し、洋上における安全・環境・健康及び基本安全訓練に関する知識である「洋上での作業時の一般的な留意事項」を取りまとめたガイドラインを作成した。また、このガイドラインを使用し、以下の講義を実施している。
 1. HSE活動、2. 安全(洋上作業に係る安全管理・緊急時対応・乗り移り等)、3. 健康・衛生、4. 環境、5. 基本安全訓練、6. 防火・消火、7. 落水防止及び落水時の対応、8. 事故事例、9. 教育訓練。さらに、地球深部探査船「ちきゅう」にて実演・実技を交えた講習会を開催した。

図 6 ガイドライン教材の表紙 2)
図 6 ガイドライン教材の表紙 2)
図 7 洋上風力発電設備等の建設工事等の作員 教育訓練ガイドライン講習会講義
図 7 洋上風力発電設備等の建設工事等の作員
教育訓練ガイドライン講習会講義

4.2.4 実海域における海底地形調査としてROV調査の体験・学習

 学生を対象に、海洋石油・天然ガス開発、洋上風力発電の開発、CCS適地選定等、今後拡大が見込まれる海洋環境調査の体験・学習を目的として、調査船に乗り込み、実海域(相模湾周辺)で実施した。1日目は、海底地形調査としてマルチビーム・サブボトムプロファイラーの座学及び計測を行い、2日目はROVに関する座学及びオペレーションを行った。(主催:コンソーシアム)

図 8 調査船による海洋環境調査の体験・学習

4.3 その他の取り組み

 筆者はOffshore Tech Japan2024(2024年2月2日)にて「海洋エンジニアリング産業への取り組み 洋上風力発電に関わる人材育成」5)と題して講演し、洋上風力発電に関わる海洋人材育成について以下(図9)を報告した。

図 9 「海洋エンジニアリング産業への取り組み洋上風力発電に関わる人材育成」5)
(説明資料の抜粋)

 また、Sea Japan 2024(2024年4月11日)にて、主催者との共催により「次世代を担う洋上風力発電の人材育成」と題して、①洋上風力発電に関する世界と日本の見通し、②洋上風力分野における産業界と大学が一体となった新たな大学教育のしくみづくり、③長崎海洋アカデミーにおける人材育成の取組みについて、3名の方々による講演を行った 6)

むすび

 海洋再生可能エネルギー市場が成長する中、日本の関連企業は市場参入を加速させているが、実践的技術を持つ海洋開発技術者の不足が懸念されている。将来の市場獲得に向け、技術者育成が必要である。
 ENAAは、各業界のトップ技術力を持つ賛助会員や関連団体の協力を得て、産官学連携を強化し、教育シラバス策定、教材作成、セミナーや講習会等を通じて海洋人材育成プログラムを積極的に展開する方針である。



参考文献

  1. 海洋基本計画(令和5年4月28日閣議決定)
  2. 国土交通省 海事局 「海洋開発人材育成のための教材開発」
  3. 洋上風力政策の現状 (Floating Wind Japan 2024 経済産業省)
  4. 長崎海洋アカデミーにおける人材育成の取組み~洋上風力発電を支える知識の習得と作業訓練~(Sea Japan2024)
  5. 海洋エンジニアリング産業への取り組み 洋上風力発電に関わる人材育成(Offshore Tech Japan2024)
  6. 「次世代を担う洋上風力発電の人材育成」(Sea Japan2024)


【著者紹介】
河村 光寛(かわむら みつひろ)
一般財団法人エンジニアリング協会
技術部 海洋開発室長 研究理事

■プロフィール

  • 2018年4月から㈱INPEXより出向し、2018年度から2021年度にかけて造船・海運の技術を活かしたマージナルガス田の開発(国土交通省の補助金事業)に従事。
  • 2018年度から海洋開発分野における洋上風力発電の人材育成を喫緊の課題と捉え、技術者等の育成を目的とした各種セミナーの企画、立案、開催、及び関連するシラバスや教材の作成に積極的に取り組んでいる。
  • 2021年度から海上石油ガスプラットフォームからの排出フレアガス回収(自主事業)の社会実装に向けた検討を行っている。
  • 2023年度から内閣府総合海洋政策推進事務局が主催するAUV(自律型無人探査機)官民プラットフォームに参加し、AUVの社会実装を実現するための各種課題に取り組んでいる。

ピエゾ技術の動向と海洋産業への応用(2)

白坂 壽和(しらさか としかず)
(株)タイセー 第1製造2部
白坂 壽和

3.1 作製方法

円筒型圧電振動子の作製実績例は図 12のとおりである。バブルの大きさは振動子の高さを示す。

図 12 円筒型圧電振動子の製作実績例

図 12 円筒型圧電振動子の製作実績例

円筒型圧電振動子は、図 13の工程で製造される。タイセーでは原材料の調合から焼成、加工、組立まで圧電振動子を自社で一貫製造できる。電極材料についても焼付銀電極を標準として、自社で保有のスパッタリング装置、めっき装置により薄膜電極、めっき電極も形成可能なため、自由度が高い製品ができるのが強みである。
円筒型圧電振動子加工用の治工具類も全て社内で設計から加工・調整まで対応できるため、高い要求精度の加工が可能である。

図 13 円筒型圧電素子の工程簡易フロー
図 13 円筒型圧電素子の工程簡易フロー

また、成型金型さえ製作してしまえば、さらなる大型化も可能である。
大型化する場合、一般的な一軸プレスだと高さ中央部の密度が低くなる傾向があり、焼結時にクラックが発生する原因になる。
その場合には、離型剤および造粒粉の最適化、金型を改良し成型体に残留応力をかけないことで大型素子を製作することが可能となる。
更に、脱バインダー時のクラックにも細心の注意を払う必要があり、バインダー分解時には雰囲気ガスを選択する場合もある。

逆に小型素子の場合、加工品の同心度や面粗度が問題になる場合がある。
タイセーでは60年以上、時計部品加工から培った精密加工技術があるため、治工具類も全て社内で製作できることから、加工精度の高い圧電振動子の製造が可能である。

円板型圧電振動子の製造可能製作範囲は図 14のとおりである。

図 14 円板型圧電振動子の製作可能範囲
図 14 円板型圧電振動子の製作可能範囲

円板型圧電振動子についても円筒型圧電振動子同様に、大判化に対する技術は保有しているため、金型を製作し、また大型プレス機を導入することにより大判型圧電振動子の製造が可能になる。

3.2 共振周波数

ここで、圧電振動子の共振周波数および静電容量の設計方法について述べる。
円板型圧電振動子の共振周波数は、表 1タイセーの圧電材料特性例(代表値)の周波数定数N [kHz・m] から式(1)より計算することができる。

例えば、φ15×1.5mmt(3C 材)の径方向共振周波数の場合、

*電極パターンなどにより誤差があるので注意が必要

円筒型圧電振動子の共振周波数は、4.1 共振周波数と受波感度の設計を参照のこと

3.3 静電容量

円板型圧電振動子の静電容量値は、表 1 タイセーの圧電材料特性例(代表値)の比誘電率εから式(2)より計算することができる。

例えば、φ15×1.5mmt(3C 材)の場合、

円筒型圧電振動子の静電容量値も表 1 タイセーの圧電材料特性例(代表値)の比誘電率εから式(3)より計算することができる。

例えば、φ24-φ22×H32mmの場合、

4. 圧電振動子を用いた海洋アプリケーション

2.3 圧電振動子の基本特性でも記述したとおり、円筒型圧電振動子を用いた送受波器は、径方向共振周波数以下で平坦な感度周波数特性が得られることから最も使用しやすい。

円筒の径を小さくすれば、小型化、広帯域になるが、受波感度は低下する。逆に、径を大きくすると受波感度は高くなるが、共振周波数が低くなって平坦な帯域は狭くなってしまう。従って必要な帯域により受波感度と寸法が決まる。

円筒型圧電振動子の共振周波数は円筒外周半径Ra[m](外円周長)、音速(c [m/s])により式(4)、式(5)により計算することができる。

例えば、φ24-φ22×H32mmの場合、

共振周波数以下の平坦な部分での受波感度は以下の式で示される。
以下は共振周波数を考慮しない受波感度電圧の計算式である。

例えば、φ24-φ22×H32mmの場合、

表 3に代表例として円筒型圧電振動子の形状と共振周波数、受波感度の計算結果を示す。

表 3 円筒型圧電振動子の共振周波数と受波感度計算値
No. 外径
[mm]
内径
[mm]
高さ
[mm]
共振周波数
[kHz]
受波感度[dB]
re 1V/μPa
1 φ28 φ26 30 29.2 -192.6
2 φ24 φ22 32 34.0 -194.0
3 φ10 φ8 8 81.6 -202.2
4 φ5 φ4 3.5 163.3 -208.2

4.2 円筒型圧電振動子を用いたアプリケーション(ハイドロホン)例

4.1 共振周波数と受波感度の設計で示した圧電振動子を組み込んだハイドロホンの例を示す。

画像提供:株式会社アクアサウンド様 https://aqua-sound.com/product/hydrophone/

代表例として、φ24-φ22×H32 円筒型圧電振動子を使用したハイドロホン AQH-020の感度周波数特性を図15に示す。

図 15 φ24-φ22×H32 使用ハイドロホンの感度周波数特性(実測値)
図 15 φ24-φ22×H32 使用ハイドロホンの感度周波数特性(実測値)

受波感度をあげるために、円筒型圧電振動子の電極を分割し直列接続することで感度電圧をさらに改善することも可能である。

5. おわりに

本報告では、海洋で主に使用される、円筒型圧電振動子および円板型圧電振動子に求められる性能、振動子の設計例、円筒型圧電振動子を用いたハイドロホンの特性について述べた。
感度電圧を上げるためには圧電振動子の外径を更に大きくする必要がある。現状弊社の製造設備では大きさに限界があるが、過去の製造実績から、需要状況により大型化への対応が可能である。

また、近年ではマルチビームソナーに関する研究が活発に行われ、そのためには精密な加工技術が必要不可欠となっている。
弊社では60年以上、時計部品加工から培った精密加工技術があるため、治工具類も全て社内製作できることから、加工精度の高い圧電振動子の製造が可能である。

ハイドロホンを含むソナーは海外製が主流で国産製が少ないのが現状である。
弊社では円筒、円板、積層品も含めた多種多様な圧電振動子の一貫製造が可能である。今後はこの強みを更に生かして、国内の海洋向けソナーへの需要にマッチした圧電振動子の提供を行っていきたい。


謝辞
本報告にあたりご助言をいただいた株式会社アクアサウンド 遠藤社長、株式会社 AquaFusion 笹倉会長、足利大学 工学部 創生工学科 電気電子分野 土信田教授に感謝いたします。

以上




【著者紹介】
白坂 壽和(しらさか としかず)
株式会社タイセー 第1製造2部 部長代行

■略歴

  • 2000年科学技術振興事業団(現 科学技術振興機構)プレベンチャープロジェクト参画
  • 2002年株式会社タイセー入社、圧電材料開発、積層圧電アクチュエータ、超音波センサの開発業務などをおこない、現在に至る

Nexar、日本郵便と共同で奥能登地域の街路状況に関する情報を収集

Nexar(ネクサー) Ltd.社とその日本法人である(株)Nexar Japanは、日本郵便(株)と共同で令和6年能登半島地震が起きた奥能登地域の街路状況に関する情報を選択的に収集・分析するプロジェクトを実施した。

本プロジェクトでは郵便局の集配車両にNexarのAI搭載のドライブレコーダーを装し、最新の路上の画像・情報を自動で収集する。取得した画像・情報は、匿名化(マスキング)等の処理のうえ、リアルタイムでクラウド上のAIにて分析・整理・可視化され、Nexarのプラットフォーム上で共有される。

これらの仕組みを活用し、日本郵便は令和6年能登半島地震にて被害を受けた地域の道路状況等を随時把握することにより、集配計画の策定等への活用の可能性について検討している。

■プロジェクト概要
内容:郵便局の集配車両に装着したNexarのドライブレコーダーを活用し、各車両が走行するルートの街路状況
   などのデータを取得・分析。郵便局の集配計画策定等への活用を検討する。
期間:2024年5月〜2024年7月(データの取得は2024年6月末まで)
エリア:輪島郵便局、珠洲郵便局、穴水郵便局配達区域内

■Nexarのドライブレコーダーおよびテクノロジーの特徴
 Nexarの強みはAI(人工知能)を駆使したリアルタイムマッピング技術である。ドライブレコーダーから収集したリアルタイム映像から、道路標識や工事区間のほか、陥没箇所や障害物といった道路上で起こる様々な事象を検知する。静的・動的問わず、高速道路や一般道路のAIデジタルツインを作成することが可能であり、既に米国アリゾナ州フェニックスにてNexarのリアルタイムマッピング技術を活用した自律走行を可能とする地図を作成しているという。

 コア技術は、視覚データの処理と伝送に関連する演算と通信処理の課題を克服し、最小遅延と低コストを達成する為、エッジとクラウド側それぞれの機能を最適化する点にある。その結果、関連するエリアでリアルタイムのデータフィードが生成され、それらを活用することによって運転の安全性を確保することが可能となるとしている。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000074815.html

ST、生活家電および産業機器向けの750Wモータ駆動用小型リファレンス設計


●3相ゲートドライバIC「STDRIVE101」による高電力密度およびスリープ・モードでの超低消費電力を実現
●実装ボードをSTのオンライン・ストアから入手可能

STマイクロエレクトロニクスは、3相ゲートドライバ、STM32G0マイクロコントローラ(マイコン)、および750Wのパワー段を直径わずか50mmの円形プリント基板に集積したモータ駆動用リファレンス設計「EVLDRIVE101-HPD(High Power Density)」を発表した。

このリファレンス設計は、スリープ・モードで1uA未満という超低消費電力を特徴とする。また、小型であるため、ヘアドライヤーやハンディ掃除機、電動工具、ファンなどの機器に直接組み込むことができる。ドローンやロボットおよび、ポンプやFAシステムといった産業機器の駆動部にも簡単に組み込むことができる。

堅牢かつ小型の3相ゲートドライバ「STDRIVE101」が搭載されたこのリファレンス設計は、台形波制御やベクトル制御(FOC)、センサ付きまたはセンサレスのロータ位置検出など、モータ制御方法を柔軟に選択できる。STDRIVE101は、600mAの電流駆動能力を持つ3個のハーフ・ブリッジを内蔵している。5.5V~75Vの範囲で動作するため、あらゆる低電圧アプリケーションに対応可能。また、ハイサイド / ローサイド・ゲートドライバ用のリニア・レギュレータと、調整可能なドレイン・ソース間電圧(Vds)モニタリングによる保護機能を集積している。外部入力ピンも備えているため、ハイサイド / ローサイド・ゲートの直接入力制御、またはPWM制御を選択できる。

STM32G0マイコンに搭載されたシングル・ワイヤ・デバッグ(SWD)インタフェースを利用した同マイコンとの通信や、ファームウェアの直接更新によるバグ修正および新機能の実装も可能である。

EVLDRIVE101-HPDのパワー段には、60V耐圧のSTripFET F7シリーズMOSFET「STL220N6F7」が搭載されており、1.2mΩ(Typ.)のオン抵抗(Rds(on))で効率的な動作を維持し、プラグ・アンド・プレイ型のコネクタでモータと簡単に接続できる。また、高速のパワーオン回路が内蔵されているため、アイドル時に電源との接続を切断して消費電力を削減することで、バッテリ駆動アプリケーションの駆動時間延長に貢献する。さらに、パワー段のMOSFETのVdsモニタリングや、低電圧ロックアウト(UVLC)機能、過熱保護、クロス導通保護(ハイサイドとローサイドのトランジスタが同時にオンすると出力電流が流れないように保護する機能)など、システムの安全性および効率向上に貢献する保護機能が多数内蔵されている。

EVLDRIVE101-HPDは、STのeSToreから入手可能で、すぐに使用することができる。単価は、約92.00ドル。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001402.000001337.html