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岡山大、植物の病原菌を感知するセンサの進化の歴史を解明

<発表のポイント>
 ・イネの病害虫に対する免疫受容体(センサ)遺伝子の進化の歴史を調べた。
 ・進化の過程で遺伝子重複により二つに増加した免疫誘導型免疫受容体のうちの一つがセンサ型へと分化し、新たにいもち病菌を認識したことを発見した。
 ・免疫誘導型受容体とセンサ型受容体は、協調してペアNLRタンパク質として一つの免疫受容体として働くことを見出した。

◆概 要
 植物は、病害虫から身を守るために病害虫を見つけるセンサの役割を担うNLR型免疫受容体を持っている。植物は、このNLR型免疫受容体の遺伝子を数多く持っており、これが植物の強力な防御システムの秘密だと考えられている。

 岡山大学の高等先鋭研究院を構成するひとつである資源植物科学研究所の河野洋治教授は、中国科学院CAS Center for Excellence in Molecular Plant Scienceなどの研究機関と協力して、NLR型免疫受容体遺伝子の進化の歴史を解析した。

 その結果、イネの重大な病気であるいもち病に対して抵抗力を高める仕組みを明らかにした。

 河野教授らは、進化の過程で一つのNLR型免疫受容体遺伝子が遺伝子重複により二つに増え、それぞれが異なる役割を担うようになったことを発見した。一つは病原体を見つける「センサ」の役割、もう一つは実際に免疫反応を引き起こす「免疫誘導」の役割である。これら二つの遺伝子が協力して働くことで、より効果的に病気から植物を守っていることがわかったという。

 この研究成果は、2024年5月30日に科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

 今後、この研究をさらに進めることで、一つの免疫受容体で多くの種類のいもち病菌を認識できる「人工免疫受容体」を作り出せる可能性がある。これは、イネだけでなく、最近いもち病が広がりつつあるコムギにも応用できると期待されている。つまり、世界の主要な穀物であるイネとコムギの両方で、いもち病への抵抗力を高められる可能性がある。この研究は、私たちの食糧生産を脅かす病気から作物を守る新しい方法の開発につながる重要な一歩といえるだろう。

 本情報は、2024年7月30日に開催された岡山大学定例記者会見で公開された。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002399.000072793.html

半導体製造現場の安全を守るコスモス式ガス検知部「PS-8」を発売

ガス警報器・検知器メーカーの新コスモス電機(株)は、半導体⼯場向けガス検知警報装置用 コスモス式ガス検知部「PS-8シリーズ」を2024年7月31日(水)に発売した。

■開発の経緯
半導体製造工場では製造工程において、人体に危険な特性を持つ多種多様なガスを扱っており多数のガス検知警報装置の設置が必要となる。また、一般高圧ガス保安規則関係例示基準では、「特殊高圧ガスに係るガス漏えい検知警報設備の指示値の校正は、6ヶ月に1回以上行うこと。」と定められている。
新コスモス電機では、半導体工場向けガス検知部として1997年に「PS-6」、2003年に前身機種である「PS-7」を開発した。この製品シリーズは、校正済みのセンサユニットを交換するだけで現場でのガス校正が不要で、メンテナンスの手間やランニングコストを低減できる「コスモス式」を業界に先駆けて採用した。その特徴が好評で、国内だけにとどまらず海外の半導体工場でも多くのお客様にご使用いただいている。
そのような中、従来の特徴を活かしながら、お客様のニーズに合わせてカスタマイズできる次世代のガス検知部開発に取り組んできた。

この度発売した「PS-8」は、メインユニットにサブユニットや拡張ユニットを追加することで、お客様が必要なガス種を必要な分だけ増設できるなど、お客様のニーズに応じたフレキシブルな監視が可能となった。また、長年培ったガスセンサ技術を活かし、ガス検知部のコアとなるガスセンサの性能向上を実現した。さらに大型液晶で視認性を高めるなど、ユーザビリティがアップした。

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000077903.html

PTV Vissim Automotiveリリース

PTV Groupは業界をリードする交通シミュレーションソフトウェアの強力なエディションを新しく発表した: PTV Vissim Automotiveは、あらゆる車種に対応した、レスポンシブ・デジタルテスト環境を構築するための包括的な新機能セットを提供するという。

・あらゆる種類の車両に対応したレスポンシブなデジタル・クローズドループ・テスト環境
・運転挙動のプリセット、交通生成ウィザード、OpenDRIVEネットワークのインポートによるテスト環境の簡単な構築
・自動運転用の新しい挙動モデル

自動車メーカーにとって、車両シミュレーションは製品開発プロセスに欠かせないものとなっている。設計がまだ物理試験を行えるほど成熟していない場合や、プロトタイプが入手できない場合でも、仮想環境ではプロジェクトの初期段階から試験を開始することができる。シミュレーションは、現実世界では実現不可能な多様で大量のテストを可能にする。それにより時間とコストを削減し、車両の安全性を高め、環境への影響を最小限に抑えることができる。ミクロ交通シミュレーションソフトウェアPTV Vissimは、バーチャルテスト環境にリアルな交通シナリオを組み込むために長年信頼されてきた開発ツールである。例えば自動車工学においては、パワートレイン開発における電気自動車の航続距離の最適化や、ハイウェイ・アシスタントなどの自動運転機能の検証などに利用されている。

PTV Vissim Automotiveは、自動車開発におけるミクロシミュレーションをより簡単に、より速く、新しいユースケースに適用できるようにする、強力な新機能セットを提供する。このソフトウェアは、テスト車両に対してリアルに反応する、挙動モデルベースの周辺交通を備えた動的なクローズドループ・テスト環境を提供する。交通シナリオは、道路利用者間(自動車、自転車、歩行者、公共交通機関など)の相互作用や交通ネットワークに基づいて動的に生成されるため、特定のシナリオを事前に定義することなく、長時間のテスト走行や探索的なテストを行うことができる。

このバーチャルテスト環境は、頻繁にアクセルとブレーキを繰り返す都市部のラッシュアワーや、複雑なインターチェンジでの高速道路走行など、現実的な交通状況をシミュレーションすることができる。シミュレーションの確率的な性質により、同じ初期条件から無限のバリエーションをテストしたり、特に関連性の高い特定のシミュレーションシーケンスを繰り返したりすることができる。シミュレーションに含まれる多種多様な交通状況は、標準的なサイクルや固定シナリオと比較してテストの関連性を大幅に高める。さらにシミュレーションされた交通流に基づいて、AIを用いたシナリオマイニングにも利用できる。

◆交通生成ウィザードとその他の機能
高度な自動化機能とプリセットを使うと、Vissim Automotiveをより簡単に、高速に利用することができる。ソフトウェアには周辺交通の運転挙動を表現するインテリジェントなプリセットが用意されており、簡単に設定を行うことが出来る。テスト環境の難易度は、コンフォート志向からアグレッシブ志向まで、さまざまな運転スタイルに合わせて調整できる。例えばアグレッシブな交通シナリオでは、より接近したカットイン操作が行われ、テスト対象車両とその自動運転機能にとってチャレンジングな環境を提供する。新しい交通生成ウィザードは、車のいない道路ネットワークに周辺交通を発生させて、瞬時に賑やかな交通環境に変えることができ、様々な交通密度に合わせて簡単に調整することができる。

◆自動運転用の新しい挙動モデル
先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)の運転挙動を可能な限りリアルに再現するため、Vissim Automotiveは道路交通におけるドライバーの挙動を反映した標準追従モデルを強化し、前後方向や横方向の制御に特化した挙動を持つ自動運転車両用の挙動モデルを新たに開発した。

◆データとインターフェース
Vissim Automotiveは、IPG CarMaker、dSPACE ASM、Hexagon Virtual Test Drive、MathWorks Simulinkといった業界で特に重要なソリューションとのインターフェースを提供し、包括的な協調シミュレーションを可能にする。このソフトウェアはインポート機能を大幅に改善しており、最新のバージョン1.8までのOpenDRIVEネットワークのインポートをサポートしている。さらに、新たに開発された外部標高データのインポーターにより、標高や勾配情報を交通ネットワークに簡単に統合することができ、正確な走行抵抗のシミュレーションが可能になる。

製品サイト(PTV):https://www.ptvgroup.com/ja/products/ptv-vissim/automotive

自動運転システムADAS向け赤外線センサ〔使えるセンサシンポジウム2023 より〕(1)

花崎 勝彦(はなざき かつひこ)
コーンズテクノロジー株式会社
プロジェクト・マネージャー
花崎 勝彦
1.
FLIR provides cameras from Visible to LWIR

我々、太陽系に住む地球人は、太陽が放出する幅広い電磁波に晒されながら日々の暮らしを送っています。その電磁波とは短波長側からガンマ線にはじまり、X線、紫外線と進み、人間が視認できる可視光線帯域、350~850nμに至ります。人が光として認識できる電磁波の帯域はわずかに幅500nμと非常に狭く、その可視広帯域の一番の長波側がの赤色です。その赤色の外側に1~14μという幅広い赤外線帯域が存在し、地上の全ての物質は絶対零度以上になった瞬間から赤外線を自ら放射し始めます、つまり地球上のほぼ全ての物体は赤外線を放射していると言っても過言ではありません。その赤外線量を受けて可視化するのが赤外線センサーなのです。

2.
Thermography

ここで一つ赤外線画像の問題点につき言及しておきましょう。右上にマグカップの可視光画像と赤外線画像があります。マグカップには熱いコーヒーがめいっぱい注がれていますが、その表面には縦方向に黒いビニールテープと右横方向にアルミホイルが貼り付けられています。当然ながらマグカップ自体は熱いコーヒーに温められ全体が均一に温度上昇しているはずですが、黒色のテープ部の画像はより高温を示す白色に表示されていますし、アルミホイルの部分は逆により低い温度を示すがごとく黒く表示されています。これは赤外線画像の特筆すべき特性の一つで、物性やその色によって放射率が変動してしまうことを表しています。つまり、色やその物性によってはその物体の放射する赤外線量が正しい温度を表現できない場合があることを意味しています。 赤外線センサーの出力できる画像は、本来モノクロです。温度の高い部分を白く表現するWhite Hotか、温度の高い部分を黒く表現するBlack Hotを選択できますが、基本的には白色と黒色の間を諧調で表現したモノクロ画像です。ところが、コロナ禍においてよく見られたサーモグラフィーと呼ばれる熱画像には赤やオレンジ、ブルーや紫というカラフルな色彩がつけられていたのを覚えている方々は多いのではないでしょうか。あれは人々が直感的に温度差をイメージでき易いように白黒画像の諧調に色彩をパレットで割りつけた偽色なのです、赤外線センサーの世界のトップシェアを誇るTeledyne FLIR社の作成物です。

3.
Movie1

今回のプレゼンテーションの資料としては、可視光画像と赤外線画像を左右に並べて直感的にその違いを理解していただけるように配置しています。前述の通りその物体自体が放射する赤外線を画像可しますので、光源と影という概念が存在しません。

4.

この比較は、可視光画像、NIR(CMOSセンサーのIRカットフィルターを装着しない900~1000μm帯域)、近赤外帯域、遠赤外線帯域の4つの帯域の画像を異なるセンサーで可視化した画像比較です。撮影環境は、夜、霧、強い光源によるハレーションという可視広帯域のCMOSセンサーにとっては三重苦となるような非常に過酷な状況となっています。自動運転の中心に位置するCMOSセンサーの弱みを敢えて顕在化させるという意味合いを強く持つ環境と言えるでしょう。

5.
Comparison in Smoke

次の画像は、赤外線の大きな特徴の一つでもある、煙や霧の中を透過できる特性を表しています。煙や霧の粒子である水蒸気は非常にその粒子が荒いために、赤外線はそれに邪魔されずに透過しセンサー面に到達するために結像できます。ただし、そこには限界が存在し、介在する煙の粒子、水蒸気の量が増えるにしたがって見えづらくなってしまいます。

6.
BOSON+ NEW STANDARDS FOR SENSITIVITY, QUALITY, POWER CONSUMPTION, AND PERFORMANCE

Teledyne FLIR社のBosonという遠赤外線センサーの概略を示します。VGA(640×512)クラスの解像度を有しながら、写真の通り非常に小さくパッケージングされた世界最小の赤外線センサーと言えるでしょう。半導体プロセスとMEMS技術を融合させたプロセスで製造されたマイクロボロメーター(酸化バナジウム)ベースのセンサーであり、レンズなしのボディサイズは21 x 21 x 11mmに収まっています。レンズも広角90度から狭角6度程度まで幅広くラインナップされており、写真のレンズは広角側の一般的に見える大きさのタイプですが、狭角なレンズはセンサー自体の数百倍もありそうな巨大さであり、削り出しのゲルマニウムが採用されているために非常に高価です。出力精度は日々進化しており現状では20~40mK、ノイズ低減やコントラストの向上などを含めた新しいISP処理も相まって、一世代前の”ノイズの多めな白黒画像”からは一線を画した感のあるくっきりとした赤外線画像へ進化しています。

7.
500K Auto-Qualified Sensors in Cars

Teledyne FLIR社は前身のFLIR Systemsの頃に欧州のAutoliv社との協力で自動車業界初となる量産仕様の赤外線センサーの実績を確立しました、約20年以上前の2002年の出来事です。Night Visionと称され、夜間の歩行者や動物を速やかに認識できる赤外線センサーの機能を顕在化させました。そこから欧州のの高級自動車メーカーを中心に量産仕様の赤外線センサーとして今現在も継続的に採用されています。

8.
NEW CARS’ PEDESTRIAN-SAFETY FEATURES FAIL IN DEADLIEST SITUATIONS, STUDY FINDS

トピックスとしての鮮度は落ちてしまった感は否めませんが、今から4年ほど前の2019年10月の紙面でWall Street Jurnal社は今の新車の乗用車に搭載されている歩行者安全として謡われている機能は全く使い物にはならないという衝撃的な内容を発表しました。その理由として、明るさの落ちてしまう夜間に機能しないこと、子供は90%見過ごされてしまうこと、速度が50km以上になると機能しなくなるという3つの理由を挙げていました。さてそこから4年経っている現在の新車の歩行者安全機能は十分に進化していると言えるのでしょうか。

9.
Night time detection - pedestrian & bike

次のビデオ画像は、米国でUberがHigh-Wayを横断していた通行人をはねてしまった人身事故の再現現場の画像です。可視画像と赤外線画像の両方で歩行者認識のAIを起動させた場合の同時再生をビデオにまとめています、全く同じシーンを撮影していても赤外線画像でのAIは可視画像の10秒以上も前に歩行者を認識し最初のバウンディング・ボックスを表示しています。これは赤外線画像の夜間の優位性を明確に表した例と言えるでしょう。





次回に続く-





【著者紹介】
花崎 勝彦(はなざき かつひこ)
コーンズテクノロジー株式会社
プロジェクト・マネージャー

■略歴
エヌビディア社でのグラフィック画像処理、アプティナ社でのCMOSセンサー、フリアーシステムズ社での赤外線センサーのビジネス開拓に携わってきており現在に至る。

IoTセンサモジュール電源としてのエネルギーハーベスティング技術 Energy Harvesting Technology for IoT Sensor Module Power Sources(1)

勝村 英則(かつむら ひでのり)
合同会社かちクリエイト
代表
勝村 英則

1.  IoTセンサモジュールの電源確保課題とエネルギーハーベスティング技術

 IoT(Internet of Things)の基本的な概念は、あらゆるモノがインターネットに接続され、データを相互にやり取りすることである。この中で、センサは現実世界の情報をデジタルデータに変換し、IoTシステムに取り込む役割を果たしており、温度、湿度、圧力、加速度など、さまざまな物理量を測定するセンサがIoTの基盤を支えている。またセンサによって収集したデータを分析し、我々の生活や産業の効率を飛躍的に向上させることで、新たな価値の提供が期待できる。
 当然のことながらセンサを駆動するためには電源が必要である。商用電源を簡単に確保できる場所であれば良いが、多くの場合、工事が必要でありコストがかさむ。また、消費電力を下げればバッテリー駆動とすることができるが、バッテリーは必ずいつかは消耗して使えなくなるため、長期的に使用する場合は交換が必要となる。簡単に交換できるのであれば問題ないが、例えば簡単に手が届かない位置に設置されているバッテリーの交換はコストがかかる。また、センサの数が多くなると、バッテリーの監視が新たなタスクとなってしまう。
 この課題を解決するために注目されているのが「エネルギーハーベスティング技術」である。エネルギーハーベスティング技術は、環境中に存在する微小なエネルギーを収集し、それを電力に変換する技術である。この技術を活用することで、センサモジュールは商用電源やバッテリー交換の必要なく、長期間にわたり自律的に動作するため、持続可能な運用が可能となる。裏を返せば、電源確保やバッテリー交換が容易な電源問題が深刻ではない条件で、エネルギーハーベスティング技術を適用しても意味がない。
 エネルギーハーベスティング技術で得られる発電電力は一般的にマイクロワットからミリワットレベルの微小電力である。この微小電力を漏らすことなく集め、貯め、効率的に使うことが本技術の最大のポイントである。なおソーラー発電のようにワット以上得られる発電はエネルギーハーベスティング技術に一般的には含まない。
 本解説文ではまず、エネルギーハーベスティングによる駆動を可能とするIoTセンサモジュールの電源設計指針について説明し、今後エネルギーハーベスティング技術が必要とされる応用分野の一例について概説する。続いてエネルギーハーベスティング技術の代表的発電方式である光、振動、温度差発電の一般的な発電電力を示し、それぞれの方式がどのような分野への応用が向いているのか説明する。本解説文によって、エネルギーハーベスティング技術の実際を知っていただき、IoTセンサモジュールの進化にどのように寄与するのか、その可能性と挑戦を理解するための一助となれば幸いである。

2. ノーマリー・ディープスリープ動作

 エネルギーハーベスティング技術で得られる電力は一般的に微弱で不安定であるため、IoTセンサモジュールの消費電力量(単位:W・s=J)を可能な限り小さくする必要がある。瞬間的な消費電力(単位:W)が小さいセンサモジュールであっても、常に動作が必要な場合にエネルギーハーベスティング電源は向かない。
 トータルの消費電力量を小さくするのに最も効果があるのは間欠駆動である。すなわちセンシングや無線など必要な動作をするとき以外は、完全に電源を落としてしまう(ノーマリー・オフ動作)駆動方法で、停止している時間に対して動作している時間の比率(デューティ比)をできるだけ小さくするのが望ましい。ただ完全に電源を落としてしまうとタイマーさえ動かすことができず定期的な駆動ができなくなるため、多くのIoTセンサモジュールではタイマーのみ動作させ、待機時の消費電力を極力抑えた(望ましくは1μA未満)ノーマリー・ディープスリープ動作とする場合が多い。ノーマリー・ディープスリープ動作のイメージを図1に示す。任意の時間長におけるトータル消費電力量を小さくしようとすると、センサモジュールの駆動間隔tsを動作時間taに対して長くするとともに、待機時の消費電力Psを十分に小さくする設計、部品の選定が重要である。

図1 ノーマリー・ディープスリープ動作のイメージ
図1 ノーマリー・ディープスリープ動作のイメージ

 図2は平均駆動電流Pa=5mA、駆動時間ta=10秒の比較的消費電力量が大きい動作をするセンサモジュールに対して、待機時間(駆動間隔) tsと1日あたりの平均消費電力(=1日の消費電力量/86400秒)の関係を、待機時電流Ps=5.0μAおよび0.5μAで比較した結果である。なお動作電圧3.3Vで計算している。図のように、駆動間隔(ts)が長くなるほど両者の差は大きくなり、待機電流0.5μA、駆動間隔6時間以上の条件であれば平均消費電力は10μW未満と極めて小さくなる。サブミリワットレベルの微小電力しか発電できないエネルギーハーベスティング電源でも条件次第ではIoTセンサモジュールを稼働可能であることがわかる。

図2 駆動間隔と1日あたりの平均消費電力の関係
図2 駆動間隔と1日あたりの平均消費電力の関係

 今後エネルギーハーベスティング電源の採用が有力な応用の一つとして、長期にわたる状態監視を目的とした屋外インフラ設備へ設置したセンサモジュールの電源供給があげられる。商用電源の配線工事や電池交換作業にコストがかかると言ったニーズ面で合致するとともに、インフラ設備の状態変化は一般的に年単位でゆっくり変化するため、一般的には高頻度でセンシングする必要はなく、ノーマリー・ディープスリープ動作で問題ないと言った技術面で相性の良い応用である。センシングデータの無線通信距離を長くする必要があるが、低消費電力で比較的長距離通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)通信の普及により、国内であれば広範囲で利用が可能となっている。したがってエネルギーハーベスティング電源によるLPWA通信の駆動が重要技術の一つとなる可能性が高い。



次回に続く-





【著者紹介】
勝村 英則(かつむら ひでのり)
合同会社かちクリエイト 代表社員社長

■略歴

  • 1992年3月同志社大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、修士(工学)
  • 1992年4月松下電器産業(現パナソニック)株式会社入社
    1. 積層セラミックコンデンサ、LTCCデバイス・モジュールの開発、製品化
    2. 静電気対策部品(バリスタ、サプレッサ)の開発、製品化
    3. 2010年より独自開発の圧電厚膜セラミック素子を使った振動発電(エネルギーハーベスティング技術)+IoT新規事業を模索
  • 2018年5月株式会社デバイス&システム・プラットフォーム開発センター(DSPC)入社
    5年間にわたり国プロ事業等において下記のIoT関連最新技術の開発に従事
    1. エネハ(低照度室内光、低温度差熱電発電デバイス)に適した高効率電源モジュール
    2. 振動センサによる回転機器予知保全ソリューション
    3. 複数のセンサを取り扱うことができる超低消費電力エッジ端末プラットフォーム
    4. ユーザーがCPS(サイバーフィジカルシステム)を構築でき、簡単に実証実験ができるIoTプラットフォーム
    5. (3)(4)のIoTプラットフォームを使った新たな価値を生むIoT事例の創出
  • 2023年5月合同会社かちクリエイト起業
    現在に至る

海洋人材育成の現状及び今後の展開(1)

河村 光寛(かわむら みつひろ)
(一財)エンジニアリング協会
海洋開発室長
河村 光寛

1 はじめに

 海洋人材育成は、持続可能な海洋利用や海洋関連産業の発展において極めて重要な役割を果たしている。海洋産業の多様化と技術進歩に伴い専門的な知識と高度な技術を持つ人材が強く求められている。ここでは海洋人材の育成における現状、課題、今後の展開及び一般財団法人エンジニアリング協会(以下、ENAA)の海洋人材育成の取り組みについて紹介する。

2 海洋人材育成の現状、課題、今後の展開

2.1 現状

(1) 教育機関の取組(大学・関連機関)
 日本の教育機関では、海洋人材育成に向けて多様な取り組みが行われている。大学では、海洋科学や海洋工学の専門知識と技術を習得できる学部や研究科を設置し、人材育成を支援している。東京大学は海洋学際教育プログラム、高度国際海洋人材育成基金、海洋アライアンス連携研究機構を通じて、九州大学は海洋システム工学部門や船舶海洋人材育成寄付講座を通じて、神戸大学は海事科学部と海洋政策科学部を通じて、東京海洋大学は海洋工学部における「海洋開発環境エネルギー概論」の講座を通じて、高知大学は農林海洋学部の海洋資源学科を通じて、それぞれ特色ある教育プログラムを提供している。これらの取り組みにより、総合的に学ぶ機会は増えているが、エンジニアリングの基礎知識と他分野の特化したスキルを合わせて習得できるコースや、諸外国のような専門職大学院の設置はまだ少ないのが現状である。
 関連機関では、日本財団のオーシャンイノベーションコンソーシアム(以下、コンソーシアム)は、産学官公連携の統合的なプラットフォームとして、将来の日本の海洋開発産業を担う人材育成を目指している。また、「長崎海洋アカデミー(NOA: Nagasaki Ocean Academy)」では、社会人向けに洋上風力発電に関わる専門的な知識と技術を習得できるコースを提供している。

(2) 産官学の取組
 産官学連携による海洋人材育成では、教育機関、政府、企業が協力し、実践的で高度な人材育成を推進している。大阪大学は再生可能エネルギーや水産資源開発などの分野で企業と共同プロジェクトを実施し、北海道大学は企業からのゲスト講演者を招き、東京大学は柏キャンパスに「柏海洋フォーラム」を設置し、産学連携と異分野連携を推進している。
 産官学連携においては、「産学連携洋上風力人材育成コンソーシアム(IACOW)」が長崎大学を中心に、秋田大学、秋田県立大学、千葉大学、北九州市立大学、三菱商事、中部電力等と共に、経済産業省の洋上風力発電人材育成事業費補助金を活用して、洋上風力の社会実装を目指し、大学教育基盤の強化と産業界との連携が進められている。九州大学洋上風力研究教育センター(RECOW)は九州大学、佐賀大学、北九州市立大学と66の協力機関により、洋上風力の研究と教育を専門とし、産学連携を強化して技術革新と人材育成を推進している。さらに、洋上風力人材育成推進協議会(ECOWIND)は高専機構と連携し、高専生への人材教育を今後展開する予定であり、産官学連携が徐々に強化されている。

(3) 政府等の支援
 日本では「海洋基本計画1)」に基づき、政府が大学や専門学校に資金提供や設備整備支援を行い、海洋教育の質を向上させている。また、日本財団などが海洋分野の学生に奨学金を提供し、経済的支援を通じて人材育成を促進している。

2.2 課題

(1) 教育機関の取組(大学・関連機関)
 海洋関連の仕事には高度な専門知識とプロジェクト管理や国際交渉などの総合的なスキルが必要で、教育システムは専門性に偏りがちである。学生は専門技術や理論の習得に多くの時間を費やす一方、プロジェクト管理やコミュニケーション能力の習得に割く時間が不足しているため専門知識だけでなく、プロジェクト管理やチームリーダーシップなどの総合的スキルを持った海洋人材の育成を推進する必要がある。

(2) 産官学の取組
 産業と教育機関の連携強化として、海洋関連産業と教育機関の連携がまだまだ不十分であり、現場が求めるスキルや知識を教育に組み込むことができていないため、産業界とのパートナーシップやインターンシップの強化が必要である。

(3) 政府等の支援
 海洋人材育成には、予算不足、カリキュラム更新、専門教員確保、環境保全と産業発展の両立、多様な人材確保とキャリアパス構築が必要である。

(4) その他

  • 1) 人材不足

     高度な専門知識と技術を持つ人材の不足が深刻な問題となっている。特に、洋上風力発電関係の技術者、海洋環境の保全、海洋資源の持続可能な利用に関する専門家及びデータサイエンティストが不足している。

  • 2) 多様なキャリアパスの提供

     海洋産業の多様なキャリアパスに対応するため、教育機関は海洋技術、環境科学、経営学などの多様なコースを提供し、キャリアカウンセリングや就職支援を強化する必要がある。学生が適したキャリアを見つけられるよう、教育機関はサポートを充実させることが求められる。さらに、個人のスキルを可視化するスキルパスポート(履修証明など)を活用し、必要なスキルを習得するための道筋を示すツールが重要である。

  • 3) 女性の参画促進

     海洋分野においては、依然として男性の比率が高い状況が続いる。女性の参画を促進するための取り組みが進められ、女性研究者のキャリア支援や、女性が働きやすい職場環境の整備が求められている。

  • 4) インクルージョンの推進

     多様な背景を持つ人材の参画を促進し、インクルーシブ(多様性を受け入れ、すべての人々を平等に扱う姿勢や考え方)な教育環境を整備するとともに、女性やマイノリティの参画を支援するための奨学金や研修プログラムの導入が求められている。

  • 5) 持続可能性と環境問題への対応

     気候変動、海洋プラスチック汚染、海洋酸性化等の環境問題に対応できる人材の育成が急務となっている。しかし、これらの問題に関する教育や研究が十分に行われていない。

3 今後の展開

 第4期海洋基本計画1)では、海洋人材の育成も重要な柱とされている。この計画に基づき、以下のような取り組みについて展開することが望まれる。

  • (1) 大学や関連機関での教育プログラムの強化と拡充

    ① 最新技術の導入
     教育プログラムに最新の海洋探査やデータ解析技術を組み込み、学生が実践的なスキルを習得できるようにする。オンラインコースやデジタル教材を活用して広範な地域で教育機会を提供し、他分野からのデータサイエンティストなどの人材を海洋分野に参入させ、海洋におけるDX及び海洋ロボティクス技術を推進する。
    ② インターンシップと実地訓練の拡充
     企業や研究機関との連携を強化し、学生が海洋環境での経験を積む機会を増やすことが重要である。従来の企業主体のインターンシップに加え、現場の課題と学生の学びを結びつける「実践型インターンシップ」が必要と考えられる。これにより、理論と実践を統合した学習が可能になる。

  • (2) 政府等の支援強化

    ① 資金援助の拡充
     政府や国際機関からの資金援助を拡充し、教育機関や研究プロジェクトの活動を支援することが重要である。特に、先進的な海洋探査機器やデータ解析技術の導入に必要な資金を確保することが必要である。
    ② 国際協力の強化
     国際機関や他国との連携を強化し、共同研究や学生交換プログラムを促進することが重要である。これにより、グローバルな視野を持つ人材の育成が進み、国際的な課題に対応できる力を養うことができる。

  • (3) 持続可能性と環境問題への対応

     環境教育の強化は、気候変動や海洋汚染等の環境問題に対応するための教育プログラムの強化が必要である。具体的には、持続可能な資源利用や環境保全に関する知識と技術を学ぶ機会を提供することが重要である。



次回に続く-



参考文献

  1. 海洋基本計画(令和5年4月28日閣議決定)
  2. 国土交通省 海事局 「海洋開発人材育成のための教材開発」
  3. 洋上風力政策の現状 (Floating Wind Japan 2024 経済産業省)
  4. 長崎海洋アカデミーにおける人材育成の取組み~洋上風力発電を支える知識の習得と作業訓練~(Sea Japan2024)
  5. 海洋エンジニアリング産業への取り組み 洋上風力発電に関わる人材育成(Offshore Tech Japan2024)
  6. 「次世代を担う洋上風力発電の人材育成」(Sea Japan2024)


【著者紹介】
河村 光寛(かわむら みつひろ)
一般財団法人エンジニアリング協会
技術部 海洋開発室長 研究理事

■プロフィール

  • 2018年4月から㈱INPEXより出向し、2018年度から2021年度にかけて造船・海運の技術を活かしたマージナルガス田の開発(国土交通省の補助金事業)に従事。
  • 2018年度から海洋開発分野における洋上風力発電の人材育成を喫緊の課題と捉え、技術者等の育成を目的とした各種セミナーの企画、立案、開催、及び関連するシラバスや教材の作成に積極的に取り組んでいる。
  • 2021年度から海上石油ガスプラットフォームからの排出フレアガス回収(自主事業)の社会実装に向けた検討を行っている。
  • 2023年度から内閣府総合海洋政策推進事務局が主催するAUV(自律型無人探査機)官民プラットフォームに参加し、AUVの社会実装を実現するための各種課題に取り組んでいる。

ピエゾ技術の動向と海洋産業への応用(1)

白坂 壽和(しらさか としかず)
(株)タイセー 第1製造2部
白坂 壽和

1. 海洋へのピエゾ実用化の歴史

物質に圧力を加えるとその圧力に比例した電荷が生じる圧電効果は1880年にジャック・キュリーとピエール・キュリーによって発見された。逆に物質に電圧をかけると変形する性質が逆圧電効果である。
この逆圧電効果を利用した圧電振動子は海洋での音波の発生にも広く使われ、1912年、タイタニック号が氷山に衝突し沈没した事故を契機に、水中に音波を放射して障害物を探知する研究が本格的に始まった。

その後、1922年頃にはフランスのランジュバンが水晶振動子を用いて、放射したパルス音波の往復時間から水深を読み取る技術を開発、1935年頃には英国で実用化され、多様な用途に広がっていった。

音波の音源となる圧電振動子においては、戦後の1947年にはチタン酸バリウム(BaTiO3)セラミックスの圧電性が見出された。BaTiO3は共振周波数の温度安定性があまり良くなかったため、温度安定性を重視しない魚探用電気音響変成器として1951年に実用化された。その後の活発な材料研究により、圧電振動子はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に広く置き換えられた。

主に圧電振動子を音源とするソナー(SONAR:Sound Navigation and Ranging)は音波によって物体を検知する技術の総称である。
ソナーの中でも圧電振動子などで自らが音波を発し、その反射波から目標物の方位と距離を把握するのがアクティブ・ソナー、対して、探知目標が発する音波を圧電振動子で検知するのがパッシブ・ソナーである。パッシブ・ソナーの中でも水中の音を聴く、もしくは記録するために圧電振動子を用いた受信専用器をハイドロホンという。図 1に円筒型圧電素子を内蔵したハイドロホンの簡易構造図を示す。

図 1 ハイドロホン簡易構造図
図 1 ハイドロホン簡易構造図

本報告では、海洋での圧電振動子に求められる性能、振動子の設計例、円筒型圧電振動子を用いたハイドロホンの例を紹介する。

2. 海洋での圧電振動子に求められる性能

主にアクティブ・ソナーの音源として使用される送波器用圧電振動子と、パッシブ・ソナーの検知用として使用される受波器用圧電振動子に要求される特性について述べる。
送波器と受波器は、それぞれ機能が異なるが、使用上、経済性から1つの圧電振動子を送受兼用にしている場合が多い。

2.1 圧電材料の要件

送波器として使われる圧電振動子に求められる性能は次のとおりである。
(1) 電気機械結合係数Kが大きい材料
(2) 圧電d定数が大きい材料(εが大きい材料)
(3) 誘電損失 tanδが小さく、機械的品質係数Qmが大きい材料
(4) 周波数f、電気機械結合係数Kの温度係数が小さい材料

受波器として使われる圧電振動子に求められる性能は次のとおりである。
(1) 圧電g定数が大きい材料
(2) 静電容量C(比誘電率ε)が小さい材料(g = d/ε
(3) 比誘電率ε、電気機械結合係数Kの温度係数が小さい材料

ここで、送受波器用圧電振動子に用いられているタイセーの圧電材料特性(代表例)を表 1に示す。

また、各材料の温度特性データを図 2に示す。 特に 3C 材は受波器用に広く用いられている材料であるが、温度変化に敏感なシステムには 1C 材のような温度特性が良い材料が選択される。

上述のとおり1つの圧電振動子を送受兼用にしている場合が多いが 送波器用材料として、誘電損失の少ない 5C 材が選択される場合もある。

図 2 各種圧電材料の温度特性
図 2 各種圧電材料の温度特性

2.2 圧電振動子の種類

海洋で主に用いられるタイセーの圧電振動子例を図 3(円筒型)、図 4(円板型)に示す。主に、円筒型は円筒の径方向振動で水平方向に超音波を放射し、円板型は厚み振動により深さ方向に超音波を放射して使用される。

図 3 円筒型圧電振動子例
図 3 円筒型圧電振動子例
左から、C-11(φ84-φ70.8×H31.8mm)、φ28-φ26×H30mm、φ24-φ22×H32mm、
φ10-φ8×H8mm、φ5-φ4×H3.5mm、C-26(φ38.1-φ28.25×H30.6mmH)(塗装後)
図 4 円板型圧電振動子例
図 4 円板型圧電振動子例
左からφ80×8.5mmH、φ30×2mmt、φ12×0.6mmt、φ5×0.3mmt

画像は一例であり、製作可能範囲は 3項 圧電振動子の作製例 を参考、また、円筒、円板以外の角板や積層圧電振動子、コンポジット型圧電振動子、その他特殊形状も製造が可能である。

円筒型圧電振動子のインピーダンス特性測定結果例を図 5、φ24-φ22×H32の変位図を図 6、同シミュレーション結果を図 7、代表特性値を表 2に示す。

円筒型圧電振動子を用いた送受波器は図 8のとおり、円筒の水平方向で無指向性であり、径方向共振周波数以下で平坦な感度周波数特性が得られることから最も使用しやすい送受波器である。

図 5 円筒型圧電振動子のインピーダンス測定結果例
図 5 円筒型圧電振動子のインピーダンス測定結果例
図 6 φ24-φ22×H32変位図
図 6 φ24-φ22×H32変位図
図 7 円筒型圧電振動子のインピーダンスシミュレーション結果
図 7 円筒型圧電振動子のインピーダンスシミュレーション結果
表 2 円筒型型圧電振動子の代表特性例(実測値)
円筒型 fr [kHz] Kr [%] C [pF]
φ28-φ26×H30 31.8 22.5 47,033
φ24-φ22×H32 35.6 20.9 43,031
φ10-φ8×H8 97.3 31.3 4,174
φ5-φ4×H3.5 199.1 40.5 1,811

*径方向振動モード

図 8 φ24-φ22×H32円筒型圧電振動子を組み込んだハイドロホンの指向特性(実測値)
図 8 φ24-φ22×H32円筒型圧電振動子を組み込んだハイドロホンの指向特性(実測値)

次に代表例として円板型圧電振動子であるφ30-2mmtのシミュレーション結果を図 9、同径方向(基本波)変位図を図 10、同厚み方向(基本波)変位図を図 11に示す。

図 9 φ30×2mmt インピーダンスシミュレーションデータ
図 9 φ30×2mmt インピーダンスシミュレーションデータ
図 10 φ30×2mmt変位図 径方向基本波
図 10 φ30×2mmt変位図 径方向基本波
図 11 φ30×2mmt変位図 厚み方向基本波
図 11 φ30×2mmt変位図 厚み方向基本波


次回に続く-





【著者紹介】
白坂 壽和(しらさか としかず)
株式会社タイセー 第1製造2部 部長代行

■略歴

  • 2000年科学技術振興事業団(現 科学技術振興機構)プレベンチャープロジェクト参画
  • 2002年株式会社タイセー入社、圧電材料開発、積層圧電アクチュエータ、超音波センサの開発業務などをおこない、現在に至る

富士通、イオンモールでミリ波レーダー分析AIを活用した実証実験を開始

 富士通(株)とイオンモール(株)が運営するショッピングモールであるイオンモール太田は、イオンモール太田内のバリアフリートイレにおいて、ミリ波レーダー分析AIを活用し、転倒などの早期発見、および用途外利用や長時間利用の検出に関する実証実験を2024年8月1日(木曜日)から2025年1月31日(金曜日)まで、実施する。
本実証実験では施設内のバリアフリートイレにミリ波レーダーを設置し、プライバシーに配慮しながらトイレ内での転倒などの異常事態の検出や各設備の利用率などの検証を行う。

背景
富士通は、2024年1月からTOTO(株)とミリ波レーダー分析AIを用いて、商業施設や駅構内などに設置されたバリアフリートイレなどの特にプライバシーを重視する必要がある空間における見守りについて実証実験を行い、誰もが安心して過ごせる公共トイレ空間の創出に向けて共同で取り組んでいる。そのような中、イオンモール太田でも、バリアフリートイレ内における転倒など予期せぬ事故の早期発見による一層の安全性確保が課題となっていたことから、両社はこのたび、実証実験をイオンモール太田のバリアフリートイレで開始するに至った。

実証実験の概要
●実施期間:
  2024年8月1日(木曜日)から2025年1月31日(金曜日)予定
●実施場所:
  イオンモール太田(所在地:群馬県太田市)内の一部のバリアフリートイレ
●実証内容:
  ミリ波レーダー分析AIを用いて利用者のプライバシーに配慮しながら、バリアフリートイレ内での転倒などの早期発見、および用途外利用や長時間利用の検出に関する実証実験を実施する。具体的にはイオンモール太田内の一部のバリアフリートイレに富士通のミリ波レーダーを設置し、トイレ利用者をレーダーで捉える。その情報はリアルタイムでクラウドへ転送され、AI分析を行った上でバリアフリートイレ内の転倒や用途外利用、長時間利用を検出し、安全性確保の有用性について確認する。また、エリアごとの利用頻度や占有率を収集し、利用者にとってより良いトイレ空間を目指した検証を行う。
●両社の役割:
  イオンモール太田:バリアフリートイレ利用者の安全確保とバリアフリートイレ内のデータ収集および利用実態の把握。
  富士通:ミリ波レーダー分析AIなど見守り技術の提供、データ収集および分析、技術評価に基づく技術向上。

プレスリリースサイト:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/07/29.html

セイコーエプソン、マルチセンサー技術による高精度・低ノイズのIMU『M-G570PR』

セイコーエプソン(株)〔以下 エプソン〕は、高性能な6軸センサーを搭載した慣性計測ユニット(以下 IMU*1)の新ラインアップとして、高精度・低ノイズの防水・防塵型、プレミアムモデル『M-G570PR』を開発、2024年7月より量産を開始した。

2011年にエプソン初となる水晶ジャイロセンサー*2をコアとしたIMUを発売以来、同社IMUは、精密農業(GNSS*3)や民生・産業部品を活用する小型人工衛星*4、EO/IRカメラジンバル*5、アンテナの制振制御など、さまざまなアプリケーションに採用され、多くの実績と高い品質により、市場から好評を得ている。近年では、空中や人工衛星での映像撮影や測量など利活用分野が広がり、より精確な位置・姿勢制御のニーズが増大している。それに伴いIMUには姿勢制御において重要とされる高精度性能への要求が高まっている。

新製品『M-G570PR』は従来品の「M-G370PDG」をベースに、エプソン独自のマルチセンサー技術により、複数のIMUを合成することで高性能化を図った。これにより、ジャイロバイアス安定性*6 0.5°/h、角度ランダムウォーク*7 0.04°/√hを実現し、より高精度計測を可能にするという。

さらに、金属筐体パッケージ化により防水・防塵規格IP67に対応することで耐環境特性を高めるとともに、産業分野で幅広く採用されているシリアル通信RS-422*8インターフェースを標準装備した。そのため、高安定性、高信頼性が要求される多様な産業アプリケーションへ適用可能で、用途に合わせた最適な製品をお客様に選択して貰うことが出来る。

■新製品の特長
 ・ジャイロバイアス安定性 0.5°/hを実現
 ・角度ランダムウォーク 0.04°/√hを実現
 ・ジャイロセンサーのノンリニアリティ特性*9 0.05%を実現
 ・防水・防塵対応 IP67、RS-422インターフェース、故障診断機能採用

■本製品のアプリケーション
 ・民生・産業部品を活用する小型人工衛星・EO/IRカメラジンバル・アンテナなどの制振制御
 ・ナビゲーションシステム(GNSS、INS*10、高精度ロケータ)など
 ・無人機(産業ドローン・地上車・海底探査)など
 ・産業機器などの振動・角度・軌道計測

製品の詳細情報は下記ウェブページをご参照のこと。
https://www.epson.jp/prod/sensing_system/

*1:慣性計測ユニット(Inertial Measurement Unit:通称IMU)
 3軸の角速度センサーと3軸の加速度センサーからなる慣性運動量を検出する装置
*2:ジャイロ(角速度)センサー
 基準軸に対する、物体の単位時間当たりの回転角度(角速度)を検出するセンサー
*3:GNSS(Global Navigation Satellite System)
 全地球測位衛星システム
*4:本製品およびエプソンのIMUは、宇宙空間での使用における規格に準拠したものではありません
*5:EO/IR(Electro-Optical/Infra-Red)カメラジンバル
 電気光学式、赤外線式カメラシステム
*6:ジャイロバイアス安定性(Bias Instability)
 アラン分散で水平(0乗)の特性を表す部分をバイアス安定性と呼ぶ。1/fノイズと相関があり、センサーのポテンシャルを表す重要な指標の一つである
 (アラン分散とは、センサーの性能を表す指標の一つで、静止時出力の安定性を表している。横軸にデータの平均時間、縦軸に平均時間で区切ったときの平均値の分散を示している。アラン分散に現れる特性の傾きは-1、-1/2、0、1/2、1乗の傾きになることが知られており、アラン分散はノイズ密度と相関性があり、ノイズ密度は周波数、アラン分散は時間で表現される指標である。値が小さいほど、安定度が高く、性能がよいことを示す。)
*7:角度ランダムウォーク*1:慣性計測ユニット(Inertial Measurement Unit:通称IMU)
 3軸の角速度センサーと3軸の加速度センサーからなる慣性運動量を検出する装置
*8:RS-422
 産業・工業製品などで使用されるシリアル転送のインターフェース仕様
*9:INS(Inertial Navigation System)
 慣性航法装置
*10:ノンリニアリティ
 ジャイロセンサーあるいは加速度センサーの入出力特性において、線形近似したときの近似直線と出力値のずれ幅(誤差)の最大値をフルスケールとの比で表したもの
 アラン分散の-1/2乗の傾きがある部分を角度ランダムウォークと呼ぶ。ホワイトノイズと相関があるため、平均時間を長くすると平均時間の-1/2乗で値は小さくなる

プレスリリースサイト:https://corporate.epson/ja/news/2024/240729.html

仙台市、データ連携基盤の活用促進へ「DATA SENDAIプラットフォーム」創設

 仙台市では、データ連携基盤を利活用しやすい環境を提供し、企業、教育・研究機関、地域団体などの多様な主体による連携を促すことで、新たなデータ利活用事例の創出を目指す枠組み「DATA SENDAIプラットフォーム」を創設する。
 また、データ連携基盤を活用したソリューションやサービス・アプリの開発を支援する「DATA SENDAIフロントライン」を実施することとし、支援プロジェクトの募集を開始する。
▶特設ウェブサイトはこちら:https://data-sendai-platform.jp/

■DATA SENDAIプラットフォームの会員募集
本プラットフォームでは、ともにデータの利活用促進に取り組んでくださる企業や団体の皆様を幅広く募集する。
〇会員向けサービス(抜粋)
・ データ連携基盤へのアクセス及び利用
・ データ連携基盤に関する技術支援、情報提供
・ データ利活用事例に関する広報
・ 会員同士の交流機会

〇会員条件(抜粋)
・ 個人(個人事業主を除く)でないこと
・ 反社会的勢力、又は反社会的勢力の関係者でないこと

〇利用料金
無料(任意参加のイベント等に際し、会員から参加費等を徴収する場合あり)

■開発支援プログラム「DATA SENDAIフロントライン」

〇募集テーマ
テーマ名                     採択予定数     補助上限額
① 浸水センサデータ活用による開発実証       1件        150万円
② 動的データ連携による開発実証          1件        150万円
③ データ連携基盤活用実証             2件        各50万円

〇支援内容
(1) 開発実証にかかる費用の補助 ※上限あり
(2) データ連携基盤に関する技術サポート(伴走支援)
(3) プロジェクト成果の広報支援

〇スケジュール
時期                    内容
7月25日(水)~9月5日(木)      応募受付期間
7月25日(水)~8月2日(金)      質問受付(1回目締切)
        ~8月16日(金)     質問受付(2回目締切)
9月                    支援プロジェクトの審査・選定
10月~令和7年2月            プロジェクト実施
令和7年3月                成果報告会

■キックオフ説明会について
【日  時】7月31日(水)13時00分~15時00分(2時間)
【開催方法】Microsoft Teamsによるオンライン形式
【内  容】・DATA SENDAIプラットフォームについて
      ・開発支援プログラム「DATA SENDAIフロントライン」について
      ・データ連携基盤について(機能、活用事例、デモンストレーション等)
【申込方法】下記参加申込フォームからお申し込みのこと(7/30迄)
 https://forms.office.com/e/CbJB4pjSYg

■お問い合わせ
DATA SENDAIプラットフォーム運営事務局
(受託事業者:KPMGコンサルティング株式会社)
メールアドレス JP-FMKC-DSPF@jp.kpmg.com
問合せフォーム https://forms.office.com/e/0Tn8vx0Z1i

特設サイト:https://data-sendai-platform.jp/