凸版印刷株式会社(以下 凸版印刷)は、ZETAアライアンスの一員として、次世代LPWA規格ZETA(ゼタ)※1の普及を推進しており、、ZETAとAIを活用したさまざまな見守りサービスの開発を推進している。
このたび、ZETAとAIを活用し錦鯉の養殖状況を可視化できる見守りサービスを開発。2019年5月7日から10月31日まで大日養鯉場(株)の協力のもと、新潟県にある複数の養鯉場で実証実験を実施するとのこと。
このサービスは錦鯉の養殖を行う山間部の池付近に、各種センサ、カメラなどを組み合わせて設置し、水位、酸素量、給餌などの養殖管理に必要なデータの取得とその変化を検知することで、遠隔から育成状況、酸素不足などによる死亡や育成不良などのトラブル予知の把握を実現するもの。センサで検知した情報はクラウド又はオンプレミス※2上に蓄積され、管理事務所など別の場所に設置されたPCやスマートフォンなどで確認が可能。人手による定期的な目視管理は錦鯉の品質や生産量安定のため欠かすことができないが、養鯉場の多くは養殖に適した環境である山間部などの遠隔地に点在しており、作業負担が課題となっていた。ZETAの特長である中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)を活用することにより、LTE(携帯)電波が届かないエリアでも通信環境を延長できるため、山間部などの遠隔地に点在する養鯉場における養殖状況の可視化と常時管理が可能となった。
また、水位、酸素量、給餌などのデータと育成結果を紐づけて蓄積し、AIを活用しさまざまな育成パターンの学習を行う。これまで、水産養殖の生産方法は、主に熟練生産者のノウハウやアナログな記録が頼りとなっていたが、最適な育成パターンをデータ化し可視化することで生産プロセスの標準化を図り品質の安定を実現するとのこと。
◇ サービスの特長
●ZETAの特長である中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)を活かしたサービス
ZETAでは中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)が可能となる為、施設の奥まった箇所や山間部、遠隔地に点在する池など電波が届きにくい場所に対しても、中継機を活用する事で安定的に通信することが可能。
●エッジ処理によりLPWAを活用した遠隔管理が可能
数百bpsといった低速度のLPWAでは、サイズが大きい画像のようなデータは送信が困難である為、端末側でデータ加工を行うエッジ処理により、遠隔管理に必要十分な範囲に機能を限定し不必要なデータをサーバへ上げずコストを抑える方法を採用。
●生産プロセスの可視化とAIを活用しさまざまな育成パターンを学習
水温、酸素量、給餌などのデータを蓄積することで、熟練生産者のノウハウやアナログな記録に頼り不透明になりがちな生産プロセスを可視化。AIを活用しさまざまな育成パターンを学習させることで、本サービスの精度を高め品質の安定に寄与する。
◇ 今後の目標
凸版印刷は本サービスの技術検証を進め、2019年秋からサービスの提供を開始し、2022年度に関連サービスも含め約10億円の売上を目指す。また将来的にはIoTカメラ(ZETA版)※3とも連携し、養殖施設だけでなく、農業施設や公共施設管理などにも用途を拡張し、ZETAとAIを活用した見守りサービスの開発を推進していくという。
※1 ZETA
ZiFiSenseが開発した、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域の分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持つ、IoTに適した最新のLPWAネットワーク規格。LPWAの規格のひとつであるZETAは、中継器を多段に経由するマルチホップ形式の通信を行うこで、他のLPWAと比べ、基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能な方式として注目されている。
※2 オンプレミス
自社でサーバなどハードウェアを設置・導入し、管理・運用する形態。ZETAはクラウド上に用意されたZETAサーバの活用が前提となる為、オンプレミスを利用する場合は他のネットワーク規格も含めて現場に合ったシステム構成を検討する。
※3 IoTカメラ(ZETA版)
2019年4月18日に株式会社ACCESSと凸版印刷が協業開発を発表したヒト、モノを認識するAI機能を搭載した低消費電力の小型IoTカメラ。低解像度の画像データをエッジ側でAI処理することにより不要なデータをサーバへ上げることによる通信コスト増大を回避できます。電源・通信設備不要のため、本カメラを設置するだけで既存の施設や設備を簡単に低コストでIoT化することが可能。
ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000218.000033034.html