大牟田市とTOPPANデジタル、イノシシ駆除活動のDXに関する実証を開始

 福岡県大牟田市と、TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANデジタル(株)は、大牟田市内で発生しているイノシシによる獣害の低減に向け、獣害対策IoTシステムの実証を2024年10月から12月末までの約3か月間実施する。

 本実証では、TOPPANデジタルが提供する獣害対策支援サービス「リモワーナⓇ」の機能拡張に向け「エサ有無検知システム」「AI検知罠システム」の有用性を検証。これまでの「リモワーナⓇ」の通知機能に加え、センサによるエサの有無の常時監視機能やAIを活用した動体検知機能による、イノシシの捕獲精度向上の効果測定を実施するという。

■ 本実証の背景
 野生鳥獣による住宅地への侵入や農作物への被害は全国で深刻化しており、農作物被害額は約156億円(※1)と非常に高い水準になっている。大牟田市ではイノシシによる獣害問題が年々増加傾向にあり、市内に100か所以上設置されているイノシシ罠の見回りは1日に4時間以上、週3回程度の高サイクルで実施されている。地元猟友会では会員の高齢化や後継者不足などからこれらイノシシ捕獲用箱罠の見回り負荷の大きさが問題となっている。
 このような中でTOPPANデジタルは2021年より獣害対策支援サービス「リモワーナⓇ」の販売を開始。ネットワーク通信規格「ZETA(ゼタ)」(※2)を活用した罠センサおよび罠のリアルタイム監視システムにより、捕獲された際の通知が瞬時に届くことから、自治体などを中心に活用が広がっている。
 今回の機能拡張では、捕獲通知機能に加えて、罠のエサ有無を把握する機能や捕獲する機能を搭載した。本実証では、新たに開発した箱罠のエサ有無を監視する「エサ有無検知システム」と自動捕獲をする「AI検知罠システム」の有用性を、大牟田市と共同で検証する。

■ 新開発の内容
・エサ有無検知システム
 イノシシ捕獲用箱罠に仕掛けたエサの有無を自動検知し、その結果を遠隔地から確認する仕組み。エサの補充のための見回り負荷を軽減する。エサ有無は照度センサを活用し、照度(光の強さ)を測定することで判定する。
・AI検知罠システム
 イノシシ捕獲用箱罠へのイノシシの侵入を自動検知時、扉を落とし捕獲し、同時に通知も行う。箱罠に入った動物をセンサカメラが検知し、画像解析エッジAIによりイノシシかどうか判定する。イノシシの侵入時のみ扉が閉まるため、通知の精度が上がり、作業者の負荷を軽減する。

実証実験  : イノシシ駆除活動におけるIoT化の実証実験
期間    : 2024年10月1日から2024年12月末までの約3か月間
場所    : 福岡県大牟田市勝立エリアに設置中のイノシシ捕獲用箱罠 ―勝立地区の2カ所
目的    : イノシシ駆除活動における新たなシステムの有用性を検証し、獣害駆除の負荷軽減を目指す。
概要    : エサ有無検知システム-物理的な耐久性、バッテリー持続期間、LED発光の視認性を検証
      : AI検知罠システム-イノシシ検知精度、バッテリー持続時間、蹴り糸なしの効果を検証
実証参加者
とその役割 : 大牟田市農林水産課-実証場所/リソースの提供、運用による検証、検証結果の提供
      : TOPPANデジタル-本プロジェクトの推進、機能拡張に向けた獣害対策支援サービスの提供

※1 農林水産省 鳥獣被害の現状と対策(令和6年)
※2 ZETA
 ZiFiSenseが開発した、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域の分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持つ、IoTに適した最新のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格。LPWAの規格のひとつであるZETAは、中継器を多段に経由するマルチホップ形式の通信を行うことで、他のLPWAと比べ、基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能な方式として注目されている。

プレスリリースサイト(toppan):
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2024/09/newsrelease240926_1.html