大和ハウス工業(株)は、2024年4月17日、兵庫県三木市において、建物とデジタル技術を組み合わせる拡張空間を利用し、開発から年数が経過した住宅団地でのコミュニティ活性化を図る実証実験を開始した。(※1)
※1.実証期間は、2024年4月17日から2025年春まで。
居住者の減少や高齢化が進む住宅団地では、公共交通機関の運行廃止や免許返納などにより遠方への移動が不便となっており、公民館や役所などの公共施設から離れて暮らす住民にとって十分な地域コミュニティが形成できていない恐れがある。そのため、郊外型住宅団地では徒歩圏内でのコミュニティ施設やリモート窓口の設置など、施設とサービスの両面から、地域住民が集えるコミュニティの仕組みが求められている。
そこで、同社は兵庫県三木市のコミュニティ施設において、仮想空間や遠隔地とつながる空間拡張システムを用いた、コミュニティ活性化に関する実証実験を開始することとした。
実証実験では、デジタル映像と自然音で仮想空間を再現する「XR技術」(※2)を採用し、居心地の良い空間を演出することで、利用者数や発話量などへの影響を検証する。また、コミュニティ施設と遠隔地を映像と音声でリアルタイムに繋ぐことで、リモートによるコミュニケーションの快適性を確認する。
今後は実験結果をもとに、地域コミュニティの活性化に寄与するための、建築とデジタル技術を融合した空間拡張システムの開発を目指すとのこと。
※2.AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった現実世界と仮想世界を融合する表現技術の総称。
●ポイント
1.仮想空間の体験や遠隔地との空間共有などを実現する空間拡張システムの実証実験
2.空間内の様子を捉えるセンシング手法による評価と分析
●実証実験開始の背景
同社は、1960年代から郊外型住宅団地「ネオポリス」を全国61カ所に開発してきた。その多くは、まち開きから40年以上が経過しており、住民の高齢化、人口減少、空き家・空き地の増加といった課題がみられる。同社は、これらの課題を解決し、街の魅力を新たに創出する「リブネスタウンプロジェクト」を2015年に開始。現在、8つのネオポリスで団地再耕事業として進めている。
その中でも、兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」では、2015年8月にまちの活性化に向けて産官学民がそれぞれの強みを生かしながら戸建住宅団地の課題解決を検討する「郊外型住宅団地ライフスタイル研究会」が設立。同社などが代表幹事企業を務める当研究会では、(一社)「生涯活躍のまち推進機構(現:みらまち緑が丘・青山推進機構)」の設立や自動運転によるコミュニティ内移動サービスの実証実験、コミュニティ施設の設置などの取り組みを進めてきた。
2023年11月には、同社と(一社)「みらまち緑が丘・青山推進機構」が「緑が丘ネオポリス」で実現したいみらいのまちについてのワークショップを開催。地域住民67名と意見交換した結果、日頃の困りごとの解決や新たな人間関係を構築できる「コミュニティの場の創出」が求められることがわかった。
これまでコミュニティ施設では、イベントなどのきっかけがない場合には利用者は限られてしまうため、定常的に多世代が集って交流する仕組みを必要としていた。そこで、同社はコミュニティ施設において空間拡張システムによる郊外型住宅団地のコミュニティ活性化への効果を検証することにした。
本実証実験での結果をもとに、コミュニティ施設の利用頻度向上につながる空間拡張システムを開発し、行政サービスの告知や企業による商品販売の仲介などに繋げていくという。
■実証実験の概要
所在地:三木市緑が丘町東1丁目8番14号
実証期間:2024年4月17日~2025年春
対象者:「緑が丘、青山ネオポリス」の住民
検証内容:空間拡張システムにより遠隔地や仮想空間と接続する体験を住民に提供し、アンケートおよびヒアリング調査を実施することで、多様なサービス提供の可能性を確認する。
プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002086.000002296.html