水中無人機の試験評価施設 岩国海洋環境試験評価サテライトのご紹介(2)

岡部 幸喜(おかべ こうき)
防衛装備庁 艦艇装備研究所
岩国海洋環境試験評価サテライト長
岡部 幸喜

2.2 水中音響計測装置

 水中音響計測装置は、大型水槽を中心に、吸音材、トラバーサ、水中位置計測装置、浄水装置が装備された国内最大級の音響計測水槽である。(図5)また、小型の水中無人機等であれば航走性能に関する計測も行うことも可能である。

大型水槽
 水槽の大きさは縦 35m×横 30m×水深 11m(最深部 11.8m)であり、4側面に吸音材が装備されている。また、大型水槽の縦方向の両端に幅1.5m×長さ30m×水深0.5mの試験器材を仮置きできるスペースを有しており、器材をトラバーサへ取付け、取外しする際の作業性を高めています。その他、のぞき窓(縦 1m×横 1m)が各側面に1つ配置されており、大型水槽内部の試験状況等を観測することができる。

吸音材
 大型水槽内側の4側面に縦 450mm×横 450mm×厚さ 60mmの平板の吸音材が合計6634枚装備されている。吸音材単体の減衰量は10kHz~100kHzにおいて10dB以上であり、これにより壁面からの不要な音の反射を十分に抑制している。

トラバーサ
 試験器材を大型水槽内へ吊架するため装置であり、試験器材を取り付ける移動回転部が2台装備されている走行台車及び移動回転部1台が装備されている走行台車の計2台が大型水槽上端に設置されている。各移動回転部には最大2tonの試験器材を取り付けることが可能である。走行台車の走行(速度100m/s、精度:±30mm)並びに移動回転部の横行(速度100m/s、精度:±30mm)、昇降(速度100m/s、精度:±10mm)及び回転(速度360°/min、精度:±1°)により最大3つの試験器材を大型水槽内の任意の位置に高い位置精度で吊架することができる。

水中位置計測装置
 大型水槽内に合計32台の水中カメラが設置されており、水中無人機等の計測対象に反射マーカを取り付けることにより、計測対象の位置、航跡、姿勢等を計測することが可能である。位置精度は大型水槽内の縦 25m×横 20m×水深 7mの範囲において±30mm以内である。

浄水装置
 大型水槽の底面から吸引した水をろ過(ろ過精度:10μm以下)することで、水の汚れや雑菌を除去し水槽内の濁度を下げることが可能である。

図5 水中音響計測装置
図5 水中音響計測装置

2.3 その他の設備

 IMETSでは、70t、4.9t及び2.6tの3台の天井走行クレーンを装備するとともに、試験準備や整備・調整作業において大型の器材等を円滑に扱うために、大型水槽に隣接して約45m×20mの広い作業スペースを有している。また、100tトレーラまで乗り入れ可能な器材搬入スペースを有しており、大型の器材を搬入・搬出が容易に行うことができる。

3.民生活用に向けて

 IMETSは政府が進める地方創生の施策である「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中の「政府関係機関の地方移転」7) の施策の1つとして、山口県・岩国市からの誘致を受けて整備されたという経緯がある。このため、単に防衛装備庁の水中無人機の試験評価だけではなく、「防衛装備庁艦艇装備研究所がデュアルユース技術を活用した水中無人機などに必要となる試験評価施設」として、「民生分野との研究協力や試験評価施設の活用による国内の水中無人機分野に関する技術の向上」を目指すことをIMETSの将来像の一つとしている8)
 これらの第1段階として、地元の独立地方行政法人山口県産業技術センターと艦艇装備研究所の間で「水中無人機における研究協力に関する協定」を令和4年11月に締結し、IMETSの試験設備を利用した共同研究を積極的に行っている。また、NPO法人日本水中ロボネット主催の第8回水中ロボットフェスティバル in 岩国(令和4年8月26~28日)をIMETSの大型水槽他を使って実施しており、今後も民生分野でのIMETSの活用について推進していくこととしている。

4.おわりに

 水中無人機は防衛省にとってゲーム・チェンジャーとなりうる装備である一方で、AUV戦略のもとで民生分野においても今後需要が加速していくものと考えられる。特にAI技術やロボット技術の急速な進展を鑑みると、現時点では想像していなかった水中無人機の利用方法が生まれることで、水中無人機の利用が期待される分野が拡大していくことも期待できる。
 IMETSは水中無人機研究拠点として、これらの民生分野も含めた様々な水中無人機の研究開発に活用されることで、日本の水中無人機関連技術の向上にしっかりと貢献していきたいと考えている。



参考文献

  1. “政府関係機関移転基本方針”、まち・ひと・しごと創生本部決定、平成28年3月22日、
    https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chihouiten/h28-03-22-kihonhoushin.pdf
  2. “研究機関・研修機関等の地方移転に関する年次プラン”、まち・ひと・しごと創生本部、
    https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chihouiten/h29-04-11-plan.pdf


【著者紹介】
岡部 幸喜(おかべ こうき)
防衛装備庁 艦艇装備研究所 岩国海洋環境試験評価サテライト サテライト長

■略歴

  • 1998年防衛庁入庁
    技術研究本部第5研究所(現艦艇装備研究所)においてソーナー関連の研究開発に従事
  • 2015年防衛装備庁技術戦略部技術計画官付総括班長として、岩国海洋環境試験評価サテライトの整備に従事
  • 2021年9月岩国海洋環境試験評価サテライト開所とともにサテライト長として着任、現在に至る。