多点設置型防災IoTセンサ「クリノポール」、実際の斜面崩壊を捉えることに成功

 応用地質(株)は開発した多点設置型防災IoTソリューション「クリノポール(表層傾斜センサ)」により実際の斜面崩壊の検知に成功した。


【背景となる社会課題と実証試験の概要】
 台風や短時間強雨による土砂災害が全国的に頻発化する中で、斜面を監視するための表層傾斜センサが様々な企業により開発が進められている。しかしながら、斜面崩壊の管理基準値が確立された「地表面伸縮計」「孔内傾斜計」のような従来技術とは異なり、表層傾斜センサは、崩壊現場での適用事例や取得データが少ないことから、管理基準値※の設定が難しく、このことが、実際の現場での適用を阻害する要因となっている。
※ここでの管理基準値とは、当該センサ等のデータに基づく斜面崩壊の危険度や要監視・避難などの必要性を示す指標のことを指す。

 このため応用地質では、表層傾斜センサによる斜面崩壊に対する管理基準値の確立を目的として、全国地質調査業協会連合会(以下、「全地連」)「傾斜センサによる斜面監視モニタリングのマーケット開拓コンソーシアム」の活動として、同社が開発した表層傾斜センサ「クリノポール」を西日本地域の急斜面に設置し、斜面監視の実証試験に取り組んでいる。

【実証試験の結果】
 2023年3月23日に観測した降雨により、設置したクリノポールが斜面の変形を示す変位を検知し、その後の現地調査により、設置箇所で斜面崩壊していることを確認した。また、変位を検知しなかった斜面には異常はみられなかった。さらに、その後の詳細な検証※※の結果、一定量の変位が継続した後、同日午後5時10分に変位速度が加速度的に大きくなる現象が観測されたことから、クリノポールが実際に斜面の崩壊を事前に捉えたと判断された。
※※技術的な検証を含む本実証試験の詳細については、2023年9月6日~7日に開催された「全地連『技術フォーラム2023』横浜」にて論文掲載。

 なお、今回の斜面崩壊と、公開されている土壌雨量指数(降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ溜まっているかを計算して数値化したもの)との間には明確な因果関係は見られなかった。斜面崩壊は、これまで多年に渡り経験してきた降雨による不安定化の進行が要因であったと推定される。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000047274.html