ST、ビル自動化システム向けのユーザ検知とモーション検知を実現する赤外線センサ

STマイクロエレクトロニクスは、人間のプレゼンス(存在)や動きを検知する赤外線センサ「STHS34PF80」を発表した。同製品は、これまで受動型赤外線(焦電型赤外線)検知が使われていた警備システムや、ホーム・オートメーション機器、IoT機器の性能向上に貢献するという。

STHS34PF80は、サーマル・トランジスタを内蔵しており、静止している物体の検出が可能である。従来の焦電型赤外線センサ(PIR)では、センサから測定可能な応答を生成するために対象物が動いている必要があった。また、PIRで動いている物体を検知するにはフレネル・レンズを必要とするが、STHS34PF80はレンズ不要のシンプルな構造を実現できる。

STHS34PF80は、人間のプレゼンスや動きを検知するためのスマート・アルゴリズムを内蔵しており、アラームや警備システム、ホーム・オートメーション、スマート照明、IoT機器、スマート・ロッカー、スマート・ウォールパッドに最適である。4mの検知距離と80°の視野角範囲であればレンズ不使用で、センサ前方の広い範囲をカバーできる。消費電流は10µAで、従来のPIRより低く抑えられている。自動高速実装機の使用に適した小型の表面実装パッケージ(3.2 x 4.2 x 1.455mm)で提供され、直接的な照明が当たる環境による悪影響や、電磁干渉(EMI)に対する高い耐性を備えている。

また、STHS34PF80を簡単に評価できる開発キット「STEVAL-MKI231KA」も提供されている。
「X-NUCLEO-IKS01A3」または「STEVAL-MKI109V3」に差し込むことで、STのUnico-GUIグラフィカル・インタフェースを使用して、シンプルなワークフローでSTH34FP80の設定や測定を行うことができる。STHS34PF80のドライバは、GitHubから入手可能である。
さらに、人間や物体の存在補正 / 検知用のすぐに使用できるライブラリがX-CUBE-MEMS1ソフトウェア・パッケージにて無償で提供されている。これらにより、アプリケーション動作を簡単に評価し、その結果に基づいてSTHS34PF80のメリットを生かした実際のアプリケーションを迅速に設計することが可能である。

◇技術情報
STHS34PF80は、ゲートに入射された赤外線の加熱による影響を高精度で検知するサーマルMOSFET(TMOS)を搭載している。また、STの信頼性が高く実績のあるSOI(シリコン・オン・インシュレータ)CMOS技術によって、デジタル読出し回路が同一チップ上に効率良く集積されている。SOIのアーキテクチャは、STの実績あるMEMS(微小電気機械システム)プロセスでマイクロマシニングを容易にし、TMOSを熱的に絶縁することで正確な温度検知を実現する。

TMOSは、トランジスタを完全にオンにするために必要なしきい値電圧よりも低いサブスレッショルド電圧で駆動する。このモードでは、ドレイン・ソース間電流の温度依存性がきわめて高く、最小限の赤外線放射で正確な測定が可能な応答を得られる。これにより、人間が動いているか静止しているかにかかわらず、人体が発する赤外線放射により人間を検知できる。

サブスレッショルド電圧での動作は、トランジスタの消費電力を大幅に抑えることができるため、STHS34PF80を搭載したバッテリ駆動アプリケーションは長期間にわたる動作が可能。これにより、充電やバッテリ交換頻度の削減に貢献する。また、標準的なCMOS製造技術を使用しているため、高いウェハ歩留まりでコスト・パフォーマンスに優れたセンサ製造を実現している。さらに、感度が焦電ピクセルのサイズに依存する焦電センサとは対照的に、サブミクロン・トランジスタの形状を活用してセンサの小型化も可能である。STHS34PF80は、デジタル・インタフェースも集積しているため、アナログ・フロントエンド回路を使わずに、ホストと直接接続できる。

STHS34PF80は現在量産中で、10ピンのランド・グリッド・アレイ(LGA)パッケージで提供される。単価は、1000個購入時に約2.60ドル。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001323.000001337.html