SUCSセンシング系の付加価値を高めるメタデータの活用(2)

小田 利彦(おだ としひこ)
SUCSコンソーシアム幹事
オムロン株式会社
小田 利彦

3 メタデータを活用する

 クラウド上で登録・管理されたメタデータを、利用場面に応じてどのように活用するかを紹介する。

図4 メタデータの活用例
図4 メタデータの活用例

3.1 ユニットを選定する

 ユニットは、観測する対象や使用する環境、要求品質などに合わせ、センサの種類、電源の種類、通信方法の種類などを柔軟に組み合わせるが、こうした判断を支援するためにメタデータを用いる。
たとえば、センサユニットの温度範囲、耐水性、耐湿性のメタデータから使用環境にマッチしているかどうか、あるいは総合精度、サンプルレートや応答時間などのメタデータから要求されるデータ品質を満たしているかどうかを自動判別することが可能になる。

3.2 クラウド上で行うデータ処理を自動化する

 センシングトレインからクラウドに送信されるデータは、センサのアナログ値がそのままAD変換されたデジタル値が送信される。そのため、クラウド上で温度や湿度、CO2濃度などの物理量に変換しなければならない。この変換では、センサユニットのメタデータに含まれる物理量変換式の情報を用いることで、プログラムにより自動的にデータを変換でき、続いて温度補正も同様に行える。
 さらに、センサユニットの計測値範囲のメタデータから、異常値を検知・除去することやサンプルレートのメタデータから欠損値を補完することなどデータクレンジングの処理も自動化が可能となる。

3.3 データを検索する

 クラウド上にセンシングデータがビッグデータとして集積されるようになると、そこにあるデータを様々な目的で活用しさらにデータビジネスを創出することが行われるようになる。そうした時に、利用目的に合ったセンシングデータを見つけるために、いつどこでどのような観測を行ったのか?どのようなセンサを使ったのか?データはどのような形式なのか?こうした情報はメタデータに含まれる情報であり、そこから検索に利用するデータカタログを作成することができる。

3.4 センシングデータの信頼性を評価する

 センシングデータの信頼性を評価するために、センサの校正が適切な時期に行われていることを校正の規定周期や実施日のメタデータから判断する。また、信頼があるセンサが使われているのかという判断には、製造したメーカ名や型式、性能値に関するメタデータを確認する。さらに、センシングデータのデータ品質の判断にも、前述した総合精度、サンプルレートや応答時間などのメタデータを利用できる。
 上記のように、メタデータをセンシングデータに付随させることで、時間が経ったセンシングデータでも探し出して利用することができ、また第3者がセンシングデータを入手して多様な用途に活用が可能となるため、データの再利用性や付加価値を高めることができる。

4 メタデータのライフサイクル

 メタデータはクラウドサービス上で登録されて管理される。ユニットのメーカやセンシングトレインを購入したユーザがメタデータを登録し、データ利用するユーザがメタデータを参照するという、メタデータのライフサイクルについて説明する。

図5 メタデータの登録からメタデータの利用までの流れ
図5 メタデータの登録からメタデータの利用までの流れ

4.1 メタデータの設計

 ガイドラインでは、よく使われる共通性の高いメタデータを予め定義しており、基本的にはその仕様に基づきメタデータを作成すればよい。
 しかし、ユニットメーカがユニット製品の特徴や性能について独自にメタデータに追加したい、あるいはユーザが個別の観測環境に関する情報を追加したい場合がある。その場合、ガイドラインで示すメタデータ仕様の拡張方法に従い、追加部分を設計することになる。独自のデータ項目を追加した場合は、データの名称に対して意味定義や参照する規格を語彙辞書としてWeb公開して、そのURLをメタデータに記述することを推奨する。

4.2 メタデータの登録

 メタデータを登録するタイミングについて図5に示す。ユニットメーカは、ユニットを開発するとSUCS標準準拠の認可を申請する。この時に、ユニットの製品仕様をユニットメタデータとして登録する。
また、ユニットを購入してセンシングトレインを作製したユーザは、データ送信先のクラウドに接続するため、センシングトレインをクラウドに登録する。その際に、センシングトレインに関する情報をセンシングトレインメタデータとして登録する。
 センシングトレインから送信してクラウドに蓄積されたデータは、他のユーザとデータを共有あるいは連携する範囲をデータセットとして定義する。その際に、データセットに関するメタデータをセンシングデータセットメタデータとして登録する。さらにセンシングトレインによる観測に関する情報も観測メタデータとして登録する。

4.3 メタデータの参照

 クラウドサービスのDBに登録されたメタデータは、ユーザからブラウザによる閲覧やアプリからのAPIアクセスで取得できる。メタデータは作成者にとって機密性が高い情報を含む場合があり、クラウドサービスでは他のユーザに提供するデータ範囲や権限をコントロールする。

4.4 メタデータの変更

 ユニットメーカは、ユニットの製品仕様を変更すると、それに対応するユニットメタデータも変更してバージョンを上げる。
センシングトレインユーザは、センシングトレインを使用している間に、センサユニットの追加や交換などを行うと、センシングトレインメタデータのユニット構成情報を変更する必要がある。

4.5 メタデータの削除

 メタデータは、基本的に削除されることはない。メタデータのバージョンが上がっても過去のバージョンを参照するセンシングデータが存在する可能性があるためである。


5 関連する技術規格

 SUCSコンソーシアムにおけるメタデータのデータモデルやフォーマットの検討では、(一社)データ社会推進協議会で議論されているセンシングメタデータの定式化の取り組み[3]を参考にしている。そこでは次の2つの国際的な技術標準を参照しており、SUCSのメタデータの相互運用性を図れるよう考慮している。

5.1 Sensor Model Language [4]

 この技術標準は、Open Geospatial Consortiumで策定されており、すべてのコンポーネントを入出力・変換があるプロセスとしてモデル化して、センサデータのアプリケーションに特化するプロセス記述言語であり、センサなどのコンポーネントをクラスとプロパティによって表現するモデルで構成されている。
また、相互運用性のために人のみならず機械によって完全に理解され解釈できるようにするセマンティック対応として、データ要素の値は、データの表現、意味説明、構造、品質に関する情報を合わせて提供する仕様となっている。
SUCSのメタデータでは、ユニットのクラスやプロパティは、基本的にSensor Model Language をベースにしている。

5.2 Semantic Sensor Network Ontology [5]

 W3CとOGCが共同で取り組んでいる、センサによる観測活動、外界に動作を加えるアクチュエーション、サンプリングなどで使われる語彙を定義するオントロジの標準化である。SUCSのメタデータでは、ここから観測活動、観測対象、観測特性の語彙を導入している。



商標

※1 SUCSは、SENSPIRE®※2 Universal Connecting System(センスパイア自在連結システム)の頭文字を採ったものである。(一社)次世代センサ協議会の商標登録である。

※2 SENSPIREは、センサの発展進化系を表すSensor×Inspireの造語であり、(一社)次世代センサ協議会の商標登録である。

参考文献

  1. QUDT:https://www.qudt.org/doc/DOC_VOCAB-UNITS.html
  2. DCAT2.0:
    https://www.w3.org/TR/2020/REC-vocab-dcat-2-20200204/
  3. データ社会推進協議会公開資料、ホワイトペーパー センシングデータのためのメタデータ策定の基準化に向けた提案
    https://data-society-alliance.org/survey-research/metadata-for-sensingdata/
  4. SensorML: Model and XML Encoding Standard,
    https://portal.opengeospatial.org/files/?artifact_id=55939
  5. Semantic Sensor Network Ontology,
    https://www.w3.org/TR/2017/REC-vocab-ssn-20171019/


【著者紹介】
小田 利彦(おだ としひこ)
オムロン株式会社イノベーション推進本部 DXビジネス革新センタ
データ社会推進協議会 技術基準検討委員会センシングメタデータTGリーダ
次世代センサ協議会 SUCSコンソーシアム幹事

■略歴
大阪大学基礎工学部卒
日本シュルンベルジェ株式会社で油層解析システムの開発に従事
株式会社リコーで事務機器システムなどの開発に従事
オムロン株式会社で駅務機器システムなどの開発に従事