キヤノン、SPADセンサーの論文がウォルター・コソノキー賞を受賞

キヤノンは「ウォルター・コソノキー賞(Walter Kosonocky Award)※1」を5月25日に受賞した。ウォルター・コソノキー賞は、イメージセンサ業界最大規模の学術研究団体IISS※2が過去2年でイメージセンサの飛躍的進歩に貢献した論文として、世界中のあらゆる学会や論文誌の中から1件選定する賞であり、イメージセンサ研究に関する国際的な賞である。
今回ウォルター・コソノキー賞を受賞したのは、半導体デバイス技術分野で最も権威のある国際学会IEDM※3において2021年に当社が発表した世界初※4の320万画素SPADセンサーの論文※5である。

SPADセンサーは、画素に入ってきた光の粒子(以下、光子)を一つ一つ数える仕組み(フォトンカウンティング)を採用している※6。また、1つの光子を100万倍程度に増倍し、大きな電気信号を出力する。CMOSセンサーは、溜まった光の量を測定する仕組み(電荷集積)で、集めた光を電気信号として読み出す際に画質の低下を招くノイズも混ざってしまうが、SPADセンサーは光子の個数をデジタル的に数えるため、読み出す際にノイズが入らず、暗い所でもわずかな光を検出し、ノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影できる。また、光子が画素に到達した時刻を非常に高い精度で認識できるため、対象物との距離を高速・高精度に測定できる。このような特長を生かして、自動運転や医療用の画像診断機器、科学計測機器などに用いるセンサとして幅広い活用が見込まれている。

キヤノンは、SPADセンサーのフルHDを超える高解像度や、わずかな光をとらえられる高感度性能に加え、高速応答の特長を生かして、自社のセキュリティー用ネットワークカメラでの活用などを通じて、社会の変革やさらなる発展に寄与するとしている。

※1 デジタルカメラなどに使用されるCCDイメージセンサーの発明者である故ウォルター・コソノキー氏を記念して1997年に創設された賞。
※2 International Image Sensor Society(国際イメージセンサー協会)の略。
※3 International Electron Devices Meeting(国際電子デバイス会議)の略。
※4 SPADセンサーにおいて。(キヤノン調べ)
※5 論文タイトル:3.2 Megapixel 3D-Stacked Charge Focusing SPAD for Low-Light Imaging and Depth Sensing
 論文掲載URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/9720605
※6 SPADセンサーの仕組みやCMOSセンサーとの違いの詳細は、下記URLのキヤノンテクノロジーサイトを参照。
 URL:https://global.canon/ja/technology/spad-sensor-2021.html

ニュースリリースサイト:https://global.canon/ja/news/2023/20230601.html