3. 材料への埋め込み性…積層材料と光ファイバを一体化させたスマート材料
石英ガラス製光ファイバは直径0.2mm程度であり、強化プラスチック等の積層材への埋め込みによって構造材料とセンサを一体化させたスマート材料の成形が可能である。図8はコンポジット(CFRP;炭素繊維強化プラスチック)に光ファイバ歪みセンサを固着し、4点曲げ試験を行った様子である。対比的に配した歪みゲージとの相関性も確認されている。
【計測原理】
本計測で使用したFBG波長多重型(WDM;Wavelength Division Multiplexer)の計測原理を概説する。FBGを用いたWDMシステムの基本構成(図9)は反射光、透過光の両方を利用することができる。光源にはLED、SLD、ASEのような広帯域光源を利用する。構造モニタリングにFBGセンサを使用する場合、反射光を観測するシングル・エンド方式をとることが多い。
4. 耐熱性と分布性…耐熱光ファイバによる温度分布・振動分布センシング
材料的或いは原理的な制約から、一般に電気式センサは150~200℃程度が温度上限となる場合が多い。これに対して、石英ガラスは融点が約1000℃と格段に高く、高温でのセンシングへの期待が高い。ここでは試験的に550℃までの耐熱性を確認した事例を紹介する。計測には分布型温度計測システム(DTS;Distributed Temperature Sensor)及び分布型振動計測システム(DVS;Distributed Vibration Sensor)を用いた。図11に試験概観、図12に試験系、図13に温度データ、図14に550℃時の振動データを示す。いずれも1本の光ファイバで分布的にデータを取得している。なお、ここで使用した光ファイバは金コーティングされた光ファイバ素線をSUS管に内挿したものである。
【計測原理】
本計測で使用した振動分布計測の原理を概説する。なお、光ファイバによる分布型温度計測(DTS)は広く普及している技術であり3)、ここでは割愛する。
1本の光ファイバ上に作用する振動を分布的に検出するには、一般にC-OTDR(Coherent-OTDR)という技術を用いる。振動分布検知用途のC-OTDRはDAS(Distributed Acoustic Sensor)、或いはDVS(Distributed Vibration Sensor)とも呼ばれている。振動分布センシングに用いるC-OTDRにはレーリ散乱光の位相変動を検知する方式が一般的である。レーリ-散乱光の位相を検知するC-OTDRの構成例を示す(図15)。
参考文献
3) 光ファイバセンシング振興協会発行「光ファイバセンサ入門」基礎編 その3-19
http://www.phosc.jp/cms/index.html?key=19_ROTDR%E3%81%AE%E8%A8%88%E6%B8%AC%E6%B3%95&c=9
【著者紹介】
町島 祐一(まちじま ゆういち)
株式会社レーザック 代表取締役社長
■略歴
2002年 株式会社レーザック創立 以来、光ファイバセンシングの研究開発、現場実装に携わる
光ファイバセンシング振興協会理事
株式会社レーザック
〒124-0002 東京都葛飾区西亀有1-5-3
http://www.lazoc.jp