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オープンデータから広がるセンサデータ活用(2)

大島 正美(おおしま まさみ)
(一社)データクレイドル
代表理事
大島 正美

3.オープンデータ

 データの生成者(保有者)は、データにライセンスルールを適用することで、アクセスできる範囲を自分で決めることができる。利用範囲によって、だれでも利用できるオープンデータ、権限を保有している人が利用できる(関係者限定)データに分けることで、「包括的データ戦略」のデータ三原則のひとつ、「データを勝手に使われない、安心して使える」という原則の実践につながる。
 国の「オープンデータ基本指針(平成29年5月30日IT本部・官民データ活用推進戦略会議決定 令和3年6月15日改正)」では、オープンデータとは、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、以下のいずれにも該当する形で公開されたデータと定義されている。
① 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
② 機械判読に適したもの
③ 無償で利用できるもの
 二次利用とは、グラフや地図に加工・編集したり、アプリを作成して公表する等、元々のデータを利用して、加工・編集・再配布等をすることを指す。広く二次利用を認める際の利用条件としては、出典を記載することで自由に二次利用できるクリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示 4.0 国際(以下「CC BY」という)が国際的に採用されている。日本では、国や地方公共団体の公開データについては、CC BYまたはCC BYと互換性のある政府標準利用規約を適用することが推奨されている。政府標準利用規約は、公開データの二次利用促進のために各府省ウェブサイトの利用条件や免責事項等を定めたものである。
 また、機械判読とは、コンピュータプログラムが自動的にデータを加工、編集等できることを指す。統計情報等の構造が整ったデータについては、特定のアプリケーションに依存せず、活用がしやすいデータ形式である CSV 形式での公開を原則することと示されている。

(図-2 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)
(図-2 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)

出典:クリエイティブ・コモンズ・ジャパンWebサイト3)

3.1 国のオープンデータ

e-Govデータポータル4)は、デジタル庁が整備、運営する国のオープンデータポータルである。中央行政機関等が保有する公共データのうち、約2万件のオープンデータセットを横断的に検索し、閲覧、ダウンロードできる。データセットとは、メタデータ(データの説明)とリソース (ファイル等) の集合のことである。
 総務省統計局が運営する政府統計ポータルサイトe-Stat5)では、各府省等が公表する統計データを集約して公開している。いずれのポータルサイトも利用ルールは政府標準利用規約に準拠しており、CC BYに従うことでも利用することができる。なお数値データ、簡単な表・グラフ等は著作権の対象にはならないため、自由に利用できる。
 一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運営するG空間情報センター6)は、国や地方公共団体、民間企業が保有する地理空間情報(=G空間情報)データの流通を支援するプラットフォームである。最近の人気データセットは、国土交通省「全国の人流オープンデータ(1kmメッシュ、市区町村単位発地別)」、法務省「登記所備付地図データ」、国土交通省「3D都市モデル(Project PLATEAU)」、静岡県「VIRTUAL SHIZUOKA 静岡県 中・西部 点群データ」等、センシング成果をもとに作成されたデータである。
 全国の人流オープンデータは、新型コロナウイルス感染症が拡大する2019年~2021年を対象に、全国の「1kmメッシュ別の滞在人口データ」と「市区町村単位発地別の滞在人口データ」で、滞在人口はAgoop社が提供するSDK(AgoopSDK)を組み込んだスマートフォンアプリより取得されたGPSデータを基に作成されたものである。
 3D都市モデル(Project PLATEAU7))は、航空測量等に基づき取得したデータから建物等の地物を3次元で生成したデータで、都市空間を3Dデータで再現することにより、都市計画立案の高度化や、都市活動のシミュレーション、分析等への活用が期待されている。また、林野庁は、航空レーザ測量成果から整備された森林資源情報を公開しているが、ESG投資やカーボンニュートラルの視点で関心が高まっている。G空間情報センターで公開されているデータは、民間企業の保有データ等個別の利用ルールが定められているデータも混在しているが、政府標準利用規約が適用されたオープンデータも数多く公開されている。

3.2 地域のオープンデータ

 e-Govデータポータルでは、オープンデータ取組済の都道府県・市区町村がデータを公開しているデータベースサイトの一覧も参照できる。2024年3月時点で1000件以上のデータベースサイトが存在しており、各サイトでは統計情報、公共施設情報、防災、インフラ等のオープンデータが多数公開されている。
「オープンデータ基本指針」では、データ公開等に関する基本的な考え方として、「各府省庁にしか提供できないデータ」、「様々な分野での基礎資料となり得る信頼性の高いデータ」、または「リアルタイム性を有するデータ」等の有用なデータについては社会的ニーズが高いと想定されるため、積極的な公開を図ることを求めている。リアルタイム性を有するデータとは一定時間経過毎に情報を更新する必要があるデータであり、例として、イベント情報、公共交通機関の混雑率、または災害・防災情報などが示されている。
地域では、 IoT デバイスから取得したリアルタイム性を有するデータをオープン化する取組が始まっている。
広島県は、公共土木施設等に関するあらゆる情報を一元化・オープン化を可能とするインフラマネジメント基盤「DoboX」8)を令和4年度から運用し、道路の路面状況(積雪深・圧雪深・気温・路面温度・路面状態)、河川水位、ダム諸量、潮位、雨量、風速等観測等のリアルタイム性を有するデータについても集約、公開を行っており、防災や建設分野、観光MaaSなどでデータの利活用を進めている。

(図-3 広島県インフラマネジメント基盤DoboX)
(図-3 広島県インフラマネジメント基盤DoboX)

出典:インフラマネジメント基盤DoboXを核とした新たなサービスの提供について
~令和5年度中国地方建設技術開発交流会~
(令和5年10月23日広島県土木建築局建設DX担当)

 また、鳥取県はオープンデータポータルサイトにおいて鳥取県内の路線バス運行情報に加え鳥取県内12市町が運営するコミュニティバスの運行情報をオープンデータとして公開した。国際的な共通フォーマット「GTFS(General Transit Feed Specification)」をベースに国土交通省が制定した標準的なバス情報フォーマット「GTFS-JP」を使用して県内のバス運行情報を公開することで、経路検索など様々なサービスに活用されることを期待しており、バスの現在位置、遅延情報などのリアルタイムデータも公開する計画である。

4.センサデータの活用

4.1 地域の取組み

デジ田メニューブック9)では、センサやデータ活用の事例が多数掲載されている。例を挙げると、宇和海水温情報運営管理協議会は、深度も含めた空間的広がりにおける海水温の常時リアルタイム情報を漁業者に提供するため、観測センサ開発から、センサネットワーク(南北約65km)の構築、データ変換を含むデータ集約蓄積サーバの構築、利用者視点の情報可視化表示を実現している。また、福岡県飯塚市は、農作物被害をもたらすイノシシやシカの捕獲支援として、有害鳥獣捕獲従事者に対し、わな監視システムを貸し出し、見回りの頻度を減らし労力軽減を図る取組を行っている。

出典:デジ田メニューブック9)

 コロナ禍の中国圏では、民間主導でIoT センサによる観光マーケティングDX実証実験10)が行われた。広域の自治体・観光協会・DMO/DMCおよび観光事業者の参加を得て、83箇所の観光施設に人感センサまたはAIカメラを設置、入込客数や属性データのリアルタイム生成、取得データの共有による地域間連携が試行された。個人情報保護やプライバシーの観点から、AIカメラに映った顔画像は性別・年代の属性推定後、破棄し、判定結果のみをクラウドに送信して蓄積する仕組みである。観光の現場で発生した人の行動ログを各観光施設が自己保有データとして蓄積し、参加団体に共有(シェアリング)する仕組みと運用ルールは、現地ボトムアップ型データ流通のモデルとして参考になる。また、センサ設置場所で目視観測を実施してセンサ生成データの精度を評価し、必要に応じて補正を行うことで、観光地点等入込客数調査のDXにつなげられる可能性がある。実証事業で整備された分析ツールは継続して利用できるように、一般社団法人データクレイドル11)が2024年度にリリース予定の中国5県広域観光オープンデータポータルサイト「観光dataeye」に搭載する準備を行っている。

(図-4 IoT センサによる観光マーケティングDX実証実験)
(図-4 IoT センサによる観光マーケティングDX実証実験10)

4.2 社会インフラとデータ

 国は、社会インフラ整備計画「デジタルライフライン全国総合整備計画」12)を策定している。
 人口減少が進む中、都市部でも中山間地域でも安心して暮らし続けられる社会の実現に向けて、自動運転やドローン物流等のデジタル技術を活用した最適な生活サービス提供の基盤の整備を目指すもので、約10年の計画で、2024年度から社会実装が開始される。
 デジタルライフラインとは、ドローン航路や自動運転支援道などで構成される、デジタル時代における社会インフラの総称で、①ハード(高速通信網・IoT機器など)、②ソフト(データ連携基盤・3D地図など) ③ルール(認定制度・アジャイルガバナンスなど)で構成される。
 デジタルによる恩恵が全国津々浦々に行き渡り、すべての人やあらゆる物がデータを生成する社会において、適切なデータ消費者になるための準備もしておきたい。

出典:経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備計画」12)





【著者紹介】
大島 正美(おおしま まさみ)
一般社団法人データクレイドル 代表理事

■略歴
民間企業研究所において情報検索業務に従事後、独立し起業、地域中小企業の情報検索・活用を 20 年余り支援。2012 年より NPO 法人地域 ICT 普及協議会設立、理事として遠隔医療や在宅医療介護連携などICT を活用した地域課題解決に取り組み、2015 年(一社)データクレイドル設立、理事就任。地域でオープンデータ推進、データ活用促進、データ活用人材の育成に取り組む。2022 年4月代表理事就任。

デジタル庁オープンデータ伝道師
総務省地域情報化アドバイザー
国土交通省「中国圏広域地方計画学識者等会議」委員

センサ・ネットワークは宇宙に(2)

三田 典玄
(株)オーシャン
IoT事業部長
三田 典玄

6.【D2CがIoTを変える】

当然ながらIoTデバイスが4G/5Gを扱える以上、IoTデバイスも直接衛星につながる時代が来る、というのは当たり前の話だ。IoTはすべてのものがインターネットでつながる、ということを言っていたのだが、今やインターネットは衛星経由ということになれば、全てのIoT機器は衛星経由での利用、ということになる。しかも、コストは安い。衛星の微弱な電波を確実に地上で捉えたり、地上から電波を遠い衛星まで送る必要もなくなる。大きな地上局のアンテナが必要無くなるから、全体のコストは劇的に低下する(した)。

7.【衛星コンステレーションがもたらすセンサ・ネットワーク】

さらに、昨今のセンサ・デバイスは、小型化だけではなく、複数のセンサを組み合わせ、低消費電力で小さなCPUチップとメモリーなどの周辺機器を1つの小さなチップに入れる「SoC(Sytem on Chip)」が主流になっている。よく言われる例が自動運転車で使われる「LiDAR(Light Detection And Ranging)」だ。複数の異なる性質を持つセンサを1つの小さな筐体に入れておき、実際二自動運転をするCPUには、処理済のデジタルデータで、障害物などの動的データを送信する。
例えば秋葉原で売っている温度センサでも、すでにSoCを搭載した温度センサがあり、デジタルデータで他の機器とセンサを接続するものが出てきている。もちろん、出てくるデータは「℃」の数値などの使いやすい数値にリニアライズされているから、ソフトウエアではその数値を余計な変換なしに扱える。当然だが、キャリブレーションは個々にレーザー切削などで行われており、品質は安定している。切削だけでは対応できない場合は、SoC内蔵のソフトウエアがキャリブレーションも担当して出荷されていたりする。

図 6: CPUその他を1つのチップにまとめたSoCのイメージ図
図 6: CPUその他を1つのチップにまとめたSoCのイメージ図
(https://www.allaboutcircuits.com/news/sip-soc-som-comwhats-the-difference/)

そして、最近のSoCには通信機能も搭載可能なものが出てきているので、これを少々変えるだけで、センサ・デバイスそのものが直接衛星と通信する、という未来もすぐそこだ。いま、デバイスメーカーはIoT向けのSoC込のセンサを多く作っており、ごく近い将来には、利用者(例えば自動車メーカー等)の注文に応じて、既に「衛星と直接通信するIoTデバイス」を作る準備はできていると言って過言ではない。

本文では、衛星コンステレーションの話が多くなったが、センサネットワークといえども、このインフラの劇的な変化の中にあるもので、無視はできないのは、よくおわかりかと思う。

8.【衛星システムのコスト】

なぜ、Starlinkなどでは衛星コンステレーションのシステムを、安価で提供できるのだろうか?それはSpaceX社が多くの投資を集め、NASAを退職した優秀な技術者を多く集め、衛星ビジネスの中核を担うべく、何度ものロケット打ち上げ失敗を糧とし(それができるお金があった、とも言える)、安定して多くの「インターネット基地局衛星」を短期間に多く打ち上げ、複雑で膨大な技術を確立したからだ。そして、そのベースにあるのは、ロケット打ち上げに至る「アナログ技術」と「デジタル技術」の融合であることは言うまでもない。

9.【衛星コンステレーションはなにをもたらすか】

これからの衛星コンステレーションは、多くの変革を、特に通信や放送のビジネスにももたらすだろう。まず、BS/CS放送は必要無くなる。大きな声では言えないが、これまでのこれらの衛星放送にかけた投資は無に近くなる。衛星でインターネットにつないで、Youtubeを見ていればいいからだ。また、NTTなどの国内巨大通信会社は、衛星を使えば国内の光ファイバーなどの通信網は必要なくなる。電話局も架線も、基地局も、それを作ったり保守したりする費用も必要なくなる。

10.【衛星コンステレーションのビジネスで必要なこと】

この衛星コンステレーションのビジネスが通信という分野では大きな動きになることは確実だが、日本でその目的で、できるだけ低価格で衛星を打ち上げられるシステムがある。が、現状は失敗した。H3ロケットがそれだ。H3が失敗したのは「コストダウン」が仇になったからだ。しかし、コストダウンしなければ世界の衛星ビジネス競争には勝てない。次の打ち上げとその成功(2024年2月17日に打ち上げと軌道への衛星打ち上げは成功した)、その先のさらなるコストダウンが望まれる。

11.【センサ・ネットワークのまとめ】

1.インフラでは衛星コンステレーションが主流になる。
2.センサ部分はSoCを使ったインテリジェント構成のセンサが部品として供給される。
ということになる。

センサ・ネットワークは、単にセンサがネットワークにつながっている、というイメージではなく、そのインフラをも考えた大きな括りで、これから考える必要がある。

12.【衛星コンステレーションの付帯技術としてのレーザー通信技術】

現在、米国では長距離レーザー通信技術の会社の目深が上がっている。衛星どうし、あるいは、衛星と地上局とのデジタルデータのやりとりに、現在は無線が使われているのだが、そのままでは電波には拡散性があるので、盗聴の危険が常に伴う。そのため、電波の「ビームフォーミング」の技術が最初は脚光を浴びたのだが、それから数ヶ月という短い期間に「電波」ではなくレーザー光線での通信に、近い将来の衛星間・衛星-地上通信の将来の主流が移りそうな気配だ。2024年2月17 日、日本でもH3ロケットの成功による、日本の衛星打ち上げビジネスの隆盛がこれから考えられるところまで来た。そうなると、現在、米国中心で行われている衛星コンステレーションによるビジネスのデータ通信でも「レーザー通信」が大きなトレンドとなる可能性を含んでいる。現状は米国企業がレーザー遠距離通信のイニシアチブを握っているのが現状だが、これは日本の特分野であるように思うので、光通信の技術のチャンスであると筆者は思うのだが。



【著者紹介】
三田 典玄(みた のりひろ)
株式会社オーシャンIoT事業部長

■著者略歴・他
インターネットを日本に持ってきた一人。
元 韓国・慶南大学校教授
元 東京大学先端技術研究所協力研究員
元 産業技術総合研究所特別研究員
元 台湾新聞日本語版副編集長。
現在、株式会社オーシャン(鹿島道路グループ)IoT事業部長。IoTのセミナー&プロダクト開発に従事。

水中無人機の試験評価施設 岩国海洋環境試験評価サテライトのご紹介(2)

岡部 幸喜(おかべ こうき)
防衛装備庁 艦艇装備研究所
岩国海洋環境試験評価サテライト長
岡部 幸喜

2.2 水中音響計測装置

 水中音響計測装置は、大型水槽を中心に、吸音材、トラバーサ、水中位置計測装置、浄水装置が装備された国内最大級の音響計測水槽である。(図5)また、小型の水中無人機等であれば航走性能に関する計測も行うことも可能である。

大型水槽
 水槽の大きさは縦 35m×横 30m×水深 11m(最深部 11.8m)であり、4側面に吸音材が装備されている。また、大型水槽の縦方向の両端に幅1.5m×長さ30m×水深0.5mの試験器材を仮置きできるスペースを有しており、器材をトラバーサへ取付け、取外しする際の作業性を高めています。その他、のぞき窓(縦 1m×横 1m)が各側面に1つ配置されており、大型水槽内部の試験状況等を観測することができる。

吸音材
 大型水槽内側の4側面に縦 450mm×横 450mm×厚さ 60mmの平板の吸音材が合計6634枚装備されている。吸音材単体の減衰量は10kHz~100kHzにおいて10dB以上であり、これにより壁面からの不要な音の反射を十分に抑制している。

トラバーサ
 試験器材を大型水槽内へ吊架するため装置であり、試験器材を取り付ける移動回転部が2台装備されている走行台車及び移動回転部1台が装備されている走行台車の計2台が大型水槽上端に設置されている。各移動回転部には最大2tonの試験器材を取り付けることが可能である。走行台車の走行(速度100m/s、精度:±30mm)並びに移動回転部の横行(速度100m/s、精度:±30mm)、昇降(速度100m/s、精度:±10mm)及び回転(速度360°/min、精度:±1°)により最大3つの試験器材を大型水槽内の任意の位置に高い位置精度で吊架することができる。

水中位置計測装置
 大型水槽内に合計32台の水中カメラが設置されており、水中無人機等の計測対象に反射マーカを取り付けることにより、計測対象の位置、航跡、姿勢等を計測することが可能である。位置精度は大型水槽内の縦 25m×横 20m×水深 7mの範囲において±30mm以内である。

浄水装置
 大型水槽の底面から吸引した水をろ過(ろ過精度:10μm以下)することで、水の汚れや雑菌を除去し水槽内の濁度を下げることが可能である。

図5 水中音響計測装置
図5 水中音響計測装置

2.3 その他の設備

 IMETSでは、70t、4.9t及び2.6tの3台の天井走行クレーンを装備するとともに、試験準備や整備・調整作業において大型の器材等を円滑に扱うために、大型水槽に隣接して約45m×20mの広い作業スペースを有している。また、100tトレーラまで乗り入れ可能な器材搬入スペースを有しており、大型の器材を搬入・搬出が容易に行うことができる。

3.民生活用に向けて

 IMETSは政府が進める地方創生の施策である「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中の「政府関係機関の地方移転」7) の施策の1つとして、山口県・岩国市からの誘致を受けて整備されたという経緯がある。このため、単に防衛装備庁の水中無人機の試験評価だけではなく、「防衛装備庁艦艇装備研究所がデュアルユース技術を活用した水中無人機などに必要となる試験評価施設」として、「民生分野との研究協力や試験評価施設の活用による国内の水中無人機分野に関する技術の向上」を目指すことをIMETSの将来像の一つとしている8)
 これらの第1段階として、地元の独立地方行政法人山口県産業技術センターと艦艇装備研究所の間で「水中無人機における研究協力に関する協定」を令和4年11月に締結し、IMETSの試験設備を利用した共同研究を積極的に行っている。また、NPO法人日本水中ロボネット主催の第8回水中ロボットフェスティバル in 岩国(令和4年8月26~28日)をIMETSの大型水槽他を使って実施しており、今後も民生分野でのIMETSの活用について推進していくこととしている。

4.おわりに

 水中無人機は防衛省にとってゲーム・チェンジャーとなりうる装備である一方で、AUV戦略のもとで民生分野においても今後需要が加速していくものと考えられる。特にAI技術やロボット技術の急速な進展を鑑みると、現時点では想像していなかった水中無人機の利用方法が生まれることで、水中無人機の利用が期待される分野が拡大していくことも期待できる。
 IMETSは水中無人機研究拠点として、これらの民生分野も含めた様々な水中無人機の研究開発に活用されることで、日本の水中無人機関連技術の向上にしっかりと貢献していきたいと考えている。



参考文献

  1. “政府関係機関移転基本方針”、まち・ひと・しごと創生本部決定、平成28年3月22日、
    https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chihouiten/h28-03-22-kihonhoushin.pdf
  2. “研究機関・研修機関等の地方移転に関する年次プラン”、まち・ひと・しごと創生本部、
    https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chihouiten/h29-04-11-plan.pdf


【著者紹介】
岡部 幸喜(おかべ こうき)
防衛装備庁 艦艇装備研究所 岩国海洋環境試験評価サテライト サテライト長

■略歴

  • 1998年防衛庁入庁
    技術研究本部第5研究所(現艦艇装備研究所)においてソーナー関連の研究開発に従事
  • 2015年防衛装備庁技術戦略部技術計画官付総括班長として、岩国海洋環境試験評価サテライトの整備に従事
  • 2021年9月岩国海洋環境試験評価サテライト開所とともにサテライト長として着任、現在に至る。

モルフォ「Duranta アナログメーター遠隔監視&自動分析サービス」を提供開始

(株)モルフォAIソリューションズ(以下:モルフォAIS)は、デジタル庁のアナログ規制見直しの取組である委託事業「テクノロジーマップの整備に向けた調査研究(アナログ規制の見直しに向けた技術実証等)」(以下 技術実証事業)における実証事業で活用された「Duranta アナログメーター遠隔監視&自動分析サービス」を4月16日より提供開始する。


本サービスでは、カメラで撮影したアナログメーターの映像に対して、AIによる画像処理/画像解析を行い、メーターの数値を自動で読み取る。これまで現地で行っていたアナログメーターの点検業務をデジタル化し、遠隔監視および自動分析を実現する。

◇Duranta アナログメーター遠隔監視&自動分析サービスの特長
(1)複数のアナログ計器を一つのカメラで同時解析
(2)設置環境の問題で正面にカメラを設置出来ないケースでは撮影角度の歪みを自動補正
(3)種類の異なる計器に汎用的に対応
(4)メーターの値が異常値を示した場合には自動でアラームを発報

■デジタル庁のアナログ規制見直しの取組について
デジタル庁ではデジタル化を妨げる「アナログ規制の一掃」に重点を置いた取組を実施している。
モルフォAISは技術実証事業における「類型5:IoT 、センサー等を活用した設備の作動状況の定期点検の実証」の事業者に採択され、大分県企業局の発電所職員及び委託事業者が実施している電気工作物(水力発電所等)の巡視等業務におけるアナログ計器(ダイアル温度計、ダイアル圧力計、油面計、棒状温度計等)の確認について、カメラ映像や画像解析技術等を活用し、巡視等の業務を遠隔化できるかの実証を行った。

■技術実証の結果について
大分県企業局所管の下赤発電所および北川発電所現地実証にて、種類の異なる合計41器のアナログ計器に対して、モルフォAISのAIカメラソリューション「Duranta」とTop Data Science社の画像処理技術を活用した「アナログ計器読み取り技術」を用いて92件の読取り検証を実施し、83.7%の読取りに成功した。
また、明るさ、撮影角度、撮影距離、対象計器数など様々に環境条件を変えて、計92件の読取り検証を行い、室内照明が点灯している47件においては93.6%の読取りが成功した。

■AIカメラソリューション「Duranta」について
「Duranta」は、カメラ映像をインプットに様々なユースケースに応じてAIモデルや画像処理を扱うことのできるソフトウェア。「アナログメーター遠隔監視&自動分析」以外にも転倒検知などに用いられる「みまもりAI Duranta」がある。「Duranta」はユースケースに応じてオンプレ、クラウド環境での利用が可能である。

デジタル庁の技術実証事業では、アナログメーターの遠隔監視&解析を想定したユースケースのためクラウド環境でシステムを構築している。

一方で、録画などの映像は現地のレコーダーからPeer to Peerで配信するような構成を採用しており、データ容量や通信コストを極力抑えた設計になっているのが特徴。

プレスリリースサイト(morphoinc):https://www.morphoinc.com/news/20240416-jpr-mais_duranta

ABLICと東芝DS、「ifLink®プラットフォーム」で新たな巡回検知型漏水検知ソリューション

 ミネベアミツミグループのエイブリック(株)〔「ABLIC」〕と東芝デジタルソリューションズ(株)は、ABLICの独自技術CLEAN-Boost®を搭載した「バッテリレス漏水センサ」に、東芝デジタルソリューションズの「ifLink®プラットフォーム(以下:「ifLink」)」を組み合わせた巡回検知型漏水検知ソリューションを共創し、ビルや工場、マンションなどのファシリティ管理者など、建設や施設および関連業界向けに、ABLICから本日よりトライアルサービスの提供を開始する。

 本サービスは、ifLinkを活用することで巡回者がスマートフォンで直接漏水信号の受信、漏水情報の通知を受けることが可能なため、据置型の受信機器が不要で、従来に比べ漏水検知センサの設置が簡単であることから導入しやすく、初期導入コストを低減することができるとのこと。

 近年、建物や設備の老朽化に伴う保守メンテナンスの必要性が高まってきている。その中でもオフィスビルやテナントビル、商業施設では漏水が発生した場合、商品や設備の被害が大きくなり、経済的な損失につながる。また、工場やインフラ施設でも配管や設備老朽化への対応は喫緊の課題となっている。そのような中、漏水検知などの保守メンテナンスにおいて、デジタル活用によるスマート化のニーズが高まっている。

 ABLICのバッテリレス漏水センサは、無線タグとセンサリボンを接続して使用するが、電源を不要とし、水漏れした水から発電して無線で水漏れを知らせるセンサである。バッテリや電源、通信配線の敷設工事が不要で、配管に取り付けたり、壁や床に敷設するなどさまざまな場所への設置が可能で、既存の建築物や施設・設備に簡便に設置することができる。

 一方、ifLinkは、さまざまなWebサービスやIoT機器をモジュール化して自由に組み合わせることができるIoTプラットフォームで、その組み合わせで、製造、介護、小売・店舗、農業、エンタメ、教育など、現場のニーズに応じたさまざまなIoTサービスを簡単につくることができる。

 今回、ABLICは、IoT機器やWebサービスを簡単に組み合わせることができるというifLinkの特徴を生かして、ifLinkを活用した巡回検知型漏水検知ソリューションのトライアルサービスの提供を開始し、東芝デジタルソリューションズは、ifLinkの提供を通じて本トライアルサービスの支援を行う。また、ABLICは、現在150社以上の企業が参加する一般社団法人ifLinkオープンコミュニティでの共創活動に参画し、現場のニーズに対応した通知系モジュールとの新たな組み合わせによるサービス創出・試作の取り組みを経て、商品ラインアップを拡大していく予定であるという。

プレスリリースサイト(ablic):https://www.ablic.com/jp/semicon/news/2024/04/16/iflink/

業界初、表面平滑性Ra5nm・厚み20μmのフレキシブルジルコニアフィルム

Orbray(株)は、このたび業界初となる表面平滑性を付与した厚み20μmのフレキシブルジルコニアフィルムの作製に成功した。

ジルコニアセラミックス材は、耐熱性、耐食性、高強度、耐摩耗性、高破壊靭性などの優れた特徴を有する素材であり、そこに同社の超薄厚研磨技術を駆使し、ジルコニアセラミックス材にフレキシブル性かつ業界初となる表面平滑性Ra<5nmを付与することを実現した。

想定される用途しては、回路・センサ基板、フレキシブルヒーター、フレキシブル断熱フィルム、振動板などに加え、ジルコニアセラミックスの材料特性である、比誘電率が大きく、誘電正接が小さいという特性を生かし、アンテナの小型化などICカード用基板への使用など幅広い用途が考えられる。また、ジルコニアセラミックス材は高強度である一方、曲げると割れやすいと言う欠点があるが、Orbrayの超薄厚研磨技術で表面を均等に研磨することにより、ある一定の曲げにも耐えられるフレキシブル性の高いジルコ二アフィルムを実現した。

【特徴】
 業界初表面平滑性 Ra<5nm 
 フィルム厚み 最薄20μm 
 フレキシブル性 
 耐熱性・耐食性・高強度・耐摩耗性・高破壊靭性 

【特性】
・厚み       20µm~※¹
・表面粗さ(Ra)    <5nm
・3点曲げ強度    1,200MPa
・破壊靭性値    5MPa・√m
・ビッカーズ硬度  HV1,250
・線膨張係数    10.5×10⁻⁶/K(40~400℃)
・比誘電率     32(25℃、1MHz)
・誘電正接     2.5×10⁻³(25℃、1MHz)
・耐熱温度     1,200℃
・熱伝導率     3W/m・K(20℃)
 ※1 実績①□15mm✕15µm 実績② 55mm✕91mm✕30µm(名刺サイズ)

プレスリリースサイト:https://orbray.com/magazine/archives/7472

商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、デブリから数百kmの距離にまで接近

(株)アストロスケールはこの度、日本時間2月18日深夜に打ち上げられた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)」のミッションにおいて、デブリとの距離を数百kmにまで詰め、ここからさらに距離を縮める近傍接近を開始したことを発表した。

運用を終了した衛星等のデブリは非協力物体※1であり、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られない。よって、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつ当該デブリに安全・確実にRPO※2(ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するための基盤となる。ADRAS-Jは実際のデブリへの安全な接近を行い、デブリの状況を明確に調査する世界初※3の試みである。具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行う。

2月22日より開始した接近の運用では、軌道投入時にはデブリと異なる軌道にあった衛星を、GPSと地上からの観測値という絶対的な情報を用いて(絶対航法)デブリと同じ軌道へと調節し、デブリの後方数百kmにまで接近させた。そしてこの度、ADRAS-J搭載のVisCam(可視光カメラ)にてデブリを捕捉したことで、衛星搭載センサを駆使してデブリの方角情報を用いる相対航法(AON※4)を開始した。今後はこの方角情報も用いながら安全に接近を続け、その後は搭載センサが取得するデブリの形や姿勢などのさまざまな情報をもとに、さらに距離を詰めていくという。

《用語》
※1 非協力物体:接近や捕獲・ドッキング等を実施されるための能力・機器を有さない物体のこと
※2 RPO:Rendezvous and Proximity Operations Technologiesの略称。ランデブ・近傍運用
※3 過去に同様のミッションが実施されたか否かを自社で調査(2023年)
※4 AON:Angles-Only Navigationの略称。デブリの方角情報を用いる相対航法

プレスリリースサイト(astroscale):https://astroscale.com/ja/news-resources/

オンセミ 産業、環境およびヘルスケア・アプリ向けの次世代電気化学センサ・ソリューション

オンセミは、超低電流で最高精度の電気化学センシングを可能にする、最先端の小型アナログフロントエンド(AFE)の新製品「CEM102」を発表した。
小型フォームファクタと業界で最も低い消費電力により、空気質およびガスの検知、食品検査や農業モニタリングなどの産業、環境、ヘルスケア・アプリケーションや、持続グルコースモニタなどの医療用ウェアラブル機器向けに、多用途でコンパクトなソリューションを実現できるという。

生命科学や環境科学から工業原料や食品加工に至るまで、化学物質を測定する能力は、優れた洞察力を提供し、安全性、効率、意識を向上させることができる。実験室、採鉱作業、材料製造などにおいて、ポテンショスタットや腐食センサなどの電気化学センサは、生産システム内でフィードバックを提供したり、有害物質を管理したりするための重要なツールとして働き、プロセスを適切に機能させるだけでなく、従業員や作業の安全性も確保する。

「CEM102」は、非常に小型で超低消費電力のソリューションを実現でき、電池駆動の電気化学センサを用いたアプリケーションに最適。携帯ガス検知器などの産業用安全機器は、作業員が遠隔地にいる場合や移動が必要なときに、潜在的な危険を警告する。

「CEM102」は、業界で最も低消費電力のBluetooth® Low Energy技術を提供する 「RSL15」 Bluetooth 5.2対応マイクロコントローラと組み合わせて使用するように設計されている。完全なエレクトロニクスソリューションとして機能し、バイオセンサや環境センサが、非常に低いシステム消費電力と広い電源電圧範囲で動作しながら、化学反応で起こった電流を正確に測定できるようにする。この2つのコンポーネントのシームレスな統合は、コンパクトなサイズと業界をリードする電力効率と相まって、電池駆動ソリューションにとって重要な要素である機器の小型化と長寿命化に重要な役割を果たす。

この組み合わせは、オンセミのアナログ&ミックスドシグナル製品ポートフォリオの一部であり、開発を合理化し、次世代のアンペロメトリックセンサ技術の統合と革新を促進するように設計されている。高性能でエネルギー効率が高く、相互接続されたアプリケーションを構築するために最適な柔軟性を提供する。
さらに、このソリューションは、他の製品と比較して、より高い精度、ノイズ低減、低消費電力を実現する。また、部品表(BOM)が簡素化され、較正が容易になり、製造の複雑さも軽減される。

電源電圧範囲が1.3V~3.6Vと幅広いため、システムは1.5V酸化銀電池または3Vコイン電池1個で動作可能である。動作時の消費電流は、ディセーブルモードでわずか50nA、センサバイアスモードで2uA、18ビットADCが連続変換しているアクティブ測定モードで3.5uA。これは、3mAhの電池1個だけで業界で主流となっている医療用ウェアラブル機器のパッチ交換周期である、14日間の動作を実現し、より大型の電池では数年間動作することを意味する。

「CEM102」の特長
● 電気化学測定用の完全2チャンネルソリューション(システムレベル)
● 1~4個の電極をサポート
● 極めて低いシステム消費電流
● 1.3V~1.65Vまたは2.375V~3.6Vの2種類のバッテリをサポート
● 高分解能ADC、連続バイアス設定用の複数のDAC、工場出荷時にトリミングされたシステム
● センサ異常状態およびホストプロセッサウェイクアップの検出
● 小フットプリント:1.884mm x 1.848mmのパッケージ

プレスリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000293.000035474.html

ROHM、VCSELとLEDの特長を融合したVCSELED™を開発

ローム(株)は、垂直共振器型面発光レーザーVCSEL*1素子をレーザー光向け樹脂製光拡散材で封止した、新しい赤外線光源の技術「VCSELED™」を確立した。本技術は、自動車のドライバーモニタリングシステム(DMS*2)や車室内モニタリングシステム(IMS*3)の性能向上に貢献する光源として期待できることから、現在ロームで製品化に向けた開発を進めている。

VCSELED™は、高性能なVCSEL素子と光拡散材を組み合わせることでビーム角(照射角度)をLED同様に広げており、VCSELよりも広い範囲で高精度にセンシング可能である。また、小型パッケージに発光素子と光拡散材を搭載しているため、アプリケーションの小型・薄型化にも貢献するという。

VCSELED™に搭載するVCSEL素子は狭帯域発光波長を特長としており、LEDと比べて約1/7となる発光波長幅4nmを実現。受光側の認識性能向上が図れるほか、LEDで懸念される赤見え*4も解消できる。同時に、波長の温度変化に関しても、LED(0.3nm/℃)の1/4以下となる0.072nm/℃を実現し、温度変化に左右されない高精度なセンシングが可能である。さらに、発光時の応答速度はLEDの約7.5倍速い2nsで、赤外光で距離を計測する、ToF(Time of Flight)アプリケーションの高性能化にも貢献するとのこと。

ロームでは、VCSELED™を新たな赤外線光源部品の技術ブランドと位置づけ、製品化を進めている。試作サンプルを2024年4月、民生向け量産用サンプルを2024年10月、車載向け量産用サンプルを2025年中にそれぞれ販売開始する予定。また、今後も車室内モニタリングシステムに対応するレーザー光源の技術開発を進めていくとしている。

<用語説明>
*1) VCSEL:
  Vertical Cavity Surface Emitting Laser(垂直共振器型面発光レーザー)の略称。従来は、通信用途で採用されていたが、近年ではセンシングシステムの発光部光源としても採用されている。
*2) DMS:
  Driver Monitoring Systemの略で、ドライバーモニタリングシステムのこと。運転手の顔や目線の動きから安全運転を継続できない可能性を検知し、音や文字等で知らせることで交通事故の発生を未然に防ぐ安全運転支援機能。
*3) IMS(ICMS):
  In-Cabin Monitoring Systemの略で、車室内モニタリングシステムのこと。検知範囲を助手席や後席まで拡大し、乗員の認識や生体センシングを行うことで安全性や快適性の向上につなげることができる。
*4) 赤見え:
  赤外LEDをセンサ等に用いて高出力で使用した場合、可視光線に近い波長の光が発せられて人間の目が感知してしまうことがある。このときセンサがわずかに赤色に見えることから赤見えと呼ぶ。

 「VCSELED™」は、ローム(株)の商標または登録商標。

プレスリリースサイト(rohm):
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2024-04-09_news_vcseled&defaultGroupId=false

大型海上クレーンに対応した吊荷上下動低減装置「AHC-RMP」

 東洋建設(株)は、(株)三井造船昭島研究所および(株)と共同で、“大型海上クレーンに対応した吊荷上下動低減装置「AHC-RMP」(Active Heave Compensation System using Real-time Motion Prediction)”を開発した。
 なお、本件は、国土交通省海事局の「2019年度 海洋資源開発関連技術高度化研究開発支援事業」の支援対策事業として採択されたもの。

 従来、大型海上クレーンの作業海域は比較的静穏な港湾内がほとんどだったが、今後は洋上風力発電をはじめとする外洋での作業が増えることが予想される。港湾内よりも厳しい波浪条件で作業を行う外洋工事は、船舶が作業できる日や時間が限られることから長い工期を要し費用が高くなるが、本装置の開発により稼働率が向上することでコスト低減が期待される。

 「AHC-RMP」は、船体の揺れを予測する「動揺予測システム」と吊荷を上下させるウィンチを制御する「ウィンチ制御システム」の2つのシステムで構成されており、船体に設置した計測器(姿勢計測装置・加速度センサ)の計測結果をもとに将来の動揺量を予測する。その予測結果から、吊ワイヤーの巻出量を算出してクレーンPLC(Programmable Logic Controller)へ信号を送り、送られてきた信号をもとにクレーンPLCが揺れを相殺する方向へウィンチを回転させるようにトルクコンバーターを制御し吊荷の上下動を低減する。

 「AHC-RMP」の開発により、吊荷重20~80tにおける吊荷上下動を20~60%低減することが可能となり、作業中止基準の限界波高を高め、作業船の稼働率を向上することが可能。

プレスリリースサイト(toyo-const):https://www.toyo-const.co.jp/topics/technicalnews-19347