ボールウェーブがJAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案募集に採択

 ボールウェーブ(株)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙探査イノベーションハブ(以下、「探査ハブ」)が実施する「太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ※1」に関する研究提案募集に、課題解決型研究として採択された。本研究では、「多種類の揮発性物質に対する高感度・高精度な可搬型ガスクロマトグラフ※2の開発」をテーマとして、各種ガスや揮発性有機化合物の検出に利用可能な可搬型の高感度・高精度揮発性物質センサの実現と、その社会実装及び宇宙探査における利用を目指すJAXAとの共同研究(以下、「本研究」)を実施すると発表した。

※1. 国立研究開発法人科学技術振興機構「イノベーションハブ構築支援事業」に採択、支援を受けており(事業期間:2015年6月1日~2020年3月31日)、本研究はこの事業に基づく共同研究として実施する。
※2. 中空の管をリールに巻いたカラムと呼ばれる流路を混合ガスが通過する際に時間的に分離される現象を利用して、多種類のガスの種類と濃度を測定する分析装置をガスクロマトグラフと呼ぶ。一般的には卓上に設置する大型装置で、可搬型も開発されているが、感度や精度に課題がある。

 近年の宇宙探査では、月極域の水を含む揮発性物質の存在や、小惑星における水、有機物、揮発性物質の存在が注目されている。また、火星探査においても、NASA(アメリカ航空宇宙局)のキュリオシティ※3の観測により、大気中のメタンや土壌中の有機物が観測されている。一方で、キュリオシティの観測装置は40kg以上と非常に大掛かりな装置であり、このような非常に大型のローバーでないと搭載が難しいのが現状である。 そこで本研究では、当社の革新的な高感度センサ「ボールSAWセンサ※4」と「メタルMEMSカラム※5」を活用して、大きさ100×100×100mm、重さ1kg程度を実現可能な可搬型ガスクロマトグラフの開発を目指す。本センサは、月・火星・小惑星探査においてローバー等に搭載し、表土を採取・加熱し発生するガスや大気のその場での定量測定に使用する。

本研究の成果は、宇宙資源の利用や生命科学の大幅な進展に貢献することが期待される。本研究で開発する高感度・高精度な可搬型ガスクロマトグラフは、宇宙だけでなく、地上利用においても有用。工業、エネルギー、農林水産、ヘルスケアなど、様々な分野における本技術の以下のような社会実装により、安全・安心・クリーンで持続可能な社会の実現が期待されるとのこと。

※3.NASAの火星探査ミッションで用いる宇宙船「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」に搭載された全長3m、重量約900kgのローバー(探査車)
※4.球の表面を伝わる特殊なSAW(Surface Acoustic Wave、弾性表面波。固体表面に集中して伝播する振動のこと)。東北大学の山中名誉教授らによって発見された。
※5.MEMS(micro elecromechanical system)と呼ばれる微細加工技術を用いて作製される平板状の小型カラムの素材を、脆くて割れやすいシリコンから強靭なメタルに変えて東北大学で開発された耐久性の高い微細加工カラム

ニュースリリースサイト(Ball Wave):http://ballwave.jp/images/pre_5.pdf