IoTで、ベルトコンベアの機器異常を「振動音」により検知するPoCを実施

サイバネットシステム(株)は、(株)toor、ロボセンサー技研(株)と共同で今まで捉える事が難しかったベルトコンベアのローラー部の異常をIoTによりいち早く捉え、監視システムや担当者の携帯端末に通知する異常検知システムの実証実験を2019年10月より12月まで実施することを発表した。

■ベルトコンベアの異常検知における課題
大規模なプラントでは、原料や燃料などの搬送にベルトコンベアが広く利用されているが、構造が複雑なため、ベルトを送るローラー部に搬送物の粉などが付着し抵抗が増すだけでも故障し、輸送/生産ラインが停止したり、発熱による発火を招いて重篤な事故につながる可能性がある。
一方、ローラー部は、地上数十メートルの高所に設置されていたり、規模によっては数百メートルの長さに数百個以上が使われていたり、カバーに覆われ直接目視できないなどの理由で設備の状態を常時監視することが難しく、効率的な異常検知の仕組みが長年求められていた。

■PoC(※1)の概要
異常検知システム「RTScope」:データ分析の知識を持たない現場担当者でも異常監視が可能に

今回PoCを行う異常検知システム「RTScope(アールティースコープ)」では、センシング部(センサとIoTデバイスより構成)、および診断システム部(クラウド上の診断エンジンとクライアント端末)により構成されている。センシング部には、直径0.5mmと極細で、周囲の雑音に影響されることなく狙いの箇所の振動音(異常振動)を計測することができるピエゾ方式(※2)のワイヤーセンサ「ロボワイヤー」を利用。対象となるローラー部に設置し振動を計測すると同時に、センサ信号は通信機能をもったIoTデバイス(※3)にて一次データ処理されクラウドに送信される。
クラウド側で受信されたセンサデータは、教師データ(※4)を必要としないクラスタ解析エンジン(※5)「toorPIA(トピア)」によって同定・保持されている通常状態の正常クラスタと比較される。「リスク」と「原因因子」がリアルタイムで評価され、監視システムや保守担当者の携帯端末などにアラートとして通知される。
センサデータはIoTデバイスで直接クラウドに送られるため、配線設備や専用サーバ機器などは不要。稼働中のベルトコンベアを止めることなく連続的に計測が可能で、データ分析の知識をもたない現場の担当者がタブレット端末などで簡単に操作を行うことができるため、点検作業の大幅な効率化と事故の予防が期待されるという。

・「ロボワイヤー」とは
直径が約0.5mmと極細・極軽量・柔軟なワイヤー状センサ。広帯域で高ダイナミックレンジ、電源が不要というピエゾ素子の特長に加え、外乱ノイズに強く水や油汚れにも強いためどこにでも設置できる。産業機械やインフラ設備の計測用途のみならず、人の脈拍や呼吸、音声までもセンシングが可能。
・「toorPIA」とは
センサデータを含む様々な高次元ビッグデータを、あるがままのデータ構造でシームレスに可視化することにより、バイアスフリーな0次データ仕分け(※6)(クラスタリング、スクリーニング)と特徴属性群抽出(※7)を実現するクラスタ解析エンジン。

【注釈】
※1:PoC(Proof of Concept):新たな概念やアイデアが実現可能か、効果や技術的な観点から検証する行程。
※2:ピエゾ方式:圧電体に加えられた力を電圧に変換、または電圧を力に変換するピエゾ効果を利用する方式。このピエゾ効果はアクチュエータやセンサーなどの電子素子に広く利用されており、スマートホンの中の各種電子素子でも活用されている。
※3:IoTデバイス:モノとインターネットをつなぐ通信機能をもったゲートウェイなどの機器。
※4:教師データ:機械学習において判断、最適化を行うために予め用意された正解データ。今回のPoCでは、正常、NGの予めの学習なく異常を判断する。
※5:クラスタ解析エンジン:多変量で大量のデータを自動的に分類する機能を提供するソフトウェア。
※6:0次データ仕分け:通常の分析に供する前の原データを、データの類似性により分類したり、有用なデータと不要なデータ(ノイズ)を区別し、ターゲットとなるデータ集団の発見や分析シナリオ設定のための気づきを得るためのデータ仕分け手法。分析フェーズを1次分析とし、その前段階の処理を0次とした作業フェーズの呼称。
※7:特徴属性群抽出:多変量(属性)のデータから類似性を見つけ出すため、類似集団に共通する特徴的な属性を抽出するデータ処理手法。

プレスリリースサイト(cybernet):https://www.cybernet.jp/news/press/2019/20191030.html