日本財団オーシャンイノベーションプロジェクトの取組み(1)

日本財団 海洋事業部
辰野 誠哉

1. はじめに

世界における海洋石油・天然ガス開発や海洋再生可能エネルギーの市場は、今後大きな成長が見込まれており、我が国関連企業も市場への参入・拡大の動きを加速している。また、日本の海にはメタンハイドレートや海底鉱物等の天然資源が豊富に賦存しており、将来実用化の可能性も秘めている。
一方で、このような成長を取り組んでいく上で原動力となる、実践的技術やノウハウを持った海洋開発技術者の不足が懸念されており、将来における一層の市場獲得に向け、これら技術者の育成が求められている。2015年7月の海の日には、安倍総理大臣より、「2030年までに海洋開発技術者の数を一万人まで増やす」ことが目標として掲げられた。
そこで、日本財団は、海洋開発市場で必要とされる海洋開発技術者の育成に向けた取り組みをオールジャパンで推進すべく、海洋開発市場の参入・拡大を企図する本邦企業、大学、公的機関の参加及び政府の協力を得て、産学官公からなる統合的なプラットフォーム「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム」を設立した。

また、日本は世界と比較して二周遅れといわれる海洋開発分野において、新しい産業として進展させるためには、全ての基礎となる人材の育成に加え、技術開発のイノベーションを車の両輪として考え、実行することが、効率的かつ、非常に重要である。このような思いから、人材育成のみならず、日本の強みを活かした技術イノベーションを起こすためには、何をどのようにすべきかについて、検討を行い、2017年に、日本財団において、「2030年に向けた海洋開発技術イノベーション戦略」を策定した。その結果、日本近海には海洋開発の技術フィールドがないため、それを持つ海外先進国と連携して、センサーやロボットといった日本が強みを持つ分野で開発を進める必要があると、提言をまとめた。日本財団は、同提言に基づき、アメリカ、スコットランド等海洋石油・ガス市場を持つ国と連携して技術開発に対し支援を実施している。

本解説では、日本財団が進める「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム」と「海外との連携技術開発プログラム」について解説する。

次週に続く-

【著者略歴】
辰野 誠哉(たつの せいや)
日本財団 海洋事業部 海洋開発人材育成推進室 アドバイザー

2015年 東京理科大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻修了。
2016年 国土交通省 入省
2016年-2018年 国土交通省 海事局 海洋環境政策課
内航船の省エネ化、次世代船舶(LNG燃料船、自動運航船)の推進等に従事
2018年 現職