土木と光技術のいま(2)

三田 典玄
(センサイト 企画運営委員)

●構築物メンテナンスの前に「欠陥発見」

こういった日本の土木業界全体を取り巻く状況に鑑み、ICT技術と光技術を使って、人手不足を補う、という試みが多くのゼネコン等の業者で試みられている。特に、トンネルや橋といった公共物の補修のための事前の調査というのは熟練者の高度な技術が必要な分野であり、この分野でのICT/IoTの利用技術は、現在、ゼネコンやその子会社等を含めた会社の「レッド・オーシャン」になりつつある。

ポイントは人間の熟練者のように「非破壊で構築物のクラック等の経年変化による欠陥を発見・特定し、記録する」というところである。たとえば、高速道路の橋脚などのコンクリート構築物を写真撮影し、画像処理を行うことにより、内部のひび(欠陥)等を発見し、写真画像上でマーキングする、などの技術である。これらの技術に関係する情報の多くで、特に高度なものは、現在技術を有する各社の企業秘密に関するものが多く、なかなか表面には出てこないが、Googleなどの検索エンジンで「コンクリート構築物 クラック 画像 計測」などのキーワードで検索すると、それでも多くの研究や試み、計測機器に関する情報が得られる(クラックとはひび割れのこと)。基本的に、熟練者であっても、人間の目で見てわかることは、ほとんどが画像処理で明確化でき、熟練者ほどの目を持っていなくても、可視化できることが多い。

●可視化できる「クラック」とできないクラック

一方で、可視化できるクラックは、多くの場合、当然のことながら、構築物の表面のものに限られ、目視でできることの域を出ないものが多い。しかし、最近では不可視光領域までの画像を取得し、特殊な画像処理技術を使うことにより、クラックの深さまでもが明確にわかる技術が注目されている。「光」も可視光を超える領域のものであれば、より多くの情報を含んでいるからだ。

また、この分野での大きなトレンドは光だけではなく、超音波や電磁波利用の技術も多い。また、現在老朽化が始まっているコンクリート構築物はRC構造(いわゆる鉄筋コンクリート構造)のものが多いのだが、この「鉄筋」がコンクリート内で錆びるなどで、建物の強度を脆弱なものにしていることも非常に多く、特に電磁波などを使っての、コンクリート内の鉄筋の調査をする機器は非常に多く開発され、実用に使われている。基本的に「可視化できるクラック」は、画像処理で行い、「可視化できないクラック」は、電磁波や超音波などを使う探査を行う。

著者紹介
三田 典玄(みた のりひろ)
サイバーセキュリティ、コンピュータ言語、インターネット、IoT専門家。 インターネットを日本に持ち込んだ一人。著書・翻訳書多数

2019現在     日本フォトニクス協議会知財戦略専門部会事務局長 センサイトプロジェクト企画運営委員
2013~2015  韓国・慶南大学・コンピュータ学科教授。専門:サイバーセキュリティ
2002~2004  経済産業省・産業技術総合研究所・ティシュエンジニアリング(再生医療)研究センター 特別研究員
1996~1997  東京大学・先端科学技術センター 協力研究員

その間、(株)シグマコーポレーション/(株)シースターコーポレーション/技能五輪 国内大会・世界大会の情報技術職種委員/台湾新聞/ジョルダン(株)/(株)プライムネット等

次週に続く-