土木と光技術のいま(1)

三田 典玄
(センサイト 企画運営委員)

●日本の土木をとりまく状況

現在の日本の土木の現況は一言で言えば「人手不足前夜」である。
まだ本格的な人手不足が始まったわけではないが、これから早ければ2年、遅くとも5年以内に、深刻な人手不足の時代がやってくる、と業界内で囁かれている。人手不足の主な原因は、(1)少子化、(2)産業の低迷、(3)高度な技術を持った土木技術者の定年退職による自然減、(4)東京オリンピック(1964年)前後でできた構築物の老朽化によるメンテナンス需要の増大である。(実際にはこれに、リニア新幹線、2020年東京オリンピックなどの土木にとっての大プロジェクトが加わる)

さらに、今後のこの「人手不足」で空いた大きな穴を埋めるべく、日本政府は大幅な規制緩和により、外国人労働者の受け入れを行おうとしているが、低迷する日本経済を尻目に、アジアの各国の経済は上向きであり、いまや日本よりも良い稼ぎ先がアジア各国にできており、近年ではベトナムやマレーシアなどにおいても、人件費が高騰し、日本を凌ぐほどになっているうえ、日本では安価な賃金に加え、住居の補助等の日本政府の外国人サポートも薄く、日本での過酷な外国人低賃金労働の噂も非常に広まっており、この日本での現状がインターネット上のSNSで情報拡散されている。

そのため「日本に高賃金を求めてやってくる労働者」という存在そのものがなくなって来ているのが現状である。しかも、外国人労働者がたとえこれらのハードルを超えて日本に入ってきたとしても、日本人の熟練技術者の代わりをすぐに行うことができるわけはなく、一定以上の期間は教育や優劣による人員選別なども必要になるため、これらのコスト負担も考えると、外国人労働者に日本人の退職した労働者の仕事を行わせることは、非常に困難であることが誰の目にも明らかである。
そのため、日本では政府をあげて「土木・建築などの業務のICT化(IoT化)」にその隘路を見出そうとしている、というのが現状である。

これまで、土木などの公共事業は、日本では、公共事業であるがゆえに「リストラ」などで雇用を奪うような動きを抑えて来ており、業界そのもののICT化が諸外国に比べて非常に遅れていることが、この傾向に一層の拍車をかけているのが現状であると言えよう。日本の土木はいま、遅ればせながら、時代の流れに突き動かされて、本格的なICT化の時代を迎えた、と言うことである。

著者紹介
三田 典玄(みた のりひろ)
サイバーセキュリティ、コンピュータ言語、インターネット、IoT専門家。 インターネットを日本に持ち込んだ一人。著書・翻訳書多数

2019現在     日本フォトニクス協議会知財戦略専門部会事務局長 センサイトプロジェクト企画運営委員
2013~2015  韓国・慶南大学・コンピュータ学科教授。専門:サイバーセキュリティ
2002~2004  経済産業省・産業技術総合研究所・ティシュエンジニアリング(再生医療)研究センター 特別研究員
1996~1997  東京大学・先端科学技術センター 協力研究員

その間、(株)シグマコーポレーション/(株)シースターコーポレーション/技能五輪 国内大会・世界大会の情報技術職種委員/台湾新聞/ジョルダン(株)/(株)プライムネット等

次週に続く-