私のセンサ雑感(2) 人間を測るセンサの限界-1

西澤 紘一
(株)プライムネット 取締役

(2)人間を測るセンサの限界

我々は、病気にかかると医者に診断を仰ぐ。昔は、脈を測り目や口腔を観察すると言う対面診察がメインで、せいぜい聴診器と血圧計を使って、後は医者の経験と勘に頼って診断が行われてきた。昔を振り返ってみても、町医者に診てもらえば風邪や腹痛など診察後2,3日で治った。それでも特に大きな誤診は無かったように思う。昨今は、総合外来で、あれこれ症状を聞かれたあと専門化した診療科へ回される。次いで、採血、検尿、心電図、超音波診断、レントゲンなどの定番検査を受けるとそのデータが診察室の医者のPC画像上に現れて、2~3分のチェックの後、診断を下され処方箋をもらって帰ることになる。昔に比べると相当程度診断の精度は上がったようだが、2~3時間待って2~3分診察が当たり前の状態となった。

昨今の医療分野における測定装置、その中に組み込まれているセンサの機能多様化と精度の向上が著しい。特に光学系の医療機器の進歩には目を見張るものがある。医者は、患部を直接見たいと言う欲求が強い。古くは、古代ギリシャ時代に遡る。このころ筒状パイプを通して膀胱、尿道、咽頭などを観察していたようだ。19世紀後半になって筒状の金属パイプに小型レンズをリレー式に設置して食道や気管支までを見る硬性内視鏡が発明されたが、患者への負担は相当のものであったと言う。その後、1950年ごろ超小型カメラを先端に取り付け電線と照明系を一体化した胃カメラが実用化され、内臓部の写真が直接撮影できることになり診断が長足の進歩をした。

次いで1950年後半に実用化された「イメージスコープ」は特筆すべきものである。光学繊維(光ファイバ)の両端を1対1にそろえた繊維束は、イメージバンドルと呼ばれて可撓性を有しつつ直接画像を伝送することができ胃や十二指腸まで医者が直接見ることができるようになった。最近は、マイクロカプセルと呼ばれる光学系、画像処理系、伝送系などを集積化した素子が開発されており、患者はカプセルを飲み込むだけで検査が済むため負担は軽くなった。現在では、内視鏡の役割が診断にとどまらず治療にも使われるようになってきた。いわゆる低侵襲内視鏡下の手術である。さらに、レンズ系ではあるが8K画像による内視鏡手術法が開発された。人間の視覚の分解能を上回る解像力を有し、手術中でも直接像が毛細血管まで視覚化されるため、高精度の手術が可能となった。これらの進歩も先端の光学系、2次元のイメージセンサなどの小型化、高精度画像処理技術が寄与している。

【著者略歴】
1967年 京都大学大学院無機化学専攻修了
         同年、日本板硝子社に入社、以降光ファイバ、マイクロオプティックス、
         光センサ、セルフォックレンズ、光・電子応用ガラス材料の開発に従事した。
         通産省大型プロジェクト「光計測制御システム」に参画し、ガスセンサの開発に従事した。
1991年 北海道大学工学研究科応用物理分野で工学博士取得
1996年 厚生労働省傘下の職業能力開発大学校教授に赴任
2004年 通信システム工学科を創設、初代教室主任
2007年 技能五輪世界大会(静岡)で日本国技術代表
2008年 諏訪東京理科大学客員教授となりガラス材料工学を担当
         同年、㈱プライムネット(特許ビジネス)を設立
2010年 ㈱みらい知研を設立、その後、代取社長、会長を勤める
2018年 同社後進に譲り退任

次週へつづく―