~キーワードから解説する~ 「IoT時代を担うキーはセンサ技術」(1)

藍 光郎
((一社)次世代センサ協議会 顧問)

最近は毎日、毎時マスメディアにIoT(アイオーティー)という言葉があふれており、これからはIoT時代だと言われている。しかし、IoTって何だと聞かれても説明できないことが多い。そこで、本文はIoTに至る技術的な歴史と本質を簡単に解説しよう。
IoTに関連する技術のうちもっとも影響の大きな電子技術を物(ハードウエア)と事(ソフトウエア)で、おおまかな誕生年代から見てみよう。これらの用語は英語名称の頭文字A、C、I、L、M、N、S、Tなどの組み合わせで示されることが多い。

IC(Integrated Circuit、半導体集積回路):
1950年代後半に実用化された。材料として初期はゲルマニウム(Ge)であったが、60年代すぐにシリコン(Si)単結晶のチップに代わり現在に至っている。真空管が固体化された最初の技術。

LSI(Large Scale Integration、大規模集積回路):
60年代後半からICの素子数が大規模になり、リソグラフィ(高精細写真転写)技術の高度化によって、現在は数百万個を越える素子が1チップに搭載される。

CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置):
コンピュータの制御、演算や情報転送を司る中枢部分。PC(Personal Computer)の中枢部分。1チップ化されたものをMP(Micro Processor)という。

AI(Artificial Intelligence、人工知能):
1960年代に提唱された人間の神経回路を模したニューラルネットワーク(Neural Network)を用いた推論手法。自ら学習し、新たな事象を認知して問題解決ができる機能を持つ。当初はコンピュータの能力が低く、掛け声だけでブームは終わってしまい第1世代と云われる。第2世代は国家プロジェクトの第五世代コンピュータで理想は高かったが、一般に普及せずに研究だけに終わってしまった。第3世代はビッグデータ、超高速処理が実現した現在であり、我々の身近な技術として将来性が期待されている。ディープラーニング(Deep Learning)などの新しい手法が将棋、囲碁で応用され有名になった。

IT(Information Technology、情報技術):
1990年代からインターネット、携帯電話が普及。2001年に日本で高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が制定された。

ICT(Information & Communication Technology、情報通信技術):
2004年に総務省がITからICTに名称変更した。国際的にはITよりはICTが使われている。

インターネット(Internet):
1969年、米国総務省のARPA(高度研究プロジェクト局)が開発したARPANET。相互通信可能なオープンシステムで、米国は1988年、日本では1992年に商用解放された。現在、世界中で広く利用され、我々も家庭で毎日のように使っている。主に人同志のやり取りに使用されている。
インターネット関連の用語としては、IPアドレス(Internet Protocol Address、インターネットに接続されたPCや通信機器に割り当てられた識別番号)、www(world wide web、標準的な情報提供システム)、HTTP(Hypertext Transfer Protocol、インターネット上でデータ転送の為の手順、規約)、HTML(Hypertext Markup Language、ウエブ記述の為の言語)などがある。

サーバ(Server):
あるファイルを別の場所にコピーする機器(元のファイルはそのまま残し異なるファイル間でもコピーできる)や別の機器からの要求に対し、機能やサービスを提供する機器。超高速で大容量処理が可能な一種のスーパーコンピュータ。

ストレージ(Storage、大容量外部記憶装置):
データを長期的に蓄積、保存、読取、呼出す高速記憶装置。磁気ドラムが主体であるが、最近は可動部の無い不揮発メモリを使用するものが増えている。

メムス(MEMS、Micro Electro-Mechanical System、マイクロ電気機械システム):シリコンをベース材料とし、LSI製造技術にセンサ独特の3次元(立体)加工技術を組み合わせることによって、ミクロンオーダーのセンサやアクチュエータが実現した。1970年代後半にスタートし、80年代には基盤技術としての地位が確立された。

トリリオンセンサ(Trillion Sensor):
将来は地球上の100億人の人間が平均一人100個以上使うことを想定した場合のセンサの在り方を研究する呼称。

クラウド(Cloud):
データセンタと呼ばれる設備で、複数のコンピュータに保管された大量のデータを、インターネットを通じて出し入れする仕組み。個人でもスマートフォンなどの端末のメールや写真を外部に保管できる。データを保管するコンピュータ群を「雲」に例えて名付けられた。2006年、アマゾンが一般企業向けにサービスを始め急速に普及した。

IoT(Internet of Things):
インターネットに多様かつ多数の物事が接続され、それらが相互に情報の通信を行うネットワーク技術。80年代に論議が始まり、ある時には何時でも何処でもと云うユビキタス(Ubiquitous)技術がもてはやされたが、2010年代初め、米国のインダストリアル ネットワーク、ドイツのインダストリー4.0から発展してIoTと呼ばれるようになった。
従来のインターネットは人同士の双方向通信であったが、人と人、人と物事、物事と物事のあらゆる対象との相方向通信を対象とする。

次週へつづく―