「グラフェンリチウムイオンキャパシタ」活用蓄電制御システムの実証実験

 国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)発のベンチャーである(株)マテリアルイノベーションつくば〔以下「MIつくば」〕と、岩崎電気(株)は、道路灯に搭載したIoT機器の自立型駆動用電源として、MIつくばの開発したグラフェンリチウムイオンキャパシタを搭載する太陽光パネルの環境発電を利用した蓄電制御システムの実証実験を開始した。

なお、本実証実験で活用するシステムは、MIつくばが茨城県の「令和4年度研究シーズ製品化支援事業」に採択され、岩崎電気の子会社、(株)アイ・ライティング・システムと開発したもの。

 安全・安心な社会の構築とレジリエンスな社会の実現に向けたスマートライティングとして、環境センサやカメラ等の搭載による道路近辺の環境状況、交通量や路上の冠水等の把握、路車間通信など、さまざまなIoT機器の利用の拡大が想定されている。
 特に屋外で使用する蓄電デバイスは、耐環境性能が求められるのと同時に、太陽光パネルや熱発電などの環境発電デバイスで発電された微弱電力の有効利用とIoT機器への安定な電力供給などが求められている。
 今回の実証実験では、蓄電デバイスとしてグラフェン材料にカーボンナノチューブをスペーサーとして層間構造が安定保持される「グラフェン/カーボンナノチューブ複合材料」を使用したグラフェンリチウムイオンキャパシタを搭載する。

MIつくばは、NIMSの研究成果を活用し、高性能のグラフェンリチウムイオンキャパシタを開発してきた。グラフェンリチウムイオンキャパシタは、充放電性能に優れるとともに動作温度範囲が広く、寿命性能や保守メンテナンス性が高いなど、屋外環境で利用するための基本的な優位性に加え、グラフェン/カーボンナノチューブ複合材料を使用することにより、さらなる出力並びにエネルギー密度の向上(大容量化)と、小型軽量化が可能である。

 自立型電源のシステム(画像)として実証実験を進め、蓄電制御システムを構築することで、照明機器に搭載するIoT機器用途だけでなく、有線での電源確保が難しい場所や人の立ち入りが難しくメンテナンスが困難な場所(山間部、危険箇所)などのIoT機器の電源システムとしての設置が可能。また、本システムは、赤外線や開閉センサなどの監視センサや、非常警報等の通信機器の電源としても利用可能であり、本IoT機器の自立型電源として幅広い分野での応用が期待される。

■実証実験の概要
太陽光パネルを利用してグラフェンリチウムイオンキャパシタに蓄電した電力を、道路灯に搭載した各種IoT機器へ安定的に電力を供給する、蓄電デバイスの充放電を制御するシステムを介し、道路状況を撮影したカメラ画像、環境センサ(温度、湿度、CO2濃度、紫外線量)の情報、グラフェンリチウムイオンキャパシタの電圧などのデータを無線で送信し、実証実験先の茨城県桜川市から埼玉県行田市での遠隔監視の実証実験を通じて、環境発電による蓄電制御システムとグラフェンリチウムイオンキャパシタの性能評価を行う。

■実証実験のシステム構成
本実証実験におけるシステムでは、(1)カメラを搭載したLED道路灯、(2)環境センサやLTE通信機器などのIoT機器、グラフェンリチウムイオンキャパシタ、制御システムを内蔵した制御ボックス、(3)発電を行う太陽光パネル、より構成されている。
IoT機器の電力は照明用系統電力とは別の環境発電による自立型電力で動作する仕組みで、太陽光パネルを利用してグラフェンリチウムイオンキャパシタに蓄電した電力を夜間も含めて24時間供給する。 遠隔監視できるデータはインターネット経由でタブレット端末などでも監視することが可能である。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000092925.html