EVの性能向上と航続距離の延長に貢献するSiCパワー・モジュール

STマイクロエレクトロニクスは、電気自動車(EV)の性能向上と航続距離の延長に貢献する高電力のSiC(炭化ケイ素)パワー・モジュール5製品を発表した。これらの製品は、KIA EV6など複数の車両モデルに使用されている現代自動車社のEVプラットフォーム「E-GMP」に採用されている。

新しいパワー・モジュール5製品は、SiCパワーMOSFETをベースにしている。EVのトラクション・インバータで一般的に使用されている定格電力や動作電圧に対応するため、自動車メーカーに柔軟な選択肢を提供する。また、トラクション・インバータ向けに最適化されたSTの「ACEPACK DRIVE」パッケージで提供され、焼結技術による信頼性と堅牢性を備えており、自動車メーカーは簡単にEV駆動システムに組み込むことができる。メインのパワー半導体としてSTの第3世代STPOWER SiCパワーMOSFETを内蔵しているため、業界最高レベルの性能指数(オン抵抗 x ダイ面積)に加え、きわめて低いスイッチング損失と優れた同期整流性能を備えている。

STは、パワー半導体技術における業界のリーダーとして、世界各地ですでに300万台以上の量産乗用車にSTPOWER SiCパワー半導体を供給している。
SiCパワー半導体は、従来のSi(シリコン)パワー半導体より小型で、高い動作電圧に対応できるため、充電の高速化と車両性能の向上に貢献する。また、電力効率も向上しており、航続距離の延長や信頼性の向上にも貢献する。この半導体は、DC-DCコンバータやトラクション・インバータ、車両からグリッドへの給電が可能な双方向動作のオンボード・チャージャ(OBC)など、幅広いEVシステムに採用されている。
STは、垂直統合型の総合半導体メーカーとして独自のSiC戦略に基づき、優れた品質と安定した供給を確保することで、自動車メーカーの電動化戦略に貢献する。2022年10月に発表されたカターニャ(イタリア)の統合型SiCウェハ製造工場は、2023年に生産を開始する予定で、急速に進むeモビリティへの移行をサポートできるよう迅速に対応している。

技術情報
今回発表されたSiCパワー・モジュール5製品の内、1200V耐圧の「ADP280120W3」、「ADP360120W3」、および「ADP480120W3(-L)」は現在量産中。750V耐圧の「ADP46075W3」および「ADP61075W3」は、2023年3月までに量産が開始される予定である。これらの製品は、トラクション・インバータ用のプラグ・アンド・プレイ型のソリューションとして、直接液冷方式に対応しており、ピンフィン・アレイによって熱損失を低減する。最大接合部温度は175℃で、長寿命かつ信頼性の高いプレスフィット接続と基板へのダイ焼結処理により、車載アプリケーションの長寿命化に貢献する。STは今後、IGBTおよびダイオード・ベースのACEPACK DRIVE製品を追加し、製品ポートフォリオを拡充していく予定であるという。

これらのモジュールは、優れた熱効率と機械的強度で知られるアクティブ・メタル・ブレイズ(AMB)基板技術を採用しており、各基板に専用のNTCサーミスタが実装されている。溶接またはネジ止めバスバーを選択できるため、さまざまな実装要件に柔軟に対応可能です。また、ロングバスバー・オプションにより、モータ電流を監視するホール・センサを選択できるため、さらなる柔軟性の向上に貢献する。

STの最新世代ACEPACK DRIVEパワー・モジュールは現在量産中。価格およびサンプル提供については、STのセールス・オフィスまたは販売代理店までお問い合わせのこと。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001281.000001337.html