超小型高性能ガスクロマトグラフ(Sylph)を柳井電機工業が販売開始

 ボールウェーブ(株)と柳井電機工業(株)は、ボールウェーブが開発し製造販売する超小型高性能ガスクロマトグラフ※1 (商品名:Sylph)について販売代理店契約を締結した。

■ 背景
 ボールウェーブは革新的な高感度センサ「ボールSAWセンサ※2」を活用して、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)との共同研究によって世界初の超小型でかつ重さ約1kg のガスクロマトグラフを開発した。この開発を通じ得られた、小型・高信頼性技術を応用し産業用途として手のひらサイズの超小型ガスクロマトグラフ(Sylph)を開発した。この度、この商品を柳井電機が代理店として販売することになった。

 Sylphの用途の一つに、発酵醸造分野がある。
 発酵醸造製品は、日本酒、焼酎、みそ、しょうゆ等あるが、これらの製品の美味しさのうち、8割は香りによるものだと言われている。特に日本酒の香り成分は100種類を超えると言われており、そのバランスでお酒の香りが決まってくる。この香り成分(香気成分)を測定する装置は既にあるが、Sylphは超小型高性能かつ軽量で携帯できるため、現場に持ち込んでその場で香気成分を測定できるのが特長になっている。この技術を用いることで温度、使用する酵母、麹の破精の付き具合による香気成分の変化を制御できる可能性がある。今までと違う新しい発酵醸造製品開発への挑戦に貢献できるという。

■ Sylphの用途
 超小型高性能ガスクロマトグラフ(Sylph)は、発酵醸造、半導体、環境など様々な分野において多くの用途が期待される。
• 醸造発酵分野:酒・醤油等の香気分析による醸造プロセス制御や新製品開発および既存製品品質の維持向上など
• エネルギー/工業分野:天然ガス熱量評価のための成分分析、リチウム電池製造・使用中にバインダ・電解液から放出されるガスの成分分析、VOC 分析、異臭検査など
• 農林水産分野:鮮魚・野菜果物等の生鮮食品や、食用油などの劣化の早期検出によるフードロスの低減、酒・醤油等の香気分析による醸造プロセスモニタリングなど
• 半導体分野:半導体製造工程設備での各種ガス成分の分析、クリーンルーム内環境分析など
• 環境分野:大気汚染物質の監視、地殻やマグマに存在するラドンガス発生による地震予知など

■ 用語解説
※1. 超小型高性能ガスクロマトグラフ:
中空の管をリールに巻いたカラムと呼ばれる流路を混合ガスが通過する際に時間的に分離される現象を利用して、多種類のガスの種類と濃度を測定する分析装置をガスクロマトグラフと呼ぶ。
※2. ボールSAWセンサ:
球の表面に集中して、横方向にも拡がらず繰り返し周回する球状弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を用いるセンサ。東北大学大学院工学研究科の山中一司名誉教授らによって開発された。
※3. ケミカルセンサ:
物質の化学変化を捉えるためのセンサ技術。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000038635.html