防犯カメラ等の映像から浸水状況を即時把握するAI解析モデルを開発『リアルタイムハザードマップ』

応用地質(株)は、創立メンバーとして参加する『防災コンソーシアム(CORE)』(※1)の分科会の取組みとして、防災IoTセンサやSNSなどからリアルタイムに取得する自然災害に関する情報に加え、カメラ映像から発災の予兆や状況を捉えるAI解析技術を活用し、従来の静的なハザードマップから進化した『リアルタイムハザードマップ』の開発を進めている。
このたび、『リアルタイムハザードマップ』分科会(※2)として、防犯カメラ等の映像から浸水状況を即時把握するAI解析モデルを開発したとのこと。

今回開発したAI解析モデルは、深層学習(※3)手法の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)(※4)を利用した画像解析技術を使用したもので、防犯カメラがとらえた対象物を画像から判断し、水面の位置を把握することで浸水深を解析するもの。
本分科会ではさらなる実証実験を行い、より精度の高い『リアルタイムハザードマップ』の開発・提供につなげ、水災時の被害極小化に貢献するとしている。

※1: 2022年4月20日ニュースリリース:「防災コンソーシアム(CORE)」を始動
https://www.oyo.co.jp/oyocms_hq/wp-content/uploads/2022/04/20220420_news-release_oyo.pdf
※2: 分科会参加企業:応用地質(株)、(株)パスコ、セコム(株)、東京海上日動火災保険(株)
※3: 機械学習手法のひとつ
※4: 脳の視覚野の構造における知見を基に設計されている手法

1.背景
近年、日本の全国各地で甚大な被害をもたらす自然災害が頻発している。特に台風や豪雨によって引き起こされる水災や土砂災害は、今後の地球温暖化の進行等により、さらに増加していくと予想されている。
本分科会では、災害の到来をよりリアルに認識し、適時の防災行動を促す仕組みの一助となる『リアルタイムハザードマップ』の開発を目指している。

2.これまでの取り組み
本分科会では、2022年5月、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の大型降雨実験施設において、防犯カメラを用いた浸水の発生検知や浸水深を把握するための、映像解析モデルの開発に向けた実証実験を行った。

■大型降雨実験施設での実証実験概要〔画像〕
【実施日】  2022年5月19日(木)
【実験内容】 降雨時における防犯カメラ映像のAI解析の検証と教師データの取得と防犯カメラの映り方の確認
① 実験施設内で時間雨量15mmから300mm(※5)までの降雨を発生させ、施設内に設置したプール内の浸水状況をセコムの防犯カメラで撮影してモニタリング。
※5: 日本観測史上最大の時間雨量は153mmで千葉県香取(1999年10月27日)、長崎県永浦岳(1982年7月23日)
② 撮影した映像から対象物を識別して浸水深を解析するAI解析技術の開発をパスコが担当。試作版で検証を実施
③ 応用地質の防災IoTセンサで計測した実際の浸水深データとカメラ映像の解析値の比較検証を実施

実証実験後にデータ検証を進めた結果、開発したAI解析技術によって把握した対象物の解析浸水深と、防災IoTセンサの計測値との誤差が数cm以内であったことから、発災の予兆や状況を捉えるという用途として十分に活用可能な技術であることが確認でき、実証実験は成功した。

3.今後について
本分科会では2019年10月の大雨で多くの被害を受け、防災対策に力を入れている千葉県茂原市の協力を得て、2022年10月よりフィールド検証を実施する。検証は映像解析モデルの精度向上を目的としたもので、洪水ハザードマップをもとに浸水が懸念される地点に防犯カメラを設置して実施する予定。
また、当社は、併せて防災IoTセンサを設置し、カメラ映像とセンサデータとの連携やユースケースについても更なる実証を進める。
今後は、実証実験で得られた技術の実装に向けた取組みを加速し、2023年度中の『リアルタイムハザードマップ』の事業化を目指すという。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000047274.html