IA、独OHBグループ傘下から民間衛星向け小型推進器「1Nスラスタ」受注

 IHIのグループ会社である(株)IHIエアロスペース(以下,IA)は,ヨーロッパの大手宇宙衛星推進系メーカーである独OHB グループの傘下OHB Sweden社から,衛星の姿勢制御や軌道制御に使われる小型推進器「1Nスラスタ(型式:MT-9)」を受注した。
 本スラスタは,小型(推力:1N)の推進器で民間衛星に複数台搭載され,軌道上での所定の高度や軌道を維持する機動性(マヌーバ)を確保するために活用される。

 IAが2012年に宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)と共同開発した1Nスラスタ(MT-9)は,2017年に打ち上げられた超低高度衛星技術試験機(SLATS: Super Low Altitude Test Satellite:※1)に搭載され,その機能が実証された。MT-9は1Nスラスタの第2世代にあたり,以前の1Nスラスタと比べて,より国際的な競争力を有する長寿命(※2)スラスタとなっている。また,このスラスタは,燃焼部分(ジェットモータ)とそこに推薬を供給するバルブとの間の断熱性能が優れており,この特性により,噴射モードにおいて,次の噴射までの開始時間に制約が無いことや,ジェットモータに取り付けられているヒータの消費電力が小さいことが特徴である。

 今回の契約はIAにとってOHB Swedenからの2回目の受注になる。OHB Swedenに納入した初回契約分スラスタについて,製品性能および契約から納入までのサポートにおいて高い満足度を得られたとの評価を受けており,今後も顧客の満足度の維持に務めるという。

<衛星用1Nスラスタ>
 人工衛星に複数台搭載され,衛星の姿勢制御や軌道制御に使われる小型の推進器。推薬を触媒で分解して高温ガスを発生することで推力を出す装置。
 推薬を供給する推薬弁,ガス発生部,熱制御機器(ヒーター,温度センサ類)から構成される。

※1 超低高度衛星技術試験機(SLATS: Super Low Altitude Test Satellite)
JAXAから2017年12月に打ち上げられ2019年9月まで運用された,小さなセンサを用いて高分解能の衛星画像を取得可能な衛星。
※2 トータルスループット(スラスタに供給される推薬の総量)と,パルス数(スラスタの噴射回数)の双方を大きくすることで,長寿命化を実現。

プレスリリースサイト(IHI):
https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2022/aeroengine_space_defense/1198021_3479.html