キリン「βラクトペプチドと熟成ホップに関する研究」が日本抗加齢医学会より「研究奨励賞」

キリンホールディングス(株)のキリン中央研究所は、超高齢社会の日本国内において大きな社会課題となっている認知症や脳の健康に対し、食を通じて貢献するため、独自の認知機能改善素材「βラクトペプチド」と「熟成ホップ」の開発・研究を行ってきた。
この度、一連の研究成果とエビデンスの確からしさが認められ、国内の老化研究の中核的な学会である日本抗加齢医学会より2021年度の研究奨励賞を受賞した。研究奨励賞を企業研究員が受賞したのは初めてとのこと。

■受賞内容
1.受賞タイトル
 認知機能の維持向上に役立つβラクトリンおよび熟成ホップの発見と機能性食品の開発
2.受賞者
 キリンホールディングス株式会社R&D本部キリン中央研究所 阿野泰久
3.受賞研究内容
 超高齢社会を迎えた日本において、認知症や脳の健康は重要な社会課題となっています。十分な治療方法が無い中、認知機能の維持向上に繋がる日常生活での対策に、世間の関心が高まっている。
キリンは、食事と認知症発症に関する久山町(福岡県糟屋郡)での疫学調査※1に着目し、乳製品に含まれる認知機能を改善する有効成分を探索し、βラクトペプチドを独自に発見した。βラクトペプチドは、摂取後に血液脳関門を通過し、脳へ届いてモノアミン※2分解酵素の活性を阻害することで、記憶力や意欲に関わる神経伝達物質のドーパミンを増加させる※3。さらに、健常な中高年齢者を対象とした臨床試験によって、βラクトペプチドの摂取が記憶力や集中力等の認知機能を改善すること※4、前頭前野の脳血流を高めること※5を確認している。同社は、これら一連のエビデンスに基づき、βラクトペプチドを活用した機能性表示食品の事業化を実現した。また、βラクトペプチドの一連の研究成果は日本認知症予防学会よりグレードAのエビデンス認定を受けている。
※1 Ozawa M, et al, Journal of the American Geriatrics Society, 2014, 62(7): 1224-1230
※2 ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの総称。ドーパミンはモノアミン酸化酵素B(MOA-B)によって分解・代謝される。
※3 Ano Y, et al., Neurobiology of Aging, 2018, 72: 23-31
※4 Kita M, et al., Frontiers in Neuroscience, 2019, 13: 399
※5 Ano Y, et al., Aging (Albany NY). 2020, 12(18):18660-18675.

また、同社は「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分を、認知機能を改善する成分として独自に発見した。「熟成ホップ」に含まれるビール苦味成分は腸管の苦味センサ(苦味受容体)に働きかけて迷走神経を刺激し、脳と腸を繋ぐネットワーク(脳腸相関)を活性化することで認知機能や抑うつ状態を改善することを確認している※6。特に、苦みが低減された「熟成ホップ」を用いて健常な中高年齢者を対象とした臨床試験を行い、注意の制御機能、不安感が改善すること※7を確認した。同社は、これら一連のエビデンスに基づき、熟成ホップを活用した機能性食品の事業化を実現した。
※6 Ano Y, et al., FASEB J, 2019, 33(4): 4987-4995.
※7 Fukuda T, et al., J Alzheimers Dis, 2020, 76(1): 387-398.

βラクトペプチドや、熟成ホップなどを中心とした脳科学研究に関する取り組みは、国際誌に50報以上掲載されている。多くのメディアや書籍において紹介され、学術集会やシンポジウムにおける基調講演、特別講演での発表を行っており、学術的に高い評価を受けている。同社は、今後βラクトペプチドや熟成ホップを活用して、脳の健康がサポート可能な食習慣の提案を推進することで、日常生活を通じた認知機能の維持向上への貢献を目指すとしている。

ニュースリリースサイト(KIRIN):https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0620_01.html