日揮、福島で陸上養殖実証事業を開始

日揮ホールディングス(株)は、国内EPC事業会社の日揮(株)が、このたび陸上養殖分野での技術開発と生産実証、および生産した魚の販路構築(以下「本事業」)を手掛ける新会社「かもめミライ(株)」を設立したと発表した。

1. 新会社設立の背景と目的

近年、世界的な水産物需要の高まりを背景に、魚の生産環境を制御する陸上養殖は、持続可能な水産業として期待されている。中でも閉鎖循環式陸上養殖システム※1は高度な水処理技術を活用するため、場所の制約が少ないほか、排水処理によって環境負荷を軽減し、安定した生産を行うことができる点で注目されている。反面、高い生産コストなどが課題となる。

本事業では、日揮グループが培ってきたエンジニアリング技術力を駆使し、閉鎖循環式陸上養殖システムの一つとして、センサや画像から生産環境を可視化し、収集したデータをAIなどで解析しながら生産支援を行う「統合環境制御システム」を開発する。
また、当該システムによる生産の安定化や生産効率の向上でコストを低減し、更には陸上養殖分野の知見・経験を持つ水産研究機関や大学、企業と連携しながら、餌や稚魚に関する生産原価の低減、および安全性の高い商品の供給(販売)も含めたサプライチェーン全体にわたる事業展開を行う。

本事業の開始に向けて、日揮は2021年から岡山県内の閉鎖循環式陸上養殖施設で、魚の試験生産による養殖ノウハウの蓄積とシステム開発を実施してきた。この成果も踏まえ、設立した新会社では、2022年冬を目途に福島県浪江町で、統合環境制御システムを備えたプラントの建設に着手し、魚の安定生産を可能とする環境や設備機器の最適な組み合わせを実証する。本実証プラントにおいて、まずは生食向けに需要が高まっているサバを対象として2024年から本格生産を開始し、サバ以外の魚種についても、企業や自治体などのニーズに合わせて順次生産を行う予定。

新会社は将来的に、陸上養殖の生産技術を確立するだけでなく、地域の需要に応じた水産物ブランドを開発することも計画している。加えて、漁獲された魚を市場に供給する「プロダクトアウト」から、高度な環境制御が可能な陸上養殖の利点を生かしつつ、魚種を拡大することで顧客のニーズに合った魚を提供する「マーケットイン」による、新たな水産業の確立も目指す。
なお、本事業においては、地元の水産業を活性化するため、新たな可能性に挑戦しているいわき魚類(株)がパートナーとなり、共同で取り組みを推進していく。

2. かもめミライ水産(株)の概要

代表者 : 臼井 弘行(日揮(株) 未来戦略室)
設立日 : 2021年8月30日
資本金 : 1億円
所在地 : 福島県浪江町
事業概要: 陸上養殖分野の実証生産および技術開発
出資者 : 日揮(株)95%、いわき魚類(株)5%

3. 今後の方針

日揮グループは、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」で新たに掲げたパーパス”Enhancing planetary health”のもと、陸上養殖の普及を通じて海洋資源を保護※2しながら、人と地球の健やかな未来を創ることに貢献していくとしている。

※1 閉鎖循環式陸上養殖システムとは、人工的な環境下で魚の養殖を行う生産方法。高度な水処理技術によって水槽内の海水や淡水を循環させながら、水を浄化し再利用することで、陸地でも養殖することが可能となる。
※2 出典:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/14-sea/

ニュースリリースサイト(JGC-HOLDINGS):https://www.jgc.com/jp/news/2022/20220520.html