「リーク計測」で、ものづくりを支えるフクダ

株式会社フクダ

 漏れ試験(リークテスト)は、工業部品から食品・医薬に至るまで実に多くの製品に対して行われる検査であり、その方法も様々である。株式会社フクダは漏れ試験機に関する総合メーカであり、長年にわたり国内、および海外における数多くの製造現場に製品を納入してきた。ここに、当社製品の紹介も交えながら漏れ試験の概要について述べることとする。

*見えない場所にも「測る」ことを利用した技術がある
 私たちの身の回りや暮らしの中には、様々な“圧力”が存在する。タイヤの空気圧も身近な“圧力”のひとつである。天気予報でよく耳にする「明日の天気は高気圧に覆われ、雲一つない快晴となるでしょう」にも“圧力”が存在する。自動車やエアコン、スマートフォン、企業の生産現場や土木・建築の作業現場、工場プラントや食品工場、化粧品製造や医療現場に至るまで、色々なシーンで使われている“圧力”が正しく管理されていなければ、社会生活は成り立たない。フクダは、これらの目に見えない力である“圧力”を制御し、計測する技術に特化し、様々な工業分野にリークテスト装置を供給している。

*身近なところにある漏れ試験
 私たちのまわりには、「漏れてはいけないもの」「漏れた量を監視するもの」「気密性が必要なもの」が意外と多く存在している。ガステーブルからガス漏れが発生したら、命に関わる危険な事故に繋がる可能性があるため、「漏れてはいけないもの」に該当する。水道の蛇口を閉めた状態で“測る”を行えば、水は「漏れてはいけないもの」として計測を行うわけで、水漏れを起こしていたら、パッキンの交換や場合によっては部品の交換を行う。水道の蛇口は水を塞き止めるだけの役目ではなく、蛇口を回せば水を供給し、その開度によって供給量を増減できなければならないため、全閉状態の際は「漏れてはいけないもの」として“測る”を行い、開度を変えた供給量の違いを流量検査(必要な流量に達しているか)によって“測る”を行う。この場合、言い換えれば「漏れた量を監視するもの」となる。
 今のスマートフォンの多くは防水保護構造となっている。iPhoneなどスマートフォンの中には、「IEC(国際電気標準会議)」によって規格化されたIP規格(IP67等級)によって性能をうたうものがある。IP67は「安全な防塵構造」(IP6□第1数字記号)で、且つ「規定の圧力、時間で水中に没しても水が浸入しない」(IP□7第2数字記号)相当の保護等級を表していて、「気密性を要するもの」に位置付けられる。防水とは、水を防ぐ性能があることを示しているが、空気の侵入を防ぐ性能を有することは示しておらず、水に対しては気密が確保されているが、空気に対しては保証されていない。「気密性が必要なもの」には、何に対して気密なのかが重要であり、水が漏れない気密性の検査、オイルが漏れない気密性の検査、二酸化炭素が漏れない気密性の検査では、数値化する規格(閾値)が全く異なり、オイル>水>二酸化炭素の順に気密性の検査時の閾値が小さくなる。このように、身近にある多くの物で、漏れを“測る”ことが行われている。

*自動車部品における漏れ試験

図1 自動車部品に対するリークテスト
図1 自動車部品に対するリークテスト

 自動車部品には、非常に多くの“漏れを測る”対象がある。内燃機関を持つ多くの車は、燃料漏れがあると引火や爆発の危険を伴うため、「漏れてはいけないもの」という概念、言い換えれば「漏れなきこと」を前提とした検査が行われる。「漏れなきこと」を計測するには閾値として数値化が必要となるが、性能を損なわないことや、危険がないことなどの条件を鑑みて決定され、製品製造工程の最終工程(出荷検査・性能検査・特性検査等として)で「性能や安全に対して阻害が無いかを確認の為」に閾値を基準とした気密検査(リークテスト)が行われる。

*He(ヘリウム)による漏れ試験

図2 HES-2000図2 HES-2000

 自動車部品の中でも、燃料漏れ向け気密検査の閾値は、引火や爆発の危険性を考慮して、厳しい検査規格が採用されることが多く、特定の分子を質量分析管に導き、分子数を求めることで漏れを検出する方式が多く使用されており、フクダ製品ではHeガスを用いた「HES-2000 ヘリウムリークテスト装置」(図2)が使われている。内燃機関を持つ自動車は、燃焼効率を上げることでCO2等の有害廃棄物の減少を図るため、高圧化や燃焼効率向上が進んでいるが、検査基準も厳しくなるため、質量分析管を使用した気密検査の採用が増加傾向にある。

図3 FL-620/FL-611図3 FL-620/FL-611

*空気による漏れ試験
 一方で、定量の溶液やガスが流れなければ要件を満たさない部品も多く存在する。自動車部品ではインジェクタと呼ばれる燃料供給装置が使われるが、これはエンジン(シリンダー)に入れる空気量をセンサで計測し、必要な燃料量をコンピューター制御によって高圧噴射する装置である。検査は指定された圧力に対して一定の噴射量(流量)が流れるかを計測し、例えば0.5MPaの圧力(圧縮空気)を一次側(燃料供給側)に加えた場合、二次側に0.5mL/minの空気が噴射(流量が流れる)されるか検査を行う。フクダの製品では「FL-620/FL-611等 エアリークテスター」(図3)が広く使われている。
 エアリークテスターは、「差圧式リークテスター」とも呼ばれ、精度が良く、利便性が高く安価である、などの特徴から気密検査機器の中でも数多く採用されている。差圧式リークテスターの原理は、天秤はかりに近いものと言える。天秤はかりは、対象物の重さを基準分銅と比較して精密に量るものだが、エアリークテスターは、基準となる漏れが無い製品(マスター)と検査対象となる製品(ワーク)に同じ空気圧を封入し、一定時間内の両者の差圧の変化を計測して漏れの有無を調べる。同じ空気圧を封入した直後から差圧が変化すれば大きな漏れがあると判断し、一定時間以降徐々に差圧が発生するようであれば、少ない漏れと判断出来る。実際には、時間あたりの差圧圧力の変化量を体積流量に換算している。
*水素による漏れ試験

図4 HD-111図4 HD-111

 先にHeガスをサーチガスとした質量分析管による気密検査方法について言及したが、Heガスは特性的に他のガスに比べて優位性が高く、利便性も高いことから、長年に渡り活用されてきた。具体的には、空気中の体積分率が5.2 ppm(5.2/1,000,000)であり、他のガスと区別し易いこと、分子直径が最も小さいこと(水素は2原子分子なので、He分子直径を上回る)、人体に無害で他の物質と反応しない不活性ガスであること、がリーク検査に適した特徴となる。ところが、10年ほど前からHeガスの供給が需要に追い付かず、価格が高騰しており、東京ディズニーリゾートでは2012年11月(2014年1月迄)に続き、2021年12月1日から園内で販売していた全てのバルーン販売を休止する事態も起きている。このような中で、フクダはサーチガスに水素(水素5%、窒素95%の混合ガス、非可燃性で安全なガス ISO 10156:2017)を使用する漏れ検査機HD-111(図4)をラインナップしており、差圧式リークテスターでは検出出来ず、Heリークテストに頼っていた10-4Pa・m3/s ~ 10-6Pa・m3/sの領域の検査を、安価で供給不安のない水素で計測可能としている。
*その他の漏れ試験

図5 FM-1063図5 FM-1063図6 ラミナーフローメーター図6 ラミナーフローメーター図7 MSX-6200図7 MSX-6200

 自動車のエンジン出力はアクセルペダルの踏み込み量で制御される。実際のところアクセルペダルは燃焼機関への吸気量を調整しているわけだが、この吸気量の調整弁をスロットルバルブと呼び、性能検査(特性検査とも言う)ではバルブの開度による流量を確認している。バルブの開度と一次側の供給圧力による性能検査は雑多で、数十mL/minから数百L/min以上に至るまで様々な検査が実施されるが、フクダ製品ではフローテスターFM-1063(図5)やラミナーフローメーター(図6)などが使用されている。  スマートフォンの防水保護構造について先に言及したが、内部に搭載されている部品の中には漏れに対するさらに厳しい性能が求められているものがある。例えばアプリとして良く使われている位置情報や地図の機能にはMEMSのジャイロセンサ(角速度センサ)が使用されている。ジャイロセンサは物体の向きや変化を、単位時間あたりの回転角度(角速度)として検知し、電気信号で出力するセンサであり、スマートフォンに使われるものは5mm角以下の小さな密封構造となっている。この極めて小さい空間に空気が侵入すると、寒暖差により結露が生じ製品性能の低下や不具合が発生する場合があるため、ここでも漏れ検査が行われている。フクダの製品では、クラックや大きな孔が空いたような大きな漏れ(グロスリーク)の確認と10-9Pa・m3/sの微小な漏れ(ファインリーク)を1台で検査出来るMSXシリーズ(図7)が使われている。

*最後に

 フクダは1962年の創業以来、圧縮熱除去システム、温度計を用いない温度補償システム、コンピューターデータを測定基準としたマスタリング計測技術等、様々な技術を取り入れたエアリークテスターを世界に先駆けて製品化してきた。これらはどれも時代時代のお客様のニーズやウオンツに対応し、お客様と共に考え、お客様と共に歩んだ結果生まれてきたものである。脱炭素社会に向けた大きなうねりが始まり、漏れ試験に関する新たなニーズも生まれるものと予想されるが、これまで以上に新たな技術で応えていくことがリークテストの総合メーカであるフクダの使命である。



株式会社 フクダ
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