「ロボットの神経に期待される超高速分布型ファイバーセンサー」(4)

4.最近の進捗・今後の展開

 我々はこれまでに、プラスチック光ファイバー(POF)中のブリルアン散乱を初観測し、そのさまざまな特性を解明してきた7)。すでに、BOCDRによる分布測定も実証し、100 mmの高温区間を検出することに成功した。これに引き続き、最近では前述の「位相検波BOCDR」および「傾斜利用BOCDR」もPOFを用いて実装することに成功した。高速分布測定を実証したほか、5 mmのホットスポットの検出にも成功した。
今後は、損失の影響を受けない動作の実現、歪・温度のダイナミックレンジの向上、歪と温度の同時分離測定の実証を推進したいと考えている。また、ESAの各種機能をローカルな回路で実現するなどして大型装置を撤廃し、実用化に向けたシステムの小型化・低コスト化も並行して進めていきたい。

5.結論

 本記事では、2種類の超高速BOCDR、「位相検波BOCDR」と「傾斜利用BOCDR」について基本原理から最近の進展までを紹介した。これらの手法は、伸び縮み(振動)や温度変化の分布情報を片端からの光入射で、リアルタイムかつ高空間分解能で取得できるため、様々な構造物(ビル・橋梁・トンネル・ダム・堤防・パイプライン・風車の羽根・航空機の翼など)に関わる防災・危機管理技術として幅広く活用することができる。また、アームに巻き付けることで、任意の位置で接触や変形、温度変化を検出するロボットの新しい「神経」としての応用も期待できる。
なお、本手法によるリアルタイム分布測定の動画を、https://youtu.be/0TKUivvYbH0 にて公開中である。

(※月刊OPTRONICS 2017年12月号より転載)

参考文献

7)Y. Mizuno, N. Hayashi, and K. Nakamura, “Distributed Brillouin Sensing Using Polymer Optical Fibers”, Chap. 5, in H. Alemohammad, Opto-Mechanical Fiber Optic