ボールウェーブ・東北大学・豊田合成、新型コロナウイルスの高速センサを共同開発

 ウイルスを高速高感度に捕捉するボールウェーブのセンサ、センサ精度を向上する豊田合成の卓越した表面処理技術と、東北大学の呼気分析による高精度な診断法ー呼気オミックスーの知見を総合して、環境空気中のウイルスをモニターする機器の開発を目指す。
このたび、エアロゾル中の新型コロナウイルス由来のタンパク質を1分以内に捉えることに成功した。医療機関、飲食店、公共交通機関、大規模集客施設、一般家庭等におけるウイルスの拡散状況を可視化するシステムを開発できる可能性があるという。

【概要】
 新型コロナウイルスは、空気中のエアロゾルを介して感染すると言われているが、空気中のウイルス濃度をリアルタイムで検査できる方法・機器(気相ウイルスセンサ)はまだ開発されていない。また新規感染者の迅速な検出のため現在使われている最も簡便な検査手法はイムノクロマト法抗原検査キットだが、検査には15分以上かかり、これは新型コロナウイルス感染症対策における大きな課題となっている。
 会話や咳によって環境空気中に放出されたエアロゾルは毎秒数十cmという高速で空間を移動する。センサが1m以内の距離にあれば、エアロゾルは10秒以内にセンサに到達して、エアロゾル中のウイルスは水を被った状態でセンサ表面に保持されると考えられる。
 そこでボールウェーブはその固有技術であるボールSAWセンサ〔注1〕の表面に抗体またはアプタマー〔注2〕を固定し、保持されたウイルスのスパイク蛋白と反応させてウイルスを捕捉するセンサを考案した(画像)。このセンサの応答時間は10秒以下であり、ウイルスが微量でセンサ応答が小さくてもボールSAWセンサの画期的な原理によって応答が増幅されるので、高感度に検出できると期待される。
 豊田合成が車の内外装部品の開発で培った表面処理技術と、東北大学の呼気中のウイルスや炎症性蛋白を質量分析で検出する高精度な診断法である呼気オミックス〔注3〕の知見を総合して、共同開発を進める。
 21世紀はパンデミックの世紀とも言われている。環境空気中のウイルス検出や非侵襲で迅速なウイルス検査を可能とするボールSAWウイルスセンサを、1日でも早く全世界の人々に提供することを目指すという。

【用語解説】
[注1].ボールSAWセンサ:球の表面に集中して、横方向にも拡がらず繰り返し周回する弾性表面波(Surface Acoustic Wave; SAW)を用いるセンサ。東北大学大学院工学研究科の山中名誉教授らによって開発された。
[注2].アプタマー:細胞や蛋白質など特定の異物と特異的に結合して、その機能を阻害する核酸分子をアプタマーと呼ぶ。タンパク質分子である抗体と類似の機能を持つが、核酸であるため抗体より熱的・化学的に安定であり、昇温によって異物との結合を解離して、再利用可能なものもある。
[注3].呼気オミックス:被験者の呼気を採取し、エアロゾル中のウイルスタンパク質・ゲノムと同時に炎症メディエータやエネルギー代謝物を効率良くかつ安全に回収し、ロボット化全自動高速・超高感度解析を行う方法。東北大学大学院医学系研究科の赤池教授らによって開発された。

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