バイタルセンサ無線ネットワークを用いた体調管理システムの実証実験を実施

OKIはこのたび、情報通信研究機構の委託研究「未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」に基づき、大阪市立大学、関西大学、明治大学、(株)ソリトンシステムズと共同で、屋外の広い場所に分散して動き回る人の体調情報をバイタルセンサ無線ネットワークを用いてリアルタイムにモニターする体調管理システムの実証実験を行い、体温・脈拍などの情報を人数や移動速度に関わらずリアルタイムに収集することに成功した。これにより、数百人規模での運動会や遠足など、教育現場のさまざまな場面で、全生徒の体調をモニターするシステムの運用が可能になるという。

年々深刻化する夏場の猛暑の影響もあり、教育現場では運動中の熱中症などによる生徒の体調不良が問題となっている。生徒が自身の体調変化に気づかないことも多いため、教師が正確な体調情報を病院に伝えられず重症化や死亡につながることもある。このような背景から、生徒一人ひとりの体調の異変を早期に発見し、素早く対処することで重症化を未然に防ぐシステムが期待されている。
一方で、運動中の人間から体温や脈拍などの体調情報を計測しリアルタイムにモニターするシステムはトップアスリート向けに商用化されているものの、運用コストが高いことに加え、通信距離の制約があり、利用人数も数十人程度に限られることから、教育現場での利用は現実的ではない。

OKIは、920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop®」で培ったマルチホップ無線ネットワーク(注1)技術をベースにバイタルセンサ無線ネットワークを開発し、高頻度にセンサ間のネットワークを再構成することでセンサを付けた人の高速移動に対応し、センサ間で無線帯域を効率的に共有することでデータの収集率を向上させた。これにより、広い領域(屋外のスポーツグラウンド規模)において、多人数(~数百人)が高速移動(~10m/s)している状態で、各人の体温や脈拍等のデータを低遅延(10秒以下)で収集することが可能になるという。

本実証実験においては、学校施設の運動場を想定した屋外のグラウンドで、150個のセンサを新型コロナウイルス感染予防策(注2)を徹底した68名の被験者の両腕に付けて運動してもらい、各自の体温および脈拍等を90%以上のデータ収集率で得られることを確認した。
また、ライセンスを必要としない920MHz帯を利用していることで、低コストでのネットワーク構築が可能となり、体育の授業はもちろん、数百人規模での運動会や遠足など教育現場のさまざまな場面で、通信費用をかけることなく全生徒の体調をモニターする体調管理システムへの適用が見込めるとのこと。

OKIは、本実証実験の成果を活かし、教育現場等でのさまざまな課題解決に向けて、バイタルセンサー無線ネットワークを用いた体調管理のためのソリューション提供を目指す。教育用途以外にも、団体旅行の参加者や建築現場作業員の体調管理、スポーツクラブチームのパフォーマンス管理など、さまざまなシーンに応用可能と考えているとしている。

注1:マルチホップ無線ネットワーク
複数の無線装置を経由して、バケツリレーのようにデータを伝送する通信方式。親機から直接電波が届かなくても近隣の子機を経由してネットワークに接続できるため、広いエリアの無線ネットワークを低コストで構築できる。

注2:新型コロナウイルス感染予防策
新型コロナウイルス感染症対策として、被験者間のスペースをとるために隣接するグラウンド、球戯場の2つを使用し、施設のガイドラインに沿って実施した。被験者には受付時に個人情報利用の同意を得たうえで連絡先の記録に協力いただき、手の消毒と検温、マスク着用による参加を徹底した。また、センサを人に付け替える際には、都度消毒を実施した。

ニュースリリースサイト(OKI):https://www.oki.com/jp/press/2021/04/z21005.html