矢野経済、協働ロボット世界市場に関する調査を実施(2020年)

“2030年の協働ロボット世界出荷台数を102,378台、出荷金額を2,230億8,200万円に拡大予測”

(株)矢野経済研究所は、2020年の協働ロボット世界市場を調査し、主要国の関連政策や支援制度、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況
2019年における協働ロボット世界市場規模は、メーカー出荷台数ベースで28,969台、同出荷金額ベースで1,000億7,800万円と推計する。多品種少量生産や変種変量生産が求められる第4次産業革命の時代には、ユーザ企業のニーズに柔軟に対応できる生産システムが必要となる。協働ロボットは、既存の産業用ロボットに比べて設置や運転が簡単で、レイアウトの再配置及び工程変更が容易であるため、産業用ロボットの導入が難しい生産工程などにおいて導入が進んでいる。

人間が持てないほど重い物体のハンドリングや塗装、溶接など、人では難しい作業を産業用ロボットが行う一方で、協働ロボットはスクリュードライビングと力制御による曲面アイロンなどのより精密な作業を、囲い無しで人と同じ空間内で行うことが可能である。そのため、産業用ロボットと協働ロボットはスマートファクトリーの構築において相互補完的な役割を果たしており、生産自動化には欠かせない領域を占めている。しかし、米中貿易摩擦の長期化による製造業の生産低迷や、COVID-19拡大の影響による生産稼働率の低下などを背景として、2020年の協働ロボット世界市場規模は、メーカー出荷台数ベースで前年比87.9%の25,474台、同出荷金額ベースで同89.7%の898億1,300万円に減少する見込みである。

2.注目トピック
協働ロボット世界出荷台数を導入業界別にみると、サービス業界やその他業界における構成比は、2020年23.2%から2030年には38.1%まで拡大すると予測する。
世界でも導入が進んでいる中国では、マッサージ物理療法や電力グリッドでの高電圧ケーブルの保守作業など、今まででは協働ロボットの導入が考えられていなかった新規応用分野での需要が増加している。また、韓国では政府主導のプロジェクトとしてチキン店、コーヒーショップ、ビール専門店などの飲食商店街やハンドメイド靴工房などにおいても協働ロボットの導入が進んでいる。日本においても、三品(食品・化粧品・医薬品)産業やサービス産業におけるロボット活用を目標とするロボット導入実証調査(FS:feasibility study)事業が進められている。

3.将来展望
2021年下半期以降、新型コロナウイルス感染拡大が収束し、景気や製造業における設備投資が回復していくことで、2030年の協働ロボット世界市場規模は、メーカー出荷台数ベースで102,378台、同出荷金額ベースで2,230億8,200万円まで成長すると予測する。
今後、協働ロボットにおいてもIoTやAI、5Gなどの新技術が更に導入され、導入分野が大きく広がって行く見込みで、また、協働ロボットの生産プレイヤーが増加している事から関連部品のコストが削減ができ、2030年頃には協働ロボット本体の価格が2020年に比べて30%前後まで下がる見通しであるとしている。

プレスリリースサイト(矢野経済研究所):https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2648