各社の光センサ関連製品

ローム 光学式脈波センサ
ウェアラブル向け光学式脈波センサ「BH1792GLC」

光学式脈波センサとは、半導体技術の一つである光センシング技術を用いて脈波の計測を行うものである。この光センシング技術は、光源であるLEDを生体に向けて照射し、受光部となるフォトダイオード(以下フォトDi)又はフォトトランジスタを用いて、生体内を透過又は反射した光を計測するものである。動脈血中には吸光特性を持つヘモグロビンが存在するため、時系列に光量をセンシングすることでヘモグロビン量の変化、すなわち脈波の信号を取得できる。近年、市販されている光学式脈波センサを搭載したスマートバンドやスマートウォッチでは、皮膚への装着性や負荷を考慮し、緑色の光を使った反射型光センサを選定しているものが主流となっている。緑色光は生体への透過深度が小さいため血液以外の組織の影響を受けにくく、さらにヘモグロビンの吸光係数が大きいことから脈動成分の大きい脈波信号が測定できる。
ローム製「BH1792GLC」は、ウェアラブル機器向けに最適な高精度検出と低消費性能を実現した光学式脈波センサである。赤外線除去技術を搭載したことにより、太陽光が降りそそぐビーチや公園などの屋外でも、高品質な脈波信号を取得することができる。また従来製品に比べて高速にデータをサンプリングできるようになり、ストレス測定や血管年齢測定など、多岐にわたるバイタルアプリケーションに対応することが出来る製品である。


応用範囲
・スマートバンド・スマートウォッチなどのウェアラブル機器
・スマートフォン
・その他バイタルデータを必要とするデバイス

BH1792GLCの特長


BH1792GLCでは、カラーレジストと多層膜フィルタの2つの光学フィルタをSi基板上に形成することで赤色光と赤外線成分を除去し、緑色波長帯域の光のみを通す受光部を実現している。実際に、BH1792GLCと一般的なフォトDiを使って脈波信号を測定した結果を右図に示す。外乱光ノイズが発生している環境下で脈波信号を測定した場合、一般的なフォトDiでは脈波信号に外乱光成分が重複してしまいノイズが大きくなるのに対し、BH1792GLCは赤外線や赤色光などの外乱ノイズの影響を一般品比の1/10以下に低減し、安定して脈波が取得できている。また、赤外線領域に感度を持つフォトダイオードを内蔵することにより、ウェアラブルデバイスの装着判別等に用いることが出来るようになった。
脈波信号を使ったアプリケーションとしては脈拍計が一般的だが、脈拍変動を解析して得られるストレス計測や、波形解析を行うことで得られる血圧情報などのアプリケーション開発も進んでいる。これらの機能がウェアラブル機器に搭載され、定常的に計測できるようになると、日々の体の状態変化から早期に病気の予兆を捕らえることが可能になると期待されている。
BH1792GLCはストレスや血管年齢の測定など、複雑なバイタルセンシングに対応するために、従来品と比較して最大で32倍早く脈波を測定できる高速サンプリング(~1024Hz)に対応した。本製品には装着判別用の赤外線センサも組み込んでおり、ウェアラブル機器に必要とされるセンサを一つ取り込んだことで、システムの簡略化も可能である。さらに、脈波センサの受光特性に最適な外付け緑色LED(ローム製「SMLMN2ECT」)を採用し、光学設計を最適化することで、低消費電流0.44mA(脈拍数測定時)を実現している。また、HOST(マイコン)側の消費電力を削減するためのFIFO(First in First Out)機能も搭載しており、脈波センサとマイコンの低消費電力化でアプリケーションのさらなる長時間駆動が可能である。このように、BH1792GLCは優れた赤外線除去特性と低消費電力特性、高速サンプリング機能を合わせ持つウェアラブル機器に最適な脈波センサである。

脈波センサBH1792GLC評価ボード


ロームではMEMSセンサや光学センサなどロームグループのセンサをArduinoやmbedを用いて簡単に評価できるロームセンサ評価キット「SensorShield-EVK-002」をリリースしている。そのラインナップに脈波センサの評価ボード「BH1792GLC-EVK-001」を追加した。回路図、レイアウト、マニュアルといった評価に必要な情報をロームの特設ページで公開している。また、BH1792GLC用のサンプルソフトウェアドライバも公開し、ユーザーが自由に改変できる環境を整えており、さらに簡単に脈波を可視化することが出来る評価キットに仕上げている。ロームセンサ評価キットに加速度センサや地磁気センサなどのモーションセンサデバイスのラインアップがあり、これらのデバイスと脈波センサを組み合わせることで、例えば体動を考慮した脈波アプリケーション開発も可能になっている。

主な仕様
電源電圧範囲 2.5V to 3.6V
動作時消費電流 200μA(typ.)
パワーダウン時消費電流 0.8μA(typ.)
動作温度範囲 -20℃ to +85℃
FIFO数 35サンプル
サンプリング周波数 32/64/128/256/1024Hz
インターフェース I2C
パッケージ WLGA010V28、2.8mm x 2.8mm x 1.0mm

問合せ先
ローム株式会社
TEL: 075-311-2121
https://www.rohm.co.jp/contactus