液位センサについて ガイドパルス式レベル計 GW100形(2)

(株)ノーケン
マーケティング部
河村 啓介

4.ガイドパルス式レベル計 GW100形

弊社が新製品として2019年4月にリリースしたガイドパルス式GW100形は、簡単な操作で幅広い用途にご使用いただける接触式の液位センサである。

4.1動作原理

GW100形は、時間領域反射率測定法(TDR;Time Domain Reflectometry)を採用している。プローブ(ロッドまたはワイヤー)上端から先端に向けて発信された高周波信号は、プローブに沿って進み、測定物表面で反射する。反射した信号はプローブを逆行し、センサで受信される。センサは発射してから受信するまでにかかった時間をレベルに換算し出力する。(図7参照)

図7 TDRの仕組み

ガイドパルス式はプローブに沿って伝搬している高周波信号を利用して計測しているので、非接触式の超音波式及びマイクロウェーブ式で考慮しなければならないビーム角の問題はなく、小形タンクや障害物の多いタンクなどで液位を計測できる。
またフロート式と異なり、ガイドパルス式レベル計はフロートのような稼働部がなく、測定液の粘性や付着物の影響を受けにくい点もメリットである。

4.2 GW100形の特長

写真1 GW100形プローブ種類

GW100の主な特長は次の通りである。

  • ゼロ点、スパン点、プローブ長の設定のみで完了するクイックスタート機能を搭載。
  • プローブのバリエーションはロッド、ワイヤー、PFAチュービング、サニタリーの4タイプ。(写真1)
  • 稼働部がなく、高粘度の液位の計測に向いている。
  • 比較的付着の影響を受けにくい。
  • 堅牢なつくりで耐久性に優れている。

弊社のレベル計は主としてPA分野への納入事例が多く、厳しい現場環境で使用いただくことを考慮に入れ製品開発を行った。
弊社としてGW100形は、自信をもってお客様に推奨できる製品に仕上がっていると自負している。

4.3 GW100形と他の液位センサとの比較

ここでGW100形と、これまで述べてきた他の液位センサとを比較し、双方のメリットを整理したいと思う。

〇GW100形のメリット

  • 計測長やプローブ長を容易に変更することができる。
  • 実液投入が不要な上、3ステップの簡単な設定で稼働する。
  • 結露、付着の影響を受けにくい。
  • 機器校正が不要。
  • 測定液のべーパー、発泡、結露の影響を受けない。
  • タンク内障害物の影響を受けにくい。
  • メンテナンスが不要。

〇他の液位センサのメリット

  • プローブ形状、防爆仕様など、対応できるバリエーションが豊富。
  • 計測レンジが長い。
     静電容量式 MAX.10m
     圧力式(投げ込み式) MAX.100m
     超音波式 MAX.30m
     マイクロウェーブ式 MAX.20m
  • 超音波式、マイクロウェーブ式は、液中にプローブを挿入する必要がなく、使用上接液させたくない場合に有利。

このように、液位センサは方式によって一長一短である。
GW100形は簡単な設定で立ち上がり、付着、発泡、結露や障害物などの厳しい条件下でも使用できる液位センサである。一方で他方式の液位センサは、計測レンジが長く、バリエーションの豊富な点がメリットであり、それぞれの特長を踏まえた上で適切な機種選定が必要である。

4.4 GW100形の用途例

次にGW100形の具体的な用途例をご紹介したいと思う。前述したようなGW100形の特長が活かせる現場として、汚水、排水処理設備での用途が比較的多い。

(1)セラミックスメーカー A社様

  • 用途:付着性及び腐食性のある廃液計測(写真2)
  • GW100形導入前
     ケーブルタイプのフロートスイッチで液面検知。
     腐食性のある廃液によってケーブルが劣化し都度交換を余儀なくされていた。
     付着性が高いため他のタイプの液位センサの使用が困難だった。
  • GW100形採用機種 ワイヤータイプ GW100NW形(写真3)
  • GW100形導入後
    ワイヤーへの付着はあるものの、液位測定に影響なし。
    SUS製ワイヤーであるため劣化はなく、都度交換の手間が解消された。
写真2 廃液の付着状況
写真3 GW100NW設置状況

(2)酒造会社 B社様

  • 用途:酒造排水の液位検知(写真4)
  • GW100形導入前:弊社 超音波式レベル計 QS1000形
     排水の温度が高く蒸気が発生する上、超音波式レベル計の発信部が結露し動作不安定になっていた。
  • GW100形採用機種 ロッドタイプ GW100NR形(写真5)
  • GW100形導入後
     GW100形は、蒸気とそれに伴う結露の影響を受けなくなったため、動作不安定が解消した。
写真4 排水からの蒸気発生状況
写真5 GW100NR設置状況

排水・廃液処理用途だけではなく、GW100形は製造工程内でも採用されている。

(3)食品メーカー C社様

  • 用途:豆腐原料の液位検知(図8)
  • GW100形導入前:全高1.3m程の比較的小形タンクで、タンク内部に攪拌機が複数ある上に、測定液から蒸気が発生している測定環境だった。食品原料であることから、お客様は非接触式を希望されたが、計測を阻害する要因が多いためGW100形を推奨し、納入した。
  • GW100形採用機種
    ロッドタイプ GW100NR形
図8 豆腐原料タンク図

・GW100形導入後:タンク壁や攪拌機の羽根などから100mmほど離れた取り付けだったが、双方からの影響はなく安定して液位計測ができた。豆腐原料からの蒸気や結露についても特に支障はなかった。

このような食品、飲料メーカー向け用途の他、化学メーカーや水処理メーカー向けでPFAチュービングタイプによる薬液計測用途などでも実績を上げている。

5.ガイドパルス式レベル計 次期モデルについて

現在弊社はGW100形に続き、次期モデルの開発に着手している。
次期モデルの主な特長は下記の通りである。
・小形ハウジング仕様
・現場表示付き
・接点出力を搭載
GW100形は大形タンクやピットなどプラント設備で主に採用いただいているが、小形タイプのガイドパルス式を次期モデルとして追加することで小形機器や産業機械装置への設置が可能となり、より幅広くお客様のお役に立つことができるものと考えている。
弊社はガイドパルス式レベル計 GW形を、お客様がより多くの場面で選択していただけるように仕様のバリエーションの拡充を今後とも進めていく予定である。

6.おわりに

液位センサなどのレベル計は設備や機器の制御には不可欠な計器である。”正常に動作して当たり前”の計器であるがゆえに、動作不具合を起こした際の設備に及ぼす影響は大きい。
今回は液位センサについてご紹介したが、弊社は粉粒体計測も含めたレベル計全般を製造、販売している。また、SIEMENS AG(ドイツ)とシーメンス株式会社との3社の販売提携を結んでおり、レベル計以外の工業計測器(電磁流量計、ガス分析計など)の販売、及びシーメンス社製PLCによる制御システム構築など、その事業範囲をさらに拡げている。
弊社はより高品質の製品及びシステムをお客様に提供し、お客様のご要望にお応えできるよう、今後とも努めて参りたい。



【著者紹介】
河村 啓介(かわむら けいすけ)
株式会社ノーケン マーケティング部

■略歴
・1987年4月 能研工業株式会社(現・株式会社ノーケン)に入社
       名古屋営業所に配属
       外勤営業として勤務
・2019年4月 マーケティング部に異動  現職