データ駆動型社会の実現に向け、先端システム技術研究組合(RaaS)設立

 東京大学、凸版印刷(株)、パナソニック(株)、(株)日立製作所、(株)ミライズテクノロジーズ(株)は、2020年8月17日(月)に、「先端システム技術研究組合(略称ラース、以下RaaSと表記(注1))」(理事長 黒田 忠広教授)を経済産業省の認可を得て設立した。
 RaaSは、データ駆動型社会を支えるシステムに必要な専用チップのデザインプラットフォームを構築し、オープンアーキテクチャを展開することで、専用チップの開発効率を10倍高める。さらに、3次元集積技術を研究開発し、最新の7nm CMOSで製造したチップを同一パッケージ内に積層実装することで、エネルギー効率を10倍高めるとのこと。

◆背景
 デジタルトランスフォーメーションの実現の鍵を握るのが、フィジカル空間(現実空間)とサイバー空間(仮想空間)をシームレスに繋ぐデータの活用である。すなわち、IoTデバイスでセンシングしたデータを5Gで集め、AIで高度な分析を加えてサービスとして提供する、データ駆動型社会を支えるシステムが求められる。
 デジタル技術は、プラットフォームで発展・普及するため、従来のコストパフォーマンスに加えて、タイムパフォーマンスが重要になる。すなわち、安く高性能であるだけでなく、早く提供することも重要。専用チップを最先端プロセスで製造すると高い性能を得ることができるが、開発には多大な費用と年月を要することが課題だったという。

◆事業の概要
 RaaSの研究開発目標は、専用チップの開発効率を10倍高め、同時に、エネルギー効率を10倍高めること。開発効率を高めるために、専用チップを素早く設計できるアジャイル設計手法を研究開発し、オープンアーキテクチャを展開する。また、エネルギー効率を高めるために、3次元集積技術を研究開発し、世界のメガファウンドリで7nm CMOSで製造したチップを同一パッケージ内に積層実装する。
 たとえば、複数のSRAMチップを3次元集積してDRAM並みに大容量の積層SRAMを実現する。タイミング設計の難しいDRAMに代えて積層SRAMを用いることにより、コンピュータを用いた自動設計で設計効率を改善。さらに、積層SRAMと専用チップを同一パッケージ内に積層実装することで、エネルギー効率を改善する。
このデザインプラットフォームを活用して、各組合員は自らが実現したいシステムを開発して事業化するとのこと。

◆体制
 RaaSは、東京大学、凸版印刷、パナソニック、日立製作所、ミライズテクノロジーズ(株式会社デンソーとトヨタ自動車株式会社が次世代の車載半導体の研究および先行開発を行なう目的で2020年4月に設立した合弁会社)の5組合員で活動を開始する。各社の事業領域(ドメイン)で求められるシステムをテーマに、デザインプラットフォームを共同で研究開発する。加えて、半導体産業界のエコシステムを支えるファブレスSoC事業会社(株式会社ソシオネクストなど)やEDAベンダーがこの活動を支援するという。

◆期待される成果
 誰でも専用チップを素早く設計でき最先端半導体技術で製造できるようにする。すなわち、「シリコン技術を民主化する」。

注1:RaaS
先端システム技術研究組合の英語名のResearch Association for Advanced Systemsの頭文字を繋げて作った略語。 半導体を部品(製品)としてではなく、 システムの中核知識(サービス)として提供することを標榜し、 サービスとしての研究(Research as a Service)のようにラースと読む。

ニュースリリースサイト(TOPPAN):
https://www.toppan.co.jp/news/2020/08/newsrelease200817_2.html