IoT時代のセンサ技術について(2)

栗山敏秀
((一社)次世代センサ協議会 理事 IoTセンサ技術研究会)

2.IoT時代の到来

センサシステムの形態は、1990年代中頃以降のインターネットの普及や公衆無線回線を含む無線通信技術の発展により大きく変わろうとしている。それまでにも、センサと通信技術を用いたモニタリング・システムとしてGE(General Electric)社の航空機エンジンのリアルタイム・モニタリングは、エンジントラブルの発生やメンテナンス箇所が飛行中に知る事ができ、事前の準備により航空機の運航を大きく改善した例として有名である。しかし、このようなグローバルなリアルタイム・モニタリング・サービスは、当時はGEのような巨大企業だけができるシステムであった。
この状況がインターネットの普及により大きく変わった。さらにデータセンタにおける巨大な情報処理能力を利用するクラウドコンピューティングは、図5のようなIoTセンサシステムを産みだしている。

図5 IoT センサシステムの構成例

また、ダムや河川における降水量や水位を遠隔測定するテレメーターも、従来は専用の無線回線が利用されていたが、携帯電話の普及とともに公衆無線回線がフィールドにおける情報を収集する有力な手段となっている。

図6 無線通信方式

さらに図6のWiFi、3G、LTE、Zigbee、 Bluetooth、など各種の無線通信技術が普及し、最近ではLPWA(Low Power Wide Area)がIoT向け無線通信技術として用いられる。
これらのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)により引き起こされる産業構造の変化は「第 4 次産業革命」を引き起こし、ドイツの「インダストリー4.0」、米国の「インダストリアルインターネット」や、日本における「超スマート社会(Society5.0)」として新しい産業や社会の実現が期待されている。
このように、21世紀において、IoT、ビッグデータ、人工知能の利活用が活発になる中、基盤技術としてのセンサ技術がますます重要となってきている。図7は次世代センサ協議会の「IoTセンサ技術研究会」設立趣意書に掲載されたもので、内閣府の第5次科学技術基本計画の第2章に図にIoTにおけるセンサ技術の位置づけを追加記入したものである。

図7 IoT におけるセンサ技術

IoTセンサ技術は、モノの状態(現実空間)をセンシングし、クラウド(サイバー空間)に必要なデータをつなぐ技術として位置づけられ、そのプラットフォームとして「センサ」、「センサ信号処理」、「ワイヤレスネットワーク」、「自立電源」が挙げられている。
情報通信白書(平成29年度)でも、「第4次産業革命の到来を象徴するともいえるIoTデバイス数の推移及び今後の予測についてみてみる。インターネット技術や各種センサー・テクノロジーの進化等を背景に、パソコンやスマートフォンなど従来のインターネット接続端末に加え、家電や自動車、ビルや工場など、世界中の様々なモノがインターネットへつながり、その数は爆発的に増加している。」とあり、基盤技術としてセンサが取り上げられている。

これらの点から、IoT時代のセンサに関する新しい技術・ビジネスに関して、次世代センサ協議会のIoTセンサ技術研究会では、
a)IoT時代に対応した新センサ、新センサ技術の創出
b)センサ技術、IoT 技術の向上による IoT ビジネスの促進
c)情報発信型センサの開発と関連基盤技術の調査研究
d)IoT センサ技術向け社会実装技術の普及(設置、運用、環境、信頼性、保守性等)
e)シンポジウム及びセミナー開催企画による IoT センサ技術の普及と啓発活動
を目的として活動を行っている。