IoT時代のセンサ技術について(1)

栗山敏秀
((一社)次世代センサ協議会 理事 IoTセンサ技術研究会)

1.はじめに

センサの歴史を振り返ると、1971年11月15日にインテル社により発表された4004に始まる1970年代のマイクロプロセッサー(マイコン)の発達による情報処理能力の向上、情報処理コストの低減が、情報入力デバイスとしてのセンサの発展を促したといえる。

図1はマイクロプロセッサーの情報処理能力の向上の一例で、パソコンのCPU(Central Processing Unit)のクロック周波数の1990年代における変化を示したものである。縦軸が対数目盛になっていることから分かるように、目覚ましい進歩があった。ここで注目したい事は、100MHzはFM放送やアナログTV放送の搬送周波数であり、1GHzは携帯電話、スマートフォンの無線通信のキャリア周波数であることであり、マイクロプロセッサーの動作は高周波領域に入っている。
また、マイクロプロセッサーの進歩とともに、マイコンは家電製品や自動車などの機械や装置の中で使用される組み込みシステムとして広く普及した。

図1 CPUのクロック周波数 変化
図2 半導体、半導体製造技術のセンサ応用

一方、センサに関しては1979年12月に発刊されたIEEE Transactions on Electron Devices, Vol.ED-26, No.12はSOLID-STATE SENSORS, ACTUATORS, AND INTERFACE ELECTRONICSの特集で、J. D. MeindlとK. D. Wiseによる序文1) や掲載された論文は、図2に示すような1980年代以降の半導体材料や半導体製造技術を用いた各種センサの大きな進歩を予見させるものであった。
ちなみに、センサ分野最大の国際会議であるInternational Conference on Solid-State Sensors and Actuators(Transducers 国際会議)は、1981年に米国ボストンで開催されたMaterials Research Societyの年会の1セッションとしてスタートしている。

図3 センサシステムの構成

一般的なセンサ、アクチュエータ、マイコンを用いたシステムの構成例を図3に示す。センサの出力は一般に小さいので増幅回路で増幅され、場合によってはフィルタ回路で所望の周波数成分をもつ信号にした後、A/D(アナログ/ディジタル)変換回路によりディジタル信号に変換されマイコンに入力される。センサの値はそのまま表示される他、マイコンで処理され制御信号として出力される。この出力はD/A(ディジタル/アナログ)変換回路によりアナログ信号にした後、アクチュエータを駆動するのに十分な電圧、電流に増幅するためドライブ回路が用いられる。
このようなセンサとマイコンを用いた装置は社会に広く普及している。例えば、マイコンの搭載された家電機器に始まり、自動車では有害排気ガス低減や安全性、操作性、快適性の向上のために数十種以上のセンサが使われている。

図4 養殖稚魚用ワクチン接種装置

図4はセンサシステムを一次産業である水産養殖へ応用した養殖稚魚用ワクチン接種装置である2)。養殖においては病気の予防に稚魚の段階でワクチンを接種することが行われている。それまで使われていたマニュアル操作のワクチン接種用注射器の代わりに、稚魚を注射針に押し付けると圧力板に取り付けられたロードセル(力検出センサ)により針がささったのを検出して、電磁弁が開き一定量のワクチンが稚魚に注入される。これにより人手によるワクチン接種にくらべて作業能率が6割以上向上した。

参考文献

1) J. D. Meindl and K. D. Wise: IEEE Transactions on Electron Devices, Vol.ED-26, No.12, p.1861(1979)

2) https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/14/1466/kindai_01.pdf