セキュリティ用センサの研究と応用事例(4)

セコム(株)IS研究所
徳見 修

3.3 不審者・不審物検知への1つのアプローチ「長時間のゴミ捨て動作検知」の研究

爆弾テロに代表される不審者・不審物リスクに対する1つのアプローチとして研究している、画像による「長時間のゴミ捨て動作検知」を紹介する。

リュック等に忍ばせた爆弾を外見から判別することは困難である。本研究では爆弾そのものを見つけるのではなく、爆弾を仕掛けようとしている人の特徴的な動きに着目し、不審物を扱う人の動きを解析するアプローチをとった。

爆弾は、誤爆リスクやその重量を考えれば、扱いは慎重にならざるを得ない。従って爆弾をゴミ箱に隠そうとすれば、通常のゴミ捨てよりも必然的にゆっくりとした動作になる。“人がゴミ箱の前に長時間滞在し、時間を掛けてモノを捨てる動作”を不審行動と認識する。(図4)

図4. 通常のゴミ捨て動作(左)と、長時間のゴミ捨て動作(右)

本研究では、ゴミ箱付近の人の行動を、姿勢や滞在時間を基に「ゴミ箱への接近」「ゴミを捨てる」「ゴミ箱の物色(箱の中身を漁る)」「長時間の不審なゴミ捨て」の4カテゴリに分類した。このようなカテゴリ分けをすることで、多様なアプリケーションに応用できると考える。例えば利用者が「ゴミを捨てる」回数は、清掃業務におけるゴミ回収頻度の適正化にも活用でき、環境の衛生を向上させることにもつながる。また「ゴミ箱の物色」を検知したら「長時間の不審なゴミ捨て」の予兆と見做して早期に要注視行動として警戒することもできる。このように本技術は、不審行動のリアルタイムでの検知に留まらず、日常的な活用や、不審行動の予兆を捉えるなど、いくつかの可能性を秘めている。

ここで紹介した人の動き解析技術は、ゴミ捨て動作のみならず、例えば転倒や体調不良による蹲りの検知などにも応用が可能で「何をしている」を知る上での重要な基盤技術である。

4. おわりに

多様化する安心ニーズに応えていくため、セコムは「人間知識型AI」と「機械学習型AI」をバランス良く融合させながら、多様な状況を高精度に認識するセンシング技術をこれからも創り続けていく。

【著者略歴】
徳見 修(とくみおさむ)
セコム株式会社 IS研究所 センシングテクノロジーディビジョン
サブディビジョンマネージャー

1990年、セコム株式会社入社、IS研究所配属。
以降、バイオメトリクス、人数計測、侵入検知、行動認識などの画像認識や、カメラ、距離センサ、ロボットなどセンシング技術の研究開発に従事。
2003年、開発プロジェクトのリーダー。
以降、画像/センサ系研究グループのリーダー、サブマネージャー、主任研究員を経て2018年4月より現職。