欠陥検査に役立つ光ファイバセンサ(4)

株式会社レーザック
代表取締役社長
町島祐一

4.「高温耐熱性」と「分布性」…耐熱光ファイバによる温度分布・振動分布センシング

材料的或いは原理的な制約から、一般に電気式センサは150~200℃程度が温度上限となる場合が多い。これに対して、石英ガラスは融点が約1000℃と格段に高く、高温でのセンシングへの期待が高い。光ファイバへ曲げ許容力を付与するための被覆材、接続用のジグ等の現実的な課題があるが、図11は、耐熱性を備えた光ケーブルを用いて300℃までの耐熱性を確認した事例である。計測には分布型温度計測システム(DTS;Distributed Temperature Sensor)及び分布型振動計測システム(DVS;Distributed Vibration Sensor)を用いた。図12に温度データ、図13に300℃時の振動データを示す。いずれも1本の光ファイバで分布的にデータを取得している。今後550℃までの耐熱性を確認する予定である。

図11 高温試験
図12 温度データ(特定点での時系列)
図13 300℃における振動分布データ(特定点での2秒間振動、1kS/s)

【計測原理】
本計測で使用した振動分布計測の原理を概説する。なお、光ファイバによる分布型温度計測(DTS)は広く普及している技術であり*3、ここでは割愛する。
1本の光ファイバ上に作用する振動を分布的に検出するには、一般にC-OTDR(Coherent-OTDR)という技術を用いる。振動分布検知用途のC-OTDRはDAS(Distributed Acoustic Sensor)、或いはDVS(Distributed Vibration Sensor)とも呼ばれている。センシングに用いるC-OTDRには光ファイバの振動によるレーリ散乱光の振幅変動(強度)を検知する方式とレーリ散乱光の位相変動を検知する方式がある。
C-OTDRは光周波数が安定した光パルス光源と光ヘテロダイン検波或いは光ホモダイン検波の受光回路を用いたOTDRで、当初はOTDRの受光感度を向上する為に開発された。
光ヘテロダインおよび光ホモダイン検波方式のホトダイオードの光電流iは、

と示される。ここでPS、PLOは信号光と局発光のパワー、ωs、ωLOは信号光と局発光の角周波数、Φs、ΦLOは信号光と局発光の位相、εは光合波器の信号光の結合効率、in(t)は雑音電流、eは電子電荷、ηはホトダイオードの変換効率、hはプランク定数、νは光の振動数である。 光源の光周波数が安定したことから、光ファイバ中で発生した光の位相や偏光の変化や微細な振幅変化の分布を求める事ができる。
レーリ散乱光の振幅変動を検知するC-OTDRの構成を示す(図14)。図14でSensing fiberから戻ってきた後方散乱光はDFB-LDのローカル光で光ヘテロダイン検波されて受光される。時系列で得られた後方散乱光の各位置での振幅変動(強度変動)を求めれば、任意位置で光ファイバの振動分布(図15)が得られる。

図14 C-OTDRの構成例
図15 振動分布の測定例

一方、レーリ-散乱光の位相を検知するC-OTDRの構成例を示す(図16)。破線部分が干渉計を構成しており、センサファイバLsで生じた光の位相変動を干渉計の光ファイバLaとLbの遅延時間差により捕らえている。被計測物に生じる振動の大きさを線形的に捉えるには、この位相型が適している。

図16 位相を検知するC-OTDR例

以上、4回に亘って光ファイバを用いた欠陥検知技術の事例紹介を行った。長大構造分野での利用が先行している光ファイバセンシング技術であるが、これまでは無理と考えられてきた環境での欠陥検知にも利用可能と考えている 。