凸版印刷、量子機械学習に関する論文が『EPJ Quantum Technology』に掲載

凸版印刷(株)は、次世代コンピューティング技術の取り組みとして、量子機械学習に関する研究を推進している。このたび、製造データを含む複数のデータセットを用いた、古典および量子機械学習の学習モデル構築過程に関する論文が2022 年12月15日公開の英国Springer Nature 社の国際科学誌『EPJ Quantum Technology(イーピージェー クオンタムテクノロジー)』(※1)(オンライン)に掲載された。



▮ 論文について
タイトル:Performance of quantum kernel on initial learning process
     (量子カーネルの初期学習過程における性能)
著者名: Takao Tomono*(友野孝夫), Satoko Natsubori(夏堀智子)
URL:  https://doi.org/10.1140/epjqt/s40507-022-00157-8
掲載誌: 国際科学誌『EPJ Quantum Technology』(発行:英国 Springer Nature 社)

▮ 研究の背景
 量子コンピュータは様々な産業に大きな変革をもたらす革新的な技術と期待され、その実用化に向け、ハードウエアやソフトウエアなどの開発が推進されている。
 近年、ICTの進化によって日々生み出されるビッグデータが、AIによって分析・予測されているが、AIによる分析・予測の正確さはデータの量・質・特性とAIの学習状況に左右され、データの前処理とパラメータの調整に時間を要する。効率的な分析・予測が求められている中で、AIに量子コンピュータを利用することにより、学習速度や学習性能のさらなる向上が期待されている。
 製造現場のDX化においては、IoT機器や各種センサが活用されている。特に画像を用いた品質検査ではAIを用いた機械学習が導入され、適切な学習モデルを生産現場に適用することが求められており、そのためには、少量の学習データで学習モデルを構築できる手法の開発が期待されている。
 凸版印刷はこれまで培ってきた量子技術を活かした量子機械学習の研究を行っており、このような課題に対し、このたび製造データを含む複数のデータセットを用いて、古典と量子の機械学習モデルを各々構築した結果、両者の学習モデル構築過程に有意差があることを証明できたとのこと。

▮ 本論文の概要
 本論文では、量子と古典の機械学習における、学習モデルの構築過程の差異を明らかにする手法を提案した。本手法を、当社工場の製造工程に適用した結果、量子と古典の学習モデル構築過程に有意差があることがわかった。本手法を活用することで、対象となるデータセット毎に、古典機械学習と量子機械学習の適正を迅速に判断することが可能になる。

▮ 今後の展開
 凸版印刷は、量子機械学習を、製造だけでなく、品質検査や出荷検査、物流などの工程に展開し、実データを用いた検証を進め、量子機械学習の可能性を探り、次世代のデジタル社会の実現に貢献するとしている。
※1 『EPJ Quantum Technology』、量子技術の理論的および実験的進歩を対象とし、一次研究論文を扱う、オープンアクセスの電子ジャーナル。

ニュースリリースサイト(TOPPAN):https://www.toppan.co.jp/news/2022/12/newsrelease221216_1.html