ニオイセンサのスタートアップ「株式会社Qception」設立

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の研究者である今村岳が代表となり、(株)Qception(キューセプション)を設立した。Qceptionは、NIMSの研究者である吉川元起らが開発した「膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface stress Sensor, 通称 MSS)」をコア技術として、MSSを用いたニオイセンサを活用した事業を行う。

【設立の背景】
2011年、NIMSの研究者である吉川元起らが膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface stress Sensor, MSS)を発表した。(※1) MSSは、超小型でありながら高感度を実現し、さらに様々な固体材料をガスの検知材料(感応膜)として用いることができるという化学的多様性を有していることから、人間の嗅覚を模倣したニオイセンサの素子として最適なセンサである。
このMSSを用いたニオイセンサの社会実装に向けて、NIMSではこれまで様々な産学官連携の活動を行ってきた。(※2)その一方で、MSSのことを最もよく知るNIMSの研究者が積極的にMSSの市場開拓を進めていくことが、MSSの社会実装を加速させると考え、NIMSの研究者である今村岳を中心として、2022年5月2日にNIMS発ベンチャーとして(株)Qceptionを設立した。

【ビジョン】
人間の五感の中で、嗅覚は唯一まだ世界的なスタンダードが確立していない感覚である。
しかし、言うまでもなくニオイは人間にとって非常に重要な情報源であり、ニオイを客観的に測定できるニオイセンサは様々な産業分野で求められている。
そのような需要に答えるべく、ニオイセンサに必要な各種要素技術を開発・統合することによって、ニオイセンサのスタンダードを確立し、「ニオイを測る文化」を作ることがQceptionの目標であるとのこと。

【事業内容】
・ニオイ測定コンサルティング
分析機器により、ニオイの成分・組成を調べ、その結果をもとに、ターゲットとするニオイを測るための適切な提案を行う。また、ターゲットとするニオイに対するMSSの応答を試験することも行う。
・感応膜塗布/感応膜付きMSSチップ販売
これまでに開発・検討してきた感応膜の知見を活かし、MSSチップへの感応膜の塗布、および感応膜が塗布されたMSSチップの販売を行う。
・簡易測定器販売
MSSチップだけでなく、読み取りの回路も含めた測定器の販売を予定している。(現在開発中)
・生体ガス測定
様々な分野での応用可能性のあるニオイセンサだが、Qceptionとして特に注目しているのが生体ガス、すなわち、呼気や、汗、尿などの生体試料から発生するニオイである。
この生体ガスをMSSで測ることにより、ニオイによる健康管理や病気の診断を行うことを目指している。 Qceptionとして特に注目しているのは、酪農、医療・ヘルスケア分野であるという。

[注釈]
※1:Yoshikawa, G., Akiyama, T., Gautsch, S., Vettiger, P., Rohrer, H. (2011). “Nanomechanical Membrane-type Surface Stress Sensor.” Nano Letters 11(3): 1044-1048. https://doi.org/10.1021/nl103901a
※2:産学官からなるMSSニオイセンサの情報共有の場として、MSSパートナーシップ(旧称 MSSフォーラム)が運営されてい る。
https://mss-forum.com/
※3「嗅覚」の”嗅(Q)”と「知覚」を意味する”perception”を組み合わせて”Qception”という社名にした。

ニュースリリースサイト:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000102305.html