非冷却型マイクロボロメータを検出素子とする赤外線サーモグラフィ装置を用いた アクティブサーモグラフィ法による非破壊検査
Active thermographic nondestructive testing using infrared thermography with uncooled microbolometers(2)

石川 真志
徳島大学
大学院社会産業理工学研究部
石川 真志

3.2 モルタル材料の検査

 アクティブサーモグラフィ法による非破壊検査のもう一つの例として、図6のようなモルタル試験片に対する検査例を示す。本試験片は300×300 mm、厚さ100 mmのモルタルブロックであり、人工欠陥として内部に4つの発泡スチロールを封入している。人工欠陥のサイズは25×25 mmおよび50×50 mmの2種類(いずれも厚さは10 mm)であり、表面から深さ10および30 mmの位置に設置した。本試験片の表面を500 Wのハロゲンランプで300秒間加熱した後に、加熱面を前節と同じ非冷却型マイクロボロメータを使用した赤外線サーモグラフィ装置(FLIR A315)で観察した。得られた熱画像を図7に示す。50×50 mmの欠陥についてはその存在が局所的な温度差として確認可能であるものの、熱画像ではサイズの小さな25×25 mmの欠陥検出は困難であった。図8は、前節と同様に、図7の熱画像を位相画像へ変換した結果を示す。位相画像変換することで50×50 mmの欠陥はより明瞭に確認できるようになり、また熱画像では検出が困難であった25×25 mmの欠陥も検出可能となっていることがわかる。これらの結果は、アクティブサーモグラフィ法およびそのポスト処理としての位相画像変換を利用することで、モルタルなどの土木材料中の表面から深さ数十mmに位置する欠陥部(空隙など)の検査も可能であることを示している。

図6 (a) モルタル試験片,および (b) 試験片の模式図
図6 (a) モルタル試験片,および (b) 試験片の模式図
図7 モルタル試験片へのハロゲンランプ加熱後に得られた熱画像
図7 モルタル試験片へのハロゲンランプ加熱後に得られた熱画像
図8 図7の熱画像を位相画像変換した結果, (a) 周波数0.002 Hz, (b) 周波数0.005 Hz
図8 図7の熱画像を位相画像変換した結果, (a) 周波数0.002 Hz, (b) 周波数0.005 Hz

4.おわりに

 赤外線サーモグラフィを利用した非破壊検査技術について、比較的安価で広く利用されている非冷却型マイクロボロメータを検出素子として使用した赤外線サーモグラフィ装置を使った検査の例を紹介した。また、その検査能力を改善する手法の一例として熱画像の位相画像変換技術を紹介した。この他、検査の条件・目的次第では、得られた熱画像/位相画像に対する一般的なデジタル画像フィルタやノイズ除去手法の適用も効果的な手段となる。量子型センサと比較して感度の劣る非冷却型マイクロボロメータによる赤外線サーモグラフィ装置を使用した場合でも、適切なポスト処理を行うことで多くの場合で高い検査能力を得ることが可能であり、様々な分野において実検査への適用が可能であると考えられる。
 なお、非冷却型マイクロボロメータのもう一つの欠点である応答速度の遅さについては、これらの処理での改善は困難である。非冷却型マイクロボロメータでの熱画像取得に際するフレームレートは高くて30 Hz程度であり、応答速度の限界を上回る非常に速い熱応答(例えば熱拡散率の高い金属材料中に生じる瞬時的な温度変化)の観察は不可能である。そのような高速撮影が求められる場合には、量子型センサを使用した赤外線サーモグラフィ装置の導入が必要となる。



【著者紹介】
石川 真志(いしかわ まさし)
徳島大学 大学院社会産業理工学研究部 講師

■略歴
2012年 総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻 修了
2012年 東京理科大学 基礎工学部材料工学科 助教
2015年 徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部 助教
2017年 徳島大学 大学院理工学研究部(現 大学院社会産業理工学研究部) 講師
現在に至る
赤外線サーモグラフィおよび超音波を利用した非破壊検査技術の基礎および応用研究に従事。日本非破壊検査協会 赤外線サーモグラフィ部門 幹事。