光ファイバセンサの歴史と最新動向 ―光ファイバセンシング振興協会の活動を含めて-(2)

NPO法人
光ファイバセンシング
振興協会
足立正二

3.光ファイバセンシング振興協会6)

3.1 設立とミッション

光ファイバセンサの実用化の機運を受けて、その特性を活かした温度検知・火災検知装置(温度センシング)を普及・推進する任意団体「光ファイバ型防災システム推進協議会」が2004年6月に設立された。その後、光ファイバセンサを基盤技術として、自然災害に対する脆弱性の改善、そして社会インフラの維持管理に資するシステムの実現に関わる事業を実施・支援することを主な目的として、2008年6月より「光防災センシング振興協会」に発展的改組、さらに、2009年4月に特定非営利活動法人の認証を受け法人活動を開始した。2013年6月からは、より広範囲の活動を念頭に「光ファイバセンシング振興協会」と呼称変更している。
光ファイバセンサに関する研究開発は現在も国内外で盛んに行われており,技術そのものは確実に進展している。しかし、施工技術、システム化技術やコストに関する取り組みは未だ不十分といわざるを得ず、現状の優れた技術を活かしつつ、業界が連携・協力して本格的な社会実装に向けた取り組みが必要であり、光ファイバセンシング振興協会はその活動のプラットホームの役割を担っている。

3.2 活動内容

光ファイバセンシング振興協会は、資格・認定・標準化、啓発・普及、開発プロジェクト、コンサルティング活動などを主な事業とし、21法人、21個人(2021年1月現在)の会員が中心となって各委員会やその他の活動を支えている。鉄道や都市の災害情報システム、橋梁の構造ヘルスモニタリングのようなセンサシステムの実現には地道で長期にわたる研究や現場試験が必要であり、センサ・計測器・通信機器メーカ、エンジニアリング、ゼネコンなど異業種の会員が集まった本協会の特色を活かして、各活動に適した会員の連携のもと、開発プロジェクトの実施、成果の公表、現地視察、出版(「光ファイバセンサ入門」)を行うと同時に、シンポジウムの開催、業界の活性化に向けた様々な情報発信等を進めている。現在、「建設分野における分布型光ファイバひずみセンサ導入(を手助けするための)マニュアル」作成にも取り組んでいる。光ファイバセンシング振興協会の活動内容(主な開発プロジェクトを含む)を表1に示す。

表1 (特非)光ファイバセンシング振興協会の活動内容

光ファイバセンサに関する国際標準化審議は国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)のIEC/TC86/SC86C/WG2(ファイバオプティクス/ 光能動部品/光ファイバセンサ)で進められており、光ファイバセンシング振興協会は、国内での審議機関である(一財)光産業技術振興協会/光ファイバセンサ専門部会と密接に連携し国際標準化に貢献している。IECでは、総則、FBGひずみセンサ、FBG温度センサ、FBG傾斜センサ、分布型温度センサ(DTS)、分布型ひずみセンサ(DSS)、分布型音響センサ(DAS)、電流センサなどが制定済あるいは審議中である。また、民間の業界団体であるSEAFOM(Subsea Fiber Optic Monitoring Group)およびASTM INTERNATIONAL等においても光ファイバセンサ関連の標準化活動(計測データのフォーマットの標準化を含む)を進めており、それらの活動状況を注視している。IEC等の標準化に関する詳細な活動内容については他の解説を参照されたい。

4.今後の展望2) 6)

光ファイバセンサの多くは実用化レベルに達しているものの、さらなる社会実装に向けては課題も多い。それらの課題を克服する努力が継続してなされており、ここでそのいくつかを紹介する。
その1つが、計測器の堅牢化である。これまでは、環境の厳しい場所での使用には制限があったが、過酷な使用環境に対応し、かつ、小型・軽量、低消費電力を実現した計測器が実現されている。例えば、油井・ガス井の現場では環境温度が厳しく、また、インフラ(電力、通信)も用意されていないケースが多い。小型・軽量、低消費電力を実現した計測器であれば、電力を太陽光パネルおよびバッテリーでまかない、通信はワイヤレスモデムの使用も可能となる。
第2が、コストである。ある程度こなれてきた光ファイバセンサが広範囲に普及・採用されていくにはコスト面の課題をクリアしていくことが不可欠である。技術革新によってコストを下げることも1つの解決策ではあるが、現状の優れた技術を活かしつつ、業界(システムを提供する側と利用する側)が連携・協力してコストダウンに取り組むことが重要である。
第3は、システム化である。これまでは、計測技術、光ファイバ技術(信頼性向上など)、敷設技術(センサ一体化構造)などが個別に開発されてきた。それらを組み合わせて、多機能化・システム化しただけのモニタリングシステムでは大きなメリットは生まれない。物理的なモデルや高度な信号処理・解析技術・人工知能(AI)などを駆使してセンサから得られる情報を加工し有意な情報にしなければならない。さらに光ファイバセンサだけではなく、既存の情報網も合わせた総合的な分析に基づいた判断が必要になる。これらをシステム産業として発展させる必要がある。
第4はIoT(Industrial Internet of Things)からの期待である。ドイツでは製造業の競争力強化のためのIndusry4.0 がいち早く提示された。この「第4 次産業革命」では、IoT がその重要な役割を担うものと期待されている。IoT では、インテリジェントなネットワークが、人・プロセス・データ・モノをつなぎ、その関連性はこれまでの考え方をはるかに超えるものであると予想されている。IoT において「神経網技術」としての光ファイバセンサが果たす役割は大きく、特に、光ファイバセンサの中でも多点型・分布型センサはIoT への親和性が高い。IoT を目指す上でいくつかのイノベーティブなセンサが出現しているが、光ファイバセンサがその重要な役割を担うことを期待したい。

5.まとめ

光技術を用いたセンシングはその性能や非侵襲性など極めて広範囲の活用が期待されるが、光ファイバセンサはその一端を担う技術として、互いに補完・協力することでセンシング技術の進歩に寄与するものと考えられる。光ファイバ通信技術に強みを持つ日本にとって本技術が大きく育つ潜在性を有していることは間違いない。光ファイバセンサの社会実装がさらに進むことを期待したい。

参考文献

2) 足立正二:“光ファイバ神経網技術への期待,”応用物理学会フォトニクス分科会フォトニクスニュース 2(1)(2016) 19-21.

6)村山英晶:“特定非営利活動法人光防災センシング振興協会の取り組み:標準化・啓発・開発,”計測と制御, 51(3)(2015) 293-298.



【著者紹介】
足立 正二(あだち しょうじ)
NPO法人光ファイバセンシング振興協会 副理事長・事務局長

■略歴
1981年 信州大学大学院工学研究科電子工学専攻修了.同年安藤電気(株)入社.
光通信用計測機器、光ファイバセンサ、光ファイバレーザ等の研究開発に従事.
2004年 茨城大学大学院理工学研究科博士後期課程 情報・システム科学専攻修了,博士(工学) .
2004年 横河電機(株)へ転籍.光ファイバセンシング技術のプラント計装への適用開発に従事.
2015年 11月より NPO法人光ファイバセンシング振興協会 副理事長・事務局長